第1話 材料を探して……
新章開始です。
章題の通り、BOSS戦に向かう事になります。
さて、どうなるのやら……。
M&M冒険者の街前店のオープンからの一連の騒動から1週間ほどがたった。
この1週間は騒動の後始末で俺とミルファさんは結構忙しかった。レナさんも居たがあんまり戦力にはなっていなかった。
商品が無いのに忙しい理由は、注文したいという人が結構居たからだ。
今の所すべて断って入るがそれだけでも人手が必要だったのだ。
セリカとティナは、冒険者ギルドで討伐依頼を受けて、近くの討伐に出かけていた。
M&Mでの作業では戦力になりそうにないし、退屈をもてあまして何かやらかすのもあれなので、近場での討伐依頼に限定してやらせていたのだ。
まあ、不安は不安なのだが、常時監視してるわけにも行かないし……しょうがない。
シーナはというと、いつものようにサボリかと思えば、そうではない。
リーフさんに、ちびっ娘達が部屋に閉じこもったままで、そろそろストレスっぽい物を抱え始めたようで、砦の中だけでも自由にさせられないか相談されたからだ。
そういえば、砦のトラップなどの確認が途中だったと言う事で、シーナが続きをすることになった。
彼女は、M&Mに居ても面倒な事をやらされるだけというのと、まだ見つけてないお宝とかが理由なんだろう二つ返事ですぐに調査を始めていた。
リーフさんとちびっこ達は、相変わらず、樹の家だ。
リーフさんに、砦の件の他にも、機会があったらポチ&タマを冒険に連れ出して欲しいとも言われた。
今度冒険者ギルドの依頼に連れて行って軽いレベル上げをするのもいいかもしれないと思う。
狐っ娘姉妹は相変わらずだが、リーフさんがいない時に出会っても、逃げ出すとか取り乱すとか言った事が無くなってきているので、前進はしているのだろう。
ただ、ティナと遭遇した時は……もう少ししたら、本格的にトラウマ解決のために何かやる必要があるのかもしれないな。
でだ、今回問題なのは……マユさんだったりする。
彼女は、あの後真っ白に燃え尽きていた。
今朝も、朝食後ずっとカウンターでボーとしている。
このごろ料理を作るのも、ミルファさんにまかせっきりになっていたりする。
う~ん、やっぱりアレがショックだったんだろうな……。
話は、開店の騒動の次の日の事だ。
「ティナさん! セリカさん! 今日もまた素材採取をお願いします!」
うん、この時は凄くやる気に満ち溢れていたよなマユさん。
在庫切れになっていても、すぐに在庫を補充してM&Mを開店させるつもりだったんだろうな……。
でも、そんなマユさんの思いをティナが打ち砕く。
「エルフの森と、リーちゃんの家の近くは、いっぱいとったから暫くは取っちゃダメだよ!」
まあ、結構頻繁に採取たのんでたし、それはしょうがない事なのかもしれない。
一応ティナも、エルフの一員だからな。その辺には凄く厳しいのだろう。
「え……それじゃあ、この周辺で採取を……」
マユさんが一瞬固まるが、再起動して言葉を続ける。
「ああ、それは無理だと思うぞ。加入クエの時酷い目にあった」
俺が追い討ちをかけてしまった。
「そ、そうでした……それじゃあ、材料は……」
「暫くは~無理だね~」
ティナはそう能天気に止めを刺す。
「む……無理………………」
そうして、マユさんが1週間ほど燃え尽きている。
そろそろどうにかしたいとは思っているんだが……。
「う~ん、どうしたものか……」
俺が、解決方法を考えていると、
「師匠~冒険者ギルドに行って来ます~」
「行って来るよ~~」
なんて言いながら、朝食後に準備に部屋に戻っていセリカとティナが出かけようとしている。
このごろの日課になっている冒険者ギルドで討伐依頼を受けに行くのだろう。
「冒険者ギルドか……」
当然、薬草なんかの素材のある場所を冒険者ギルドにも聞きに行ったりもした。
まあこれも当然の如く、回復薬なんかのアイテムが不足している今の冒険者の街の周りのそういうポイントは取られつくしているか、絶滅させたりしないため取るのを禁止されている。
あるなら直ぐにでも取りに行くという状況なのだ、採取系の依頼の報酬も軒並み高騰しているしな。
ただ、素材の場所を探すなら一番効率のいいのは確かなんだよな……。
「ティナ、セリカ」
「何? クロちゃん?」
「何ですか師匠?」
外に出て行こうとしていた二人が振り返る。
「俺も、冒険者ギルドに一緒に行くから、悪いんだけどちょっとまっててくれないか?」
「うん、わかったよ~」
「解りました」
そうして、準備し終わった俺と、ティナ、セリカの三人で冒険者ギルドにやって来ていた。
「おう、じょうちゃん二人は何時も来てるが、あんたは珍しいな」
わき目も振らず真っ直ぐにクエストボードに向かった二人は好きにさせて、俺はカウンターの方に来てい居た。
「珍しいって数日前にも来た筈ですよ」
「いや、あのじょうちゃん達は毎日来てるからな」
あの二人は……というかそれが冒険者の普通なのか?
