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幼馴染に愛を込めたお弁当を〜隠し味は私で絡めて〜  作者: 花月アイコ
沈みゆくスパークリング

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第21話

 ………………待って。


 ――私を生んだあの人がこちらに目もくれないで、遠ざかっていく。


 お願いだから、待ってよ!


 ――私の声はあの人に届いていなかったのだろうか。

 距離がどんどん離れていき、姿が小さくなっていく。


 置いていかないで……私を見捨てないで…………


 ――彼女の姿はもう見えない。

 全身の力が抜け、その場に崩れ落ちる。下を向いているのに地面がない。


『い…………と……い、と…………糸』


 わ、私は……ここにいるよ!!


 ――斜め後ろから私を呼ぶ声が聞こえた。

 顔を上げ、声の持ち主を探す。この声は太陽のように私を照らしてくれていた。


『……アウは糸のことオハナだと思っていたよ。……でも、糸は違ったんだよね』


 ……えっ?


 ――太陽は陰りをみせ、私から光を奪う。


『ごめんなさい……そして、さようなら』


 ――斜め後ろを歩いていた彼女は、私の横を追い越して先へ進み……消えてしまった。

 これで私は独りぼっち。


 やめて……マカナまで私の前からいなくなったら……もう私には、何も残らないよ…………


 ――マカナにも捨てられうずくまっていたところ、畳みかけるように喉元が苦しくなる。


 喉元を締め付けていたのは私自身の髪の毛。

 足掻(あが)けば足掻(あが)くほどに、あの人から『糸の髪は透き通って綺麗ね』と褒められた髪が絡んでくる。


 ああ……これは、マカナに私の髪の毛を食べさせていた罰なんだろうね。


 見える景色は薄れていき、体が泡となって、意識は浮き上がっていき……ここで夢の終わりを悟る――――




 …………時間はまだ、昨晩にアラームをかけていた時間よりも一時間早いようだ。


 さっきまでの夢で見ていたことは薄れてしまったが、最近は似た内容の夢しか見ていない。おおかた、今回の夢もそうだろう。


 今回見た夢はいつもより精神的に負担がかかったようで、身体中に汗びっしょり。寝ている間に水浴びでもしたのかな、というレベルで酷い有り様。


 これでは着替えてもしょうがないので着替えの服を持って、シャワーを浴びに風呂場へ。


 早起きしたので、朝の貴重な時間にシャワーを浴びる時間を確保できた。だけど、汗をここまでかかなければ、弁当作りのほうへ時間を費やせたことに気付く。


 髪を乾かすにしても三十分は必要になる。一時間早く起きたとはいえ、ゆっくりはしてられない。


 濡れた服を脱ぎさって風呂場に入り、シャワーの栓を回す。シャワーの水音と、漏れ出た安堵の息が浴室内に反響し、風呂場の鏡に映った私の姿が目に入る。


 ……なんて、みすぼらしい顔つきなのだろうか。


 レシピノートは今日で二十一品目の予定。三十品まで、目前に迫ってきた気がする。


 私は……マカナの信頼を裏切ってしまうだろう。たぶん、仮に奇跡が起きて、もしくはマカナが我慢してくれて、付き合うことができたとしてもだ。


 マカナを束縛したい思いがおさまりそうにない。


 どうせ、人間は生きていれば魔が差してしまうこともあるだろう。私を生んだあの女みたいに。間違いは誰にでもあり得る、仕方がないことなのは分かっている。


 それでも、マカナだけはダメなんだ。太陽のような彼女が私の他に光を与えてしまったら、私は身を焦がす嫉妬で呼吸することすらままならない。


 ハワイから日本へ会いに戻ってきたのは、私ではなくて……マカナからなのにね。自分勝手が過ぎる。


 こんな一方的な感情。マカナが私に求めているオハナにはないだろう。どんな未来であれ、マカナに愛想を尽かされる未来しか見えない。


 いっそ、それならば……私からマカナとの繋がりを断ちたくなる。そんな度胸があれば、とっくに告白しているのにね。


 シャワーの栓を閉め、もう一度、風呂場の鏡に映った自分を見つめる。中途半端な私は、自分自身にすら目を背けてしまうらしい。

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