表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マキシマム・ザ・クラウン  作者: しータロ(豆坂田)
第一章 ジャンクヤード編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/65

第5話 行いの清算

「おいおいこりゃ、酷くやられたなぁ」


 昼前、エルドファミリーの構成員であるライアンがミカの屋台を訪れていた。特に理由があったわけではなく、拠点に向かうついでに彫り出しものでもないかな、と軽く立ち寄っただけに過ぎない。

 ミカがいるかいないのか、その程度のことが分かればよかっただけ。

 

「バラバラじゃねえか」

 

 ミカの屋台が壊されていた。

 犯人は分からない。現場にはすでに人が残っていないし、いるのは何が起きたのか気になって見に来た野次馬だけだ。ミカはそれなりに顔が広かったのか、数人の店主や客が頭を抱えている。

 確かに、あれだけ質の良いジャンク品を取り扱う場所も少ない。客にとっては馴染みがあり且つ優良店だった店が荒らされているのは、思わず頭も抱えてしまう。ただ店主が頭を抱える理由は分からない。


 単純に『店が荒らされているということはミカの身にも何かがあったのではないか』と考えている可能性はありえる。ただ、ライアンの直感がそうではないと告げていた。

 おおかた、この結末は予測できていたもの。

 ミカの現状を考えればいつかこうなるのも仕方ない、といった諦観がその表情には含まれている。


 それに、物陰や人の隙間から笑みを浮かべている者が数人いる。彼らが直接手を下したわけではなさそうだが、間接的には関わっているだろう。ミカの同業者という線が一番ありえる。


(商業組合か?)


 ライアンは一発で答えに辿り着く。

 現状を鑑みれば当然の推測だが、壊されたミカの屋台を見つけてからその結論を導き出すまでに10秒とかかっていない。


(だとしたら……まあだろうな)


 屋台の周りでミカのことを案じながら頭を抱えている他の店主と同じ思考に行く着く。

 ライアンが見た限り、ミカの性格だと商業組合には入っていないだろう。少し見ただけだが、それなりに戦えそうでもあった。商業組合としては叩けば潰せるが、そのコストが高すぎて見合わないから放置していた、ということだろう。

 

 商業組合に参加している店主たちの苦言か、それともミカが何か無茶をしたのか、単に堪忍袋の緒が切れたのか、理由は定かではない。それでも商業組合がミカに何かしたということは確かなように思える。


「潮時か」


 ライアンが微笑む。

 エルドファミリーとしてはパウペルゾーンが生み出す収益をそのまま横取りしていく商業組合の存在は前から気にいらなかった。それに、ぐちゃぐちゃで汚れていて、訳が分からないところがパウペルゾーンの良い所なのに、無駄な規則を持ちこんだ商業組合に対してライアンは個人的に良い感情は持っていない。


 今までは敵対組織である徒党、ギルバーンがいたから派手に動けず、商業組合の方にまで手が回らなかった。しかし最近はギルバーンの活動も僅かながらに落ち着きを見せたところ。

 隙を見せ過ぎればギルバーンに攻撃されるだろうが、十分に育ったエルドファミリーであれば、僅かな戦力で商業組合を潰せる。

 それに。


「ふむ……交換材料に使えるかもしれないな」


 ミカがまだ生きていればの話ではあるが、商業組合を潰し助けたことを交換条件に色々と協力してもらうのもいい。彼ほどの技術を持った修理屋はスラムにも中々いない。


「さて……」


 で、あればすぐに行動を開始しよう。

 エルドファミリー内