「まあ、色々と後始末があって忙しかったんですよ」
「そりゃ、そうかー」
忙しいで思い出したけど、カウンターで会うのは、ガロウズさんともう一人のおっさんばかりだよな?
他の人はまだ忙しいのか? 綺麗所が居ると聞いたような気がするんだが……。
「そういえば、俺が来る時は何時もおっさんばかりな気がするのは気のせいなのか?」
「ああ、まだ教会に派遣したまま戻ってねぇな。色々冒険者に無茶をさせる事になっててなぁ~。一向に怪我人が減らねぇんだよな」
まあ、野郎に看病されるよりは綺麗な人に看病された方が治りも早い気がするってのはわかる気はするが……。
それはともかく、冒険の前に万全準備ができないってのがそこまで響いてるのか。
回復アイテムなんかは当然として、ヒーラーなんかの回復役も不足って話しだし、モンスターも襲撃の残りがいるから事前情報なしの戦闘も結構ありそうだしな。
「回復アイテムの不足は……」
「ああ、全然解消しちゃいねぇな」
「それじゃあ、うちの装備品の流通の話はどうなってます?」
良い装備品があれば、それだけ回復アイテムの消費を抑えられると思うのだが。
「そっちは、生産者ギルドの連中なんかと話が必要なんだが……商業ギルドがちょっとゴタゴタしててそれどころじゃないんだよなぁ。しばらくしたら連絡があるとは思うが……」
「それまでは、売るのを控えますよ」
あんな騒動をもう一度とかは絶対にイヤだからな。
「そうしてくれると助かる」
「あと、俺達の売った回復アイテムでは足しになりませんでしたか?」
「あんた達のところから仕入れたアイテムを流せば少しは足しになるかもしれないが……あれを使うわけには、行かないからなぁ」
そりゃそうか、あれは襲撃の対処用の備蓄だからな。
あれでも不足してるって言ってたからな。
ただ、あれ以上買い占めると冒険者が回復アイテムを手に出来なくなるって事で妥協してる感じだったしな。
「ってことは……素材の採取なんかは……」
「まあ、絶望的だろうなー。一部の場所をギルドで警備をだして保護なんてやるハメになってるぐらいだからな」
警備までして保護する必要があるほど枯渇してるのか……。
これは、この辺りで取るのは難しいのか?
とは言っても、この街で消費する分を他の国とかの森で採取してくるのも……あんまりほめられた事ではないからな。
すでに、エルフの森や、砦の周囲の森から採取した物を持ち込んではいるけど……流石にこれ以上他の場所の資源を持ち込んでくるのはまずい気がするんだよな。
「何か心当たりとかは?」
「あったら、もうすでに行ってるさ」
だよな……。
そうなってくると、逆に考えた方がいいのかもしれないな。
情報がない場所、つまり……殆ど冒険者が近づかないような場所を探した方が可能性はあるのかもしれないな……。
草木が生えた場所、砂漠とか不毛の大地なんかでなければ多少は見つかるだろうしな。
最悪、毒をもった草木から、色々と作るってのありかもな。
「だったら、冒険者が近づかない森や草原なんてのには心当たりはないですか?」
「そういう類だったら、結構あるっちゃあるが……冒険者ギルドとしては、危険だって注意を促すような場所ばかりだぞ?」
まあ、理由があるから近づかないんだろうからな……。
それは聞いてから考えればいいな。
「それでいいんで、出来るだけ近場でそういう場所はないですか?」
冒険者の街の周囲は、基本的には離れるほど敵の強さがあがるって話だからな。
まあ、ダンジョンとかの例外はたくさんありそうだけどな。
そんな訳で、挑戦するなら、できるだけ近くからの方がいいだろう。
「それだったら、一つ結構近場に森があるぜ」
「それは何処です?」
「ちょっとまってな」
ガロウズさんは、カウンターの引き出しから地図を取り出し説明を始める。
「ここがこの街だ」
冒険者の街を中心とした地図だ。
東西南北に、門があり、モンスターの襲撃で壊された門。M&Mがある門だが、それは南門だ。
「で、問題の森はここだ」
ガロウズさんが指でさしたのは、北門を抜けて真っ直ぐ北上し、直ぐにある山を越えた先にある森だ。
山は、壁のような山脈になっており迂回は、相当つらそうだ。
「山越えが必要なんですか?」
直線距離で近いといっても山一つ超えるであれば距離は……。
まあ、モンスターの強弱については直線距離に関係してるのかもしれないが……。
「いや、ここに深い渓谷がある」
言われてみれば、山の中を貫く一本の道が描かれている。
でも、川とか見当たらないのに渓谷とか……はるか太古の昔に川があったとかか?
超高威力の魔法なんかで山を切ったとかではないよな? 何気に否定できないのが怖いけど……。
今度、前に見せてもらったティナの地図と比べてみたいな。
「じゃあ、普通にそこを通って行けば問題ないのか?」
「いや、問題は2つある。1つ目は森のモンスターが凶悪な事……というよりも、樹木系や植物系のモンスターが集まって森を形作ってるといった方がいいのかもしれない」
「森そのものがモンスターなんですか?」
「そう考えた方がいいって場所だ。別名、人食いの森だ。人食いが出るんじゃなくて、森が人を食うって意味でな」
森のモンスターが相当高レベルって事か……。
う~ん、この世界基準だから行って見ないとどのくらい強いかはわからないな。
ただ、準備を万全にしておけば行けなくは無い気はする。
「高レベルモンスターの巣窟って考えでいいのですか?」
「まあ、それでもんだいねぇ。でだ、2つ目の問題がまた厄介でな……」
そういえば、問題は2つあるって言っていたな他に何があるんだ?
「問題は渓谷でな。あそこはオーガの巣になっていやがる。そいつらを統率するオーガキングなんてのも住んでいてな……人食いの森に進もうとすると襲ってくるのさ」
「つまりそいつらを突破しないとたどり着けないと?」
「そういう事だな」
それはつまり、オーガキングってBOSSが道を塞いでるって事か?
RPGなんかではよくあるパターンのBOSS戦だが……。
「BOSSって事か?」
「そうだな、軍隊規模の集団で戦えるような場所でもないから少数精鋭でいくしかないがな」
レイドBOSSではなく通常BOSSって感じなのか……。
まあ、渓谷で大群を運用なんて出来ないか。
「それなら迂回するなり、山を越えるなりすればいいのでは?」
「その渓谷が一番難易度が低いといえば解るか?」
BOSSを避けない方がいいって事か。
あ、そういえば、最初に妙な言い回しをしていたな……。
「”進もうとすると”襲ってくる?」
「ああ、人食いの森から逃げ出す奴らを襲う事は無いって話だ。まあ、人食いの森の方から来る奴は強敵で、冒険者の街のほうから来る奴は獲物とでも思っているんだろう」
帰りの心配をしなくていいのは助かるが……。
「そこまで情報が多いわけじゃねぇからな~参考程度にしておいた方がいいぞ」
そりゃそうか、冒険者が近づかない場所だからな。
「情報としては、この程度だな」
その後、ガロウズさんから細かい情報をいくつか聞いたが、情報そのものが少なくて、噂程度のレベルのモノばかりだったが……。
「わかった、情報ありがとう」
「無茶だけはすんじゃねぇぞ!」
「死ぬ気はないよ」
「まあ、そう簡単に死ぬようなタマにもみえねぇがな。わはははははは」
話が終わって、ティナとセリカを呼びに行こうとしたところ、目を輝かせた彼女達が直ぐ後ろに居るのに気がついた。
うん、行かないって選択肢は無くなったな。
十分に準備を整えてBOSSに挑戦だな。
まずは、一度挑戦して見ない事には情報が無さ過ぎる。
この世界のレベルから考えると結構あっさり終わりそうな気もするんだが……。
次の話はBOSS戦の準備です。
う~ん、クロがまた妙な物をつくったりして……。




