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マキシマム・ザ・クラウン  作者: しータロ(豆坂田)
第二章 ナイトウォッチ編

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第58話 ゴミの都市

 ミカがエマから話しを聞いてから僅かに経って、ミカは特別四課の任務を行っていた。

 任務の内容は違法売春の摘発だ。

 ダストシティと性産業は切っても切り離せないモノであり、基本的にどのような営業であろとも黙認されている。しかしあまりにも勝手をし過ぎれば企業部隊か警察《PCD》が動く。

 今回はミカたち特別四課が動いただけ。

 今回はミリアが非番でクロも別の件で動いているため、ミカとウォルターの二人で仕事だ。


「準備は」

「できてるよーん」


 ウォルターはどこか楽観的に答える。

 ミカたちは現在、摘発する予定の売春店の裏口の前にいた。


「可能なら生け捕り……とは言われてるが、どうする」


 ミカがウォルターを見る。

 『摘発』と言いつつミカたちがするのは面倒な営業をした売春店を潰すだけ。基本的に従業員も店長も含め殺害の許可が出ている。当然、抵抗しなければ殺さないが、果たしてどうか。


「まあ本当に『可能なら』でいいんじゃないかな」


 ウォルターもミカと同じ結論だ。

 今回の任務は面倒になりそうだったら殺して解決できる。

 だったらその選択を選んだ方がいい。

 無理に生かすだけどこかで恨みを買われる。


「分かった」


 ミカが答えてコーテン製P-34ラグナイト拳銃を取り出し、裏口の鍵穴部分に向かって数発撃ちこんで扉を開ける。

 同時にウォルターも懐から拳銃を取り出した。

 今回は電力チャージ式の拳銃では無く、ミカと同じコーテン製P-34ラグナイト拳銃を一挺だけ。

 取り回しのしにくい狭い室内、そして相手のレベルの事を考えればこれで足りると考えたのだろう。


 ミカとウォルターどちらとも質の良い消音器サイレンサーを取り付けてある。

 発砲に当たって出る音はほぼゼロに等しい。


「一階部分から」

「了解」


 ミカの言葉にウォルターが答えて裏口の向こう側へと足を踏み入れる。


 裏口を開けてすぐ目に入ってきたのは棚が三列ほど並んだ倉庫。

 薬品が積まれている。

 そして裏口の斜め上に監視カメラ。

 まず入ると同時にミカが監視カメラを撃ち抜いて、ウォルターが裏口を閉める。

 倉庫に人がいないことを確認すると、棚に積まれた薬品にミカが視線を傾ける。


「今回ので使われたやつか」

「そうだな。胸糞悪い事件だよ」

「珍しいな」


 ウォルターが一つの事件に対して感情をむき出しにして鬱憤を呟くことなどあまりない。

 

