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マキシマム・ザ・クラウン  作者: しータロ(豆坂田)
第三章 ネクストセル・コーポレーション編

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第67話 賭けの価値

 バトルシステムズの隊員が武器の評価を行っていた。集められた隊員は各部門の精鋭、あるいは部隊長格の者達。彼らが命を預ける武器を選ぶのだから、彼らからの評価が何よりも重要だ。

 従来使用していたのはコーテン製M-MI2という小銃。採用した当時にしては値段が安く、導入コストを抑えられるうえに、性能も高い――という高水準な武器だった。

 しかし時間が経ったことで性能に不満を持つ隊員も現れ、中には、というよりほとんどの者が独自で内部機構をカスタムしたり、技術屋メカニックで改造してもらったりなどさえしている。


 さすがにこの現状を重大視したバトルシステムズ上層部がコンペティションを開いたわけだが、コーテン製M-MI2に代わる武器を見つけるのは中々に難しい。

 水中、山林、雪山、スラム、廃ビル、コーテン製M-MI2は取り回しのしやすさと耐久性、整備性の高さからあらゆる場所で扱うことができた。

 バトルシステムズは傭兵派遣企業の大手ということもあり、様々な状況を想定しなければならない。欲しいのはコーテン製M-MI2の完全な上位互換だ。


 コンペティションに参加している企業は当然、それが分かっていてコーテン製M-MI2を研究したうえで試作品を作り出した。書類審査を通過したということもあって、どれも一級品ではあるが、隊員が満足いく出来のものは少ない

 中にはコーテン製M-MI2の上位互換では無く、全く別の角度から責める企業もいるが、面白いだけで現実味にかける。欲しいの無駄な機能ではなく、状況に合わせてカスタムできる拡張性だ。


「どれもいい武器だったが、ちと決めてにかけるな」


 隊員の一人が武器を構え、的を狙いながら呟く。

 どれもこれも素晴らしい武器なのは事実だ。コーテン製M-MI2と規格がほぼ同じということもあって、従来の装備で取り付けていたアタッチメントをそのまま流用することができるのもいい。

 ただ、そのようなM-MI2と似た武器が幾つもあるというのが問題だ。

 M-MI2の上位互換しかない。各社ほとんど特徴を持たず性能がいいだけ。同じような武器が量産されていれば決めるのは難しい。ここまで来ると個人差の問題だ。稀に奇をてらったような武器も存在するが、実践を想定するとなると面倒になる要素が幾つか残る。

 ほとんどどれを選んでも今の装備からグレードアップすることは確か。

 しかし物足りないのも事実だ。


「今のところは……こいつか」


 隊員が今持っている小銃を見る。

 実地試験は幾つもの過程を経るため、多くの武器を一日で審査することはできない。

 今日はコンペティションの最終日であり、隊員が今持っている銃が最後の物品になる。


(拡張性、整備性、耐久性……どれをとっても高水準。だが面白味は無い。拡張性がやけに広いところを見るに、自分でカスタムして面白味を見いだせってことだろうが……)


 カスタムせずとも最高の武器であることには変わりない。

 しかしこの銃も他と同じくM-MI2の上位互換でしかない。基本的な要素をすべて高水準で取り揃えた基本に忠実な、まるで教科書のような小銃だ。しかしながら細部までこだわり、バトルシステムズの隊員が使うことを想定した設計。

 

(作った奴は俺らと同類だな)


 明らかに戦闘を分かってる奴が作った銃だ。


(名前は……ネクストセル・コーポレーションか、聞いたことないところだな)


 これほどの技術力のある会社を戦場に身を置く傭兵として知らないのはおかしい。どこかの軍事企業の設計担当が独立して作った会社か、天才的にセンスのある元傭兵が立ち上げた会社か。

 少なくとも、名の通った企業ではない。


(まあ俺らはこいつになるだろうが、上がどうするかだな)


 小銃を構え的に向かって引き金を絞りながら隊員は結論を定めた。


 ◆


 隊員が最後の実地試験を行う様子をミカとダンテが見下ろしている。

 ダンテは隊員の様子からある程度のことは察し、口を出す。


「今のところは予想通りですね」

「とんでもないイレギュラーが無い限りは、ひっくり返されはしないだろうな」

「情報はケルン(あの人)から?」

「ああ。ぎりぎりの調整だ」


 ミカは事前にケルンから他者のデータを渡してもらっていたこともあり、どの程度まで優れた武器を作ればいいかは把握していた。本来ならばじゃあどうやってそれを上回る武器を作るか、という難題に陥りそうではあるが、ウィンドウを使えば問題にはならない。何しろ、エネルギーパックが使われた銃も含め、ウィンドウには既成の製品よりも遥かに優れた武器がカタログされてある。


 このコンペティションはただの踏み台。

 持ち得るすべての情報を吐き出して勝つようなものじゃない。

 ケルンから送られてきた書類審査のデータをもとに、ウィンドウのリストの中から武器を選ぶ。革新的な技術が用いられず、かといって他の企業には負けない、そのような銃を探した。

 細かい部分はミカが調整すればどうにかなる。 

 ウィンドウを開き、武器のカスタマイズ欄から最適な調整を選び取る。

 基準はケルンから渡してもらった書類の中で最も秀でた武器よりも僅かに性能が良く、コーテン製M-MI2と互換性のあるよう仕上げる。これはウィンドウの力ではどうしようもなかったので、ミカの実力だ。

 スクラップ漁りをしていた時の経験のおかげだ。


「そろそろですか」


 スーツを正しながらダンテがミカを見る。

 

「ああ。俺は基本後ろで見ているだけだ。頼んだ」

「当然です」


 二人が会話を交わしたすぐ後、部屋の扉が開かれケルンが姿を見せる。


「カイマン試験評価部部長がお呼びです」


 予想通り。

 ここからが鬼門だ。

 果たしてこちらの条件を飲ませられるか。

 ミカとダンテは僅かに息を吐いて緊張を和らげる。

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