対霊装甲機ゴーストバスター・アークⅡ―巨大幽霊を倒して東京を救ったら、巨大ロボ暴走事件として全国ニュースになった―
「霊反応、レベル7! “あっち側”から来るぞ!」
操縦席でアキラが叫ぶ。
全高百メートルの対霊装甲機《ゴーストバスター・アークⅡ》が、スラスターを噴かして急上昇する。
センサーには、霞のようにゆらぐ“巨影”がなんとなく映っていた。
新宿副都心。
高層ビル群のど真ん中。
その向こうに、半透明の巨大な老人が立っている。
身長およそ百五十メートル。
頭頂部は都庁より高い。
白い死装束。
落ちくぼんだ眼窩。
異様に伸びた両腕。
そして、口から黒い霧を吐きながら、
『土地を……返せぇぇぇぇぇ……』
と呻いていた。
「いや怖えよ!」
『集中しろ、アキラ!』
通信機からオペレーターのユイが叫ぶ。
『推定死亡年代、江戸後期! 地縛型巨大霊体! 怨念濃度、急上昇!』
「なんで江戸時代の爺さんが百五十メートルになるんだよ!」
『死後に育ったんでしょ!』
「盆栽みたいに言うな!」
老人の巨大幽霊が腕を振り上げた。
『返せぇぇぇぇぇ!』
「何を!?」
『土地!』
「ここ新宿だぞ! 権利関係めちゃくちゃだぞ!」
巨大な掌が振り下ろされる。
「うおおおっ!」
アキラは操縦桿を倒した。
アークⅡが横へ跳ぶ。
幽霊の手は高層ビルをすり抜ける。
物理的な破壊は起きない。
しかし、その瞬間。
ビルの全照明が消えた。
パソコンが落ちる。
エレベーターが停止する。
社員数百人が同時に悪寒を覚えた。
一方。
横へ跳んだアークⅡは、道路を踏み抜いた。
アスファルトが爆発する。
街路樹が吹き飛ぶ。
駐車中の車が三台転がる。
「よし、回避!」
『被害、道路二百メートル!』
「回避って言っただろ!」
『敵の攻撃は回避した!』
「じゃあ成功だ!」
もちろん。
一般市民には巨大幽霊が見えない。
彼らに見えたのは。
突然巨大ロボットが何もないところから横っ飛びして、道路を粉砕した光景だけだった。
数分後、SNSにて――。
《新宿に巨大ロボいるんだけど》
《何これ》
《道路踏み抜いたぞ》
《誰と戦ってんの?》
《虚空》
《空気にビビって横っ飛びしてて草》
《車返して》
「もう炎上してる!」
『戦闘中にSNSを見るな!』
「通知がコックピットに来るんだよ!」
『切れ!』
「政府公式アカウントから来てんだよ!」
画面に通知。
【東京都防災】
《現在、新宿区において大型特殊車両による事故が発生しています。付近の方は速やかに避難してください》
「大型特殊車両!?」
『政府はアークⅡの存在を公表してないから』
「百メートルあるんだぞ!」
『大型ではある』
「そういう問題じゃない!」
巨大幽霊が再び動く。
『返せぇぇぇ……』
「爺さん!」
アークⅡが拳を構える。
「話し合いでなんとかならない!?」
『土地を……』
「うん!」
『全部……』
「欲張るな!」
巨大老人が絶叫した。
周囲の窓ガラスが一斉に震える。
『返せぇぇぇぇぇぇぇ!!』
「交渉決裂!」
『最初から成立してない!』
「霊子拳、展開!」
アークⅡの右腕に蒼白い光が集まる。
数珠型の霊子コンデンサーが回転する。
『霊圧固定!』
「行くぞ!」
アキラは叫んだ。
「成仏しやがれぇぇぇぇ!」
アークⅡの拳が巨大幽霊の腹部へ突き刺さる。
『おおおおおおお……!』
巨大老人の体が光に包まれる。
「効いてる!」
『霊体崩壊率七十パーセント!』
「もう一発!」
アークⅡが踏み込む。
道路が陥没する。
「霊滅拳!」
右ストレート。
『ぐおおおおおおお……!』
巨大老人の体が粒子となって崩れていく。