「俺だった一つや二つ、恨み言ぐらい言いたくなる」

「そうかよ」


 ミカが苦笑しながら答えて倉庫の扉を開ける。

 すると長い通路と、両脇に部屋が立ち並ぶ空間が現れる。


「適当なところからでいいか」

「見ておく」


 ミカが扉の一つを蹴破って中にいる客と従業員を見る。

 客はまだオプションの選択中だったようで行為には及んでいない。

 タブレット端末を持つ男から視線を移し、ミカは従業員を見る。


「カルロス・フィリップはどこにいる」

「え、か、カルロス?」


 突然のことに理解が追い付かず慌てふためく従業員のことなど気にせず、ミカが続けた。


「ここの店長のことだ。どこにいる」

「か、かる……そ、それは」


 言い淀む従業員にミカが拳銃を向ける。


「ここでやってることが違法なことは知ってるよな。別に今ここで撃ち殺してもいいんだぞ。もう一度聞く。カルロス・フィリップはどこにいる」


 ミカが問いただす。

 すると客の方が状況に耐えられなくなったのか逃げ出す。

 だが客が立ち上がった瞬間、ミカが太腿を撃ち抜いてその場で座らせる。


「うるせぇよ。要があるのは従業員そっちだ」


 容赦なく引き金を引いたミカを見て、従業員はすぐに口を開く。


「に、二階です! 二階の上がって――すぐ右に曲がったところ!」

「分かった。ありがとう」


 銃口を降ろす。


「じゃあ他の従業員と客に店から出て行くよう伝えてくれ」

「わ、分かりました!」


 話も済んだところでミカが振り向いてウォルターを見る。


「だそうだ」

「手荒だな」

「早く済んだろ」

「それもそうか」


 二人が店の中を歩いて二階へと続く階段を見つける。


「今回の事件ってのは電脳化とピンクドールズだろ」


 階段を上がりながらミカが軽く尋ねる。

 ウォルターは僅かに表情を歪めてため息交じりに答えた。


「そうだな。無理矢理電脳化した上で電脳をハック。そして人の体を持った言いなり人形を使って稼ぐ。まあ人がやっていいことじゃないわな」


 対象となるのはスラムの子供や多額の借金を背負った債務者。それらの人々に電脳化の手術をすることで金を渡す、借金を減らすなど下手な口車を使って人を集め。入手経路の怪しいウイルス仕込みの電脳を入れる。

 そしてウイルスを起動させ、人の体を保ったままの人形にする。

 客はリモコンを使い人形を好き勝手に操作して欲望を満たす。

 その欲望というのは様々で……言うには憚られる。


 そうした行為はこの売春店だけで行われるものではなく、時には企業の幹部が催しとして行うこともある。

 ただ、この店のようにあまりにも露骨に営業していては駄目だ。

 それに電脳化の手術は都市が決めた場所でしか行えぬ規則になっている。地下街然り見放されてるだけで大っぴらに動かれるとこっちも取り締まらなくちゃいけなくなる。

 今回、ミカたちが動くことになったのには主に後者の理由が関係している。


「――おいカルロス・フィリッ」


 カルロス・フィリップがいるという二階の部屋を開けた瞬間、散弾銃の弾丸が扉をぶち抜いてミカたちを襲う。

 同時に、中からカルロスの声が聞こえてきた。


「――出て行け! お、俺が何をしたって――」


 可能ならば生け捕りが望ましいと上から言われている。

 ミカたちはその要望に従って先制攻撃をしてきたカルロスを生け捕りにすることにした。

 

 弾丸でぶち破られた扉の隙間から見えるカルロスをウォルターが撃ち抜く。

 腕、足、散弾銃に至るまですべて。

 同時にミカが扉を蹴破って転がり込みながら室内に潜り込むと瞬時にカルロスとの距離を詰めた。 

 そしてミカが懐に入る頃にはすでにウォルターがカルロスの四肢を撃ち抜き行動不能に陥らせている。

 ただ相手がクロームギアを入れていることを加味して、ミカは懐から取り出した硬直剤をカルロスの首元に打ち込んだ。


「制圧完了」


 硬直剤によってクロームギアの活動が瞬時に阻害され、力なく崩れ行くカルロスに視線をやりながらウォルターに告げる。

 すぐにウォルターも部屋の中に入って来るとカルロスを見下ろした。


「終わりだ。周りを巡査部門が取り込んでる」


 すでに店の回りを巡査部門が取り囲み、その場にいた従業員と客を捕まえている。

 これから証拠品が押収される。


「案外何ともなく終わったな」

「まあな」

 

 ミカの呟きにウォルターがため息交じりに返答をした。

 

(さて……)


 仕事も終わったところ。

 後は巡査部門が来るまで部屋で待機するぐらい。

 暇だからとミカが部屋を見渡してみる。

 散弾銃のせいで荒れた部屋だ。

 テーブルの上にはカルロスが先ほどまで飲んでいたであろう飲料水と、液体に浮かぶ電脳の切れ端。

 なぜこんな場所に置いてあるのかは分からない。

 ただ新鮮な電脳なのか液体に銀色の物体が染み出していた。

 

(これは……)


 ミカがそこで気がつく。

 電脳に使われているのは液体電池だ。

 安全性と整備性に難があり昔に使われなくなった古いモデルの電脳ということ。

 ただミカにはその情報よりも液体電池という言葉に意識を取られていた。

 もしかしたら、これが『エネルギーパック』を作る上での糸口になるかもしれないから。

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