~亜梨沙編~
あたしは、大事な人がいる。
その大事な人はあたしのことをよくわかってくれてる人で
身近にいてくれる人だった。
なんて
思いのほか恋なんかできなかった。
だって
真志のことほっとけなかったし
あいつ、あたしがいないとダメだもんって思ってたからだ。
別に知らなかったわけない
真志があたしのこと好きなくらい。
「なあ亜梨沙」
「ん?どーしたよー真ちゃん」
「す・・・すっ」
「??」
ほーらまただ。
最近いっつも“す”という言葉で止まってしまうんだ。
でも真ちゃんにしては、そこまで言えてよかったね
前なんか顔赤くなって、頭から湯気出てたし。
あたし何たくらんでるんだろう。
真ちゃんのその姿見てたくらんでるのかな。
それとも、真ちゃんの好きという気持ち知ったら怖いのかな?
この関係が恋人へ変わるのが怖い?
そんなバカな。
「真ちゃん、ベビースターついてるよほらっ」
「んんんーちょちょっ、荒いつぅーの!」
「ごめんごめん/」
お世話ばっかりしてさ
あたし、何してんのさ。
こんなの絶対恋愛にいかないよね
このままだと。
あたし真ちゃんのこと好きなはずなのに。
あたしこそ好きって言えないじゃん。
どうしたら真ちゃんの気持ち変わるんだろう。
いっそあたしという呪縛から解放したらいんじゃないかな。
真ちゃんはその方が幸せだよね。
気持ちを応えきれないあたしより、もっといい人に巡り会って
幸せになった方が絶対いい。
あたしだって、もう考えるのが嫌だ。
胸が痛いよ
「真ちゃんさー」
「ん?」
「もうあたしいなくても大丈夫??」
「どーゆ意味?」
「彼氏できたのさ」
何デタラメ言ってんだろう。
「前から好きな人いてね、この前告白したらOK貰っちゃって。そんで真ちゃんに報告したくて」
「いきなりでごめんね!だけどまあつい嬉しくって/」
嬉しくない
真ちゃんごめんね
「・・・そーかよ」
「うん、驚いた?」
「―――それだけ?言いたいこと」
「え・・・?」
「なんだよ、結局一番身近にいる俺に自慢して、早くお前も彼女の一人くらい作れよてか!!」
「違うよ真ちゃ・・」
「もういい、お前とはもう帰らない会わない迎えにもくんな!」
そんな顔して・・・させて・・・
あたしって何言ってんの。
「じゃあな、彼氏とお幸せに!!」
真ちゃん待って、待ってよ行かないでよ。
あたしを置いていかないでよ
真ちゃん・・・
変なこと言って結局いなくちゃダメって思うなんて
欲求不満にも程があるよ。
あたしから突き放すことはできた
だけど
もう真ちゃんはあたしのもとには来ない。
楽しかったあの日々も
いろんな思い出も
帰ってこない。
「うぅ・・真ちゃ・・・ん、真ちゃん・・・」
不器用なのはあたしの方だった。
真ちゃんが恋愛できないのはあたしのせいと
あたしがいるから、
ちがう、恋人になりたくなかったから?
それもちがう
結局何がしたかったのあたし、
「真ちゃんへ」
「この手紙真ちゃんに渡しておいてください・・・」
「あ、亜梨沙ちゃん!!学校一緒に行かないの?」
「いえ、今日は早く行かないといけないので・・・それじゃあ。」
目も赤くなってあたし恥ずかしいな。
多分あたしがいないとダメな真ちゃん
守ってやりたかった
3日後―――
「真志ーお前どーしたんだよーサボってたのかよ」
「ちげーよばーか」
真ちゃんの姿はそこにあった。
同じクラスのあたしはいつも一緒にいて幼馴染だったし
クラスの皆からは「おしどり夫婦」って言われたっけ。
けど今はもう―――
「あれ~夫婦やっとそろったね亜梨沙!」
「さびしかったもんねー亜梨沙~」
やめてよ・・・もうそんなんじゃない。
「・・・ちがっ・・」
「―――。」
スルーされた。
「あれー真志怒ってる?」
「やっぱからかわれるの好きじゃないんだね~ツンデレ~」
「真志ーなんか言ってやれよー女子にも」
「そーゆー気分じゃないから、」
「うぅ・・・」
「あ!亜梨沙!」
たまらず駆け出した教室を
もう真志はあたしのことなんて聞く耳も持たないんだって。
あたしは学校を早退した。
たまらずベットに横たわって泣いた。
あたしって
馬鹿な奴。
なんでそんな考えしか思い浮かばないのか
好きなら好きって言えないのかって
泣いたらやって来てくれるそんな甘い考え。
甘いや。
「件名:ばーか
いつもの帰り道で待ってる
真志」
!!
何でそういうのかって
優しいからだよね
「好き」
「なんか言ったかよ??」
「んー何にもない、今日のもんじゃのおごり真ちゃんね!」
「なんだよーお前だろー」
「いーや真ちゃん♬」
「ふっ・・・」
真ちゃんの笑顔が好き。
ねえ
こんなあたしでも
拾ってくれるの?
もっともっと抱きしめて。
「亜梨沙、本当はさ―――」
*