夜空へ昇っていく無数の光。
最後に、老人は穏やかな顔になった。
『……ありがとう』
消滅。
静寂。
アキラは息を吐いた。
「……成仏した」
『霊反応、消失』
「よかった」
『やったね』
「ああ」
二人はしばらく黙った。
そしてアキラが言った。
「今日、結構きれいに勝てたんじゃない?」
『そうだね』
「ビルも倒してない」
『倒してない』
「市民の犠牲も?」
『ゼロ』
「道路だけ?」
『道路だけ』
「勝ったな」
ユイは答えた。
『勝ったね』
翌朝。
【速報】
《新宿で巨大ロボット暴走》
「なんでだよ!!」
テレビ画面の前でアキラが叫んだ。
ニュースキャスターが深刻な表情で原稿を読む。
『昨夜、新宿駅西口付近に突如現れた巨大人型機械が、約十五分間にわたり市街地で不可解な行動を繰り返しました』
映像が流れる。
アークⅡが横へ跳ぶ。
道路が爆発。
アークⅡが拳を構える。
何もない空間を殴る。
さらに殴る。
最後にガッツポーズ。
『こちらが問題の映像です』
「敵を映せ!」
『映らないから!』
ユイが隣でコンビニ弁当を食べている。
『映像では、巨大機械が突如道路を破壊したあと、何も存在しない空間に向かって複数回のパンチを放っています』
「存在してた!」
専門家が登場した。
肩書き。
【ロボット工学専門 帝都工科大学教授】
『これは非常に危険ですね』
「何が!?」
『まず、目的がわからない』
「幽霊退治!」
『そして操縦者に、周囲の状況を正確に認識する能力があるのか疑問です』
「百五十メートルの爺さんを正確に認識してたよ!」
『幻覚の可能性も考える必要があります』
「テレビ越しに精神鑑定するな!」
画面が切り替わる。
街頭インタビュー。
『怖かったです』
二十代女性。
『急にロボットがジャンプしてきて』
会社員。
『何もないところ殴ってましたよ』
老人。
『昔はああいうのいなかった』
「昔は巨大幽霊が出ても対処できなかっただけだよ!」
子供。
『かっこよかった!』
「君だけだよ!」
母親。
『でも危ないので近づいてほしくないです』
「お母さん!」
SNSも燃えていた。
《新宿パンチマン》
《何と戦ってたのか大喜利しようぜ》
《睡魔》
《花粉》
《月曜日》
《上司》
《過去の自分》
《住宅ローン》
「俺の戦いを社会人の苦悩にするな!」
さらに、
《#見えない敵と戦う人》
がトレンド一位になっていた。
「完全にバカにされてる!」
『でも一部では支持されてるよ』
「ほんと!?」
ユイがスマホを見せる。
《巨大ロボかっこいい》
《パンチのフォームが綺麗》
《腰が入ってる》
《操縦者はボクシング経験者?》
「そこ!?」
その日の午後。
政府の記者会見。
官房長官が壇上に立っていた。
『昨夜、新宿区内で発生した大型機械の運用につきましては、政府として詳細を確認中であります』
記者が手を挙げる。
『あの機械は兵器ですか?』
『コメントを差し控えます』
『自衛隊のものですか?』
『コメントを差し控えます』
『なぜ新宿に?』
『コメントを差し控えます』
『何と戦っていたんですか?』
官房長官が一瞬止まった。
『……安全保障上の観点から、お答えできません』
SNS――
《答えられない敵》
《やっぱり宇宙人か?》
《中国?》
《アメリカ?》
《怪獣?》
《政府が隠すってことはUMA》
《ロボ自身が敵説》
「最後のやつ強すぎない?」
『一般人から見たら一番自然だよね』
「言うな!」
三日後。
再び警報。
『霊反応! レベル5!』
「今度はどこ!?」
『渋谷!』
「また都会!」
『巨大女性霊! 推定百三十メートル!』
「行くぞ!」
『待って!』
「何!?」
『政府から通達!』
「なんて!?」
『なるべく建物を壊すな!』
「敵にも言ってくれ!」
アークⅡ出撃。
渋谷。
巨大女性霊がスクランブル交差点に立っていた。
長い黒髪。
白いワンピース。
完全に王道の幽霊。
ただし百三十メートル。
『返して……』
「今度は何!?」
『私の……』
「うん!」
『スマホ……』
「現代霊だ!」
『死去年、二〇二四年!』
「新しい!」
『スマホを落として線路に降り、電車にはねられた可能性が高い!』
「悲しいけど原因が現代的すぎる!」
『返してぇぇぇぇ!』
「機種は!?」
『不明!』
「ケースの色!」
『ピンク!』
「情報が弱い!」
巨大幽霊が腕を振り回す。
アークⅡが避ける。
看板が壊れる。
「まずい!」
『損害額一億!』
「看板一枚で!?」
『渋谷だから!』
アークⅡが反撃する。
「霊滅キック!」
幽霊を蹴り飛ばす。
一般人には、何もない空間へ華麗な回し蹴りを放ったようにしか見えない。
SNS――
《渋谷でまたロボ》
《今度は蹴った》
《こいつ格闘技始めたぞ》
《昨日パンチ、今日はキック》
《成長してる》
「成長じゃねえ!」
巨大女性霊が消える。
事件解決。
翌朝。
【特集 巨大ロボはなぜ街へ現れるのか】
「もう特集組まれてる!」
コメンテーター。
『承認欲求ではないでしょうか』
「違う!」
『人の多い場所ばかりに現れている』
「幽霊がだよ!」
『目立ちたいんでしょうね』
「俺じゃない!」
『新宿、渋谷と来ていますから、次は池袋でしょうか』
アキラとユイが顔を見合わせる。
警報。
『霊反応!』
「嘘だろ」
『池袋!』
「コメンテーター霊感あるだろ!」
池袋。
巨大少年霊。
撃破。
被害。
サンシャイン前の道路。
翌朝。
《巨大ロボ、都内巡回か》
《次は秋葉原との予想》
その夜。
秋葉原。
『霊反応!』
「誰だよSNSで予言したやつ!」
巨大オタク霊だった。
『限定版……』
「何の!?」
『予約したのに……』
「未練の理由が具体的!」
撃破。
翌朝。
《巨大ロボ、秋葉原で謎の勝利ポーズ》
「勝ったんだからいいだろ!」
さらに一週間。
六本木。
品川。
上野。
浅草。
巨大幽霊が出現する。
アークⅡが倒す。
街が少し壊れる。
ニュースになる。
炎上する。
世論は完全に、
「謎の巨大ロボが東京各地で暴れている」
で固まっていた。
ついに国会でも問題になった。
『総理!』
野党議員が声を張り上げる。
『あの巨大ロボットは、一体何と戦っているんですか!』
総理大臣が答える。
『政府といたしましては、国民の生命と財産を守るため必要な措置を講じております』
『質問に答えてください!』
『必要な措置です』
『なぜ空中を殴る必要があるんですか!』
『必要だからです』
『なぜ!?』
『必要だからです』
SNS――
《必要だから殴る》
《今年の流行語候補》
《必要パンチ》
「政府まで俺をネタにするな!」
そして、ついに対策本部へ、とんでもない通知が届いた。
『神崎』
「はい」
『国土交通省から』
「うん」
『今後、出撃前に道路使用許可を取れって』
「幽霊待ってくれないよ!」
『警察からも』
「何?」
『百メートルを超える機体を市街地で移動させる場合、事前に交通規制の申請を』
「だから待ってくれないって!」
『環境省から』
「まだあるの!?」
『霊子砲発射時の騒音について』
「行政手続きがラスボスみたいになってる!」
『あと保険会社』
「嫌な予感しかしない」
『アークⅡを自動車保険の対象にできないかって』
「百メートルロボに車両保険かける気!?」
『対人無制限で』
「必要だな!」
ある日。
超常災害対策庁に、一通の苦情電話が入った。
『もしもし?』
『はい』
『昨日、巨大ロボットがうちのマンションの横で戦ってましたよね?』
『はい』
『植木鉢が落ちたんですけど』
『申し訳ありません』
『何と戦ってたんですか?』
『巨大霊体です』
沈黙。
『……幽霊?』
『はい』
『巨大な?』
『はい』
『どれくらい?』
『百六十メートルほど』
さらに沈黙。
『あの』
『はい』
『ちゃんとした人に代わってもらえます?』
「俺たちがちゃんとした人なんだよ!」
そして、ついに政府は方針転換した。
巨大幽霊の存在を公表する。
記者会見。
超常災害対策庁長官が壇上に立つ。
『国民の皆様にお知らせいたします』
全国生中継。
『我が国では現在、巨大な霊的存在による災害が発生しております』
記者席が静まり返る。
『いわゆる、巨大幽霊です』
一秒。
二秒。
三秒。
記者が手を挙げた。
『証拠は?』
『ありません』
『映像は?』
『映りません』
『写真は?』
『写りません』
『レーダーは?』
『反応しません』
『一般人には?』
『見えません』
『科学的に存在を証明できますか?』
『できません』
『では、なぜいると?』
長官が胸を張った。
『見える者には見えるからです』
翌朝。
《政府、巨大ロボ暴走の理由を「幽霊」と説明》
《海外メディア「日本政府がオカルト化」》
《専門家「非常に心配」》
《野党「まず操縦者の健康診断を」》
アキラは新聞を机へ叩きつけた。
「公表して悪化してるじゃねえか!」
その日のSNS――
《政府公式設定:幽霊》
《後付け設定が雑》
《炎上したから怪獣追加したの草》
《でも怪獣は映ってません》
《予算八千億円のごっこ遊び》
「ごっこじゃねえ!」
アキラは叫んだ。
その瞬間。
警報。
これまで聞いたことのない音。
『超巨大霊反応!』
「レベルは!?」
『測定不能!』
「場所!」
『東京湾!』
モニターが切り替わる。
海の向こう。
雲の中から、巨大な顔が現れる。
続いて肩。
胸。
腕。
全身。
高さ二千メートル。
都市を見下ろす、途方もない巨大霊体。
『……返せぇぇぇぇぇ……』
アキラは口を開けた。
「今度は何を!?」
『解析中!』
「まさか東京全部とか言わないよな!?」
『判明!』
「何だ!」
『墓地!』
「切実!」
『再開発で潰された墓地の集合霊!』
「行政のせいじゃねえか!」
アークⅡが起動する。
「出るぞ!」
『アキラ!』
「何!」
『都から要請!』
「何だよ!」
『戦闘するなら、なるべく湾岸で!』
「注文が具体的になってきた!」
『都心は地価が高いから!』
「幽霊にも聞かせろ!」
アークⅡが東京湾へ向かう。
人々が一斉にスマホを向ける。
《またロボ出た》
《今度どこ殴るんだ》
《東京湾》
《海と戦うの?》
《次は水属性か》
「ゲームじゃねえ!」
二千メートルの巨大幽霊。
百メートルのアークⅡ。
圧倒的な体格差。
『勝てる!?』
「無理!」
『即答!?』
「でもやる!」
アークⅡが飛ぶ。
巨大幽霊の拳をかわす。
海面が霊圧で割れる。
アークⅡが肩へ着地。
「霊子杭、射出!」
巨大幽霊の首へ撃ち込む。
『効いてる!』
「まだだ!」
左腕。
右腕。
胸部。
連続攻撃。
幽霊が咆哮する。
空が震える。
東京中の照明が一斉に消える。
しかし、一般人にはやっぱり見えない。
ニュースヘリから見えるのは。
巨大ロボットが東京湾の上空で一人で暴れ。
急旋回し。
意味不明な方向へパンチし。
突然吹っ飛び。
再び飛び上がっていく姿だけだった。
『現在、巨大ロボットが東京湾上空で極めて不可解な飛行を続けています!』
「不可解じゃねえ!」
『ときおり何らかの攻撃を受けたように吹き飛ばされていますが、原因は確認できません!』
「幽霊だよ!」
『現在、巨大ロボットは空中に向かって連続攻撃!』
「そこにいるんだよ!」
最後。
アキラは機体の全霊子エネルギーを右腕へ集中させた。
『出力限界!』
「構わない!」
『これ撃ったらアークⅡも停止するよ!』
「街が残れば安い!」
拳が光る。
「これで!」
加速。
「成仏!」
さらに加速。
「しやがれぇぇぇぇぇぇ!!」
渾身の一撃。
二千メートルの集合霊を貫く。
巨大霊体が静止する。
そして、崩れはじめた。
無数の光が、東京湾の上空へ舞い上がる。
数千。
数万。
数十万。
帰る場所を失った魂たちが、星のように空へ昇っていく。
アキラはそれを見上げた。
「……きれいだな」
『うん』
「これ、みんなにも見えたらいいのにな」
『そうだね』
光が消える。
東京は救われた。
推定数百万人の命が救われた。
霊障は完全に消滅。
アークⅡは力尽き、その場へ膝をついた。
アキラは深く息を吐く。
「終わった……」
『お疲れさま』
「今回こそ、さすがに理解してもらえるかな」
『政府が公表したしね』
「二千メートルだぞ?」
『うん』
「東京全部停電したんだぞ?」
『うん』
「さすがに信じるだろ」
翌朝。
【速報】
《巨大ロボット、東京湾で長時間にわたり単独暴走》
「なんでだよ!!」
テレビではコメンテーターが険しい顔をしていた。
『昨日の政府発表では、巨大な幽霊と戦っているとのことですが』
『はい』
『残念ながら、今回も幽霊の存在を確認できる映像はありません』
「だから映らないって言ってるだろ!」
『一方、巨大ロボットが東京湾を破壊している映像は大量に残っています』
「俺だけ証拠能力が高すぎる!」
SNS――
《幽霊 証拠なし》
《ロボ 証拠あり》
《どっちが脅威か明白》
《幽霊よりロボが怖い》
《幽霊はビル壊してない》
「物理攻撃できないだけだ!」
《むしろ幽霊、被害者説》
「違う!」
《巨大ロボに一方的に殴られてる可哀想な幽霊》
「見えてないのに想像力だけ豊かだな!」
さらに、新しいトレンド。
《#幽霊を守ろう》
「そっち!?」
『アキラ』
ユイがスマホを見せる。
《STOP GHOST VIOLENCE》
《霊にも権利を》
《一方的除霊反対》
「俺、ついに幽霊側から人権問題で殴られはじめたんだけど」
『人権じゃなくて霊権かな』
「上手いこと言ってる場合か!」
その日の午後。
対策庁へ新しい通知が届いた。
『神崎』
「今度は何」
『次回から』
「うん」
『巨大霊体との交戦前に』
「うん」
『可能な限り対話を試みるようにって』
「誰から?」
『人権団体』
「霊権じゃなかったの!?」
その瞬間、警報が鳴った。
『霊反応!』
「今度はどこ!?」
『国会議事堂前!』
「近い!」
『巨大霊体!』
「どんなやつ!?」
『歴代政治家の集合霊!』
アキラは数秒黙った。
「……行かなくてもよくない?」
『駄目』
「でも」
『駄目』
「国会だよ?」
『人命優先』
「はい」
アークⅡが起動する。
国会議事堂前。
巨大な霊体が立っていた。
何百もの政治家の顔が混ざり合った異形。
そして。
『責任を……』
「うん」
『未来へ……』
「うん」
『先送りするぅぅぅ……』
「成仏させろぉぉぉぉぉ!!」
アークⅡが走り出す。
テレビカメラが一斉に向けられる。
SNS通知。
《速報 例のロボ、国会へ》
《ついにクーデター》
「違ぁぁぁぁう!!」
今日も、人類は救われている。
たぶん、誰にも信じてもらえてはいないが。




