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幼馴染に愛を込めたお弁当を〜隠し味は私で絡めて〜  作者: 花月アイコ
捻じ曲がりポワソン

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第15話

「ふぅ……」


 昼下がりの調理室で息が漏れ出る。マカナと出会えたことで幸福さは使い切ったので、逃げていく幸せはないはずだ。


「お疲れ〜なんとかお昼休みの時間だけで、共有すべきことは確認できたね。まぁ、今日の放課後が本番なんだけど」

麦島(むぎしま)さんもお疲れ様です。すみません、麦島さんも今回のボランティアに巻き込んでしまって……」


 今回、料理交流する女の子は……内向的な性格になってしまったと聞かされていた。


 具体的な理由までは相手先から聞かされていないけど、()()()()()が影響しているのだろう。


 会話のボキャブラリーは並以上にあると思っていたが、どうしても、子どもとの会話は難しい。嫌いとかは一切なくて、会話のズレが気になって難しく思える。


 そのため、子どもの扱いに()けている麦島さんがいてくれると心強かった。


「これぐらい、いいってことよ。それにしても……今回の糸ちゃんはこの料理交流に、いつもより気合が入っていたよね。ひょっとしたら何かある?」


 麦島さんが疑問に思ってしまうのも無理はない。流石に、今回は強行が過ぎたかも。


「今回の案件は警察からもボランティアとして依頼されていたでしょう」

「らしいね」

「うん。でね、その依頼した警察の人が去年も別件だけど、ボランティアを依頼した警察官で……そのときは、被害者支援の関係だったのよ」


 幸いにも私は、犯罪に巻き込まれたことはない。母親の蒸発は育児放棄で訴えたいけど。当の本人が、もうこの世にいないので訴えることはできないが。が。


「それもあり、邪推(じゃすい)になるけど、家庭の事情が気になってしまってね。その子が料理を通して、息抜きになってくれたなら嬉しいな……と思った次第です」

「そっかぁ……糸ちゃんは立派だね。なら、わたしもガンバらないと!」


 ……立派かぁ。

 明確な理由がないままに、私は善い人になりたくて形ばかりの日々を過ごしている。


 この料理同好会もそうだ。とりあえず、社会貢献すれば、善い人になれるのではないのかと自分でも思っている(ふし)がある。


 でも、今回の件に関しては限りなく善意で動いているつもり。胸に手を置いて問いただしてみたら、自信はなくなってしまうけど。


「おっと、もうこんな時間!? 糸ちゃんはお昼ご飯をどうする?」

「私はこの昼休み中でちゃちゃっと食べちゃう。今日はマグロでハンバーグを作ってきたのだけど……今食べないと、夜まで持たない気がする」


 やはり、食事を摂っておかないと体は持たない。ついでに、マグロハンバーグで大当たりを引きそう。しっかり中まで火は通しているのに。


 ジィー、と横から視線を感じる。麦島さんが私の弁当を見ようとガン見。眼力の圧が強い。


「ほほう、これがマグロのハンバーグですか。見た感じ……豆腐を入れているよね。後、香りがいいのだけど……どうしてかしら?」

「うん、ハンバーグに豆腐はあっているよ。香りの正体は、焼くときにオリーブオイルを使ったからだね」


 お父様のツマミを作るために、昨日からモッツァレラチーズをオリーブオイルに漬けておいた。


 オリーブオイルは値が張るので、普段使いはしないがたまにはいいだろう。一度開封したのを使い渋っても仕方ないので、ハンバーグを焼くのにも使ってしまった。


「オリーブオイルか〜納得。わたしはオリーブオイルを使ったことがないのよね。お菓子作りで使わないから……」

「あー。たしかに、風味が強いからね。焼き菓子ならオリーブオイルがあうのかな。他には……アイスクリームに直接かけるとか?」

「リッチ〜」


 まだ、今回(ふう)を切ったオリーブオイルは中身が残っている。残ったオリーブオイルでマカナに何か作ってあげたい。ガーリックシュリンプに挑戦したいかな。


 う〜ん、料理名にガーリックと名がつくぐらいなのだから、たっぷりとニンニクも使って調理してみたいが、ニオイが怖くて学校へ持っていきづらい。


「マグロ……マグロ……」

「早く麦島さんもご飯を食べないと、お昼休みが終わっちゃうよ」

「マグロ……ハンバーグ、タベテミタイ」

「しょうがないな……はい、どうぞ」


 今日は最初から麦島さんとお昼が一緒になると思っていたので、私の髪の毛が入っていない、お父様用に作り分けたマグロハンバーグを忍ばせている。


 今朝マカナに渡したのは、言うに及ばず髪の毛を混ぜているハンバーグ。


「うぅ、一風変わったマグロの味わいがお上手で……こんなにも美味しい、糸ちゃんの手料理をほぼ毎日食べている和泉(わいずみ)さんがズルいよよ」

「まあね、マカナは幼馴染ですので」


 しかも、オハナだとも言ってくれている。


「へぇ、幼馴染ってすごいね。わたしにも、ここからそんな幼馴染はできるのでしょうか?」

「……私は麦島さんのこと、良き友人であり、信頼のおけるパートナーだと思っているよ」


 この料理同好会におきまして、お菓子部門があるのは麦島さんのご活躍によるおかげです。


 もし、麦島さんがいなければ、お菓子を作ろうと思わなかったので、下手すれば私が好きなこともあって漬け物をずっと漬けていたかも。 


「ありがとうね糸ちゃん。わたし……今日の放課後も頑張るよ!」

「料理の方は作り慣れたお菓子を今回採用したから心配ないけど、コミュニケーションのほうがね……今の小学生の中で流行っているものって……なに?」

「子どもはね、わたし達が堂々とカッコつけていれば自然とマネしたくなるものなんですよ。これはわたしの弟妹(ていまい)の話しだから、一般的な話しじゃないけどね」

「う〜ん……深いなぁ」


 幼いときは私も、あんな母親を尊敬していたこともあった。今思い返すと……尊敬する要素がほとんどなかったが、堂々としていた記憶がある。(わる)びれずに。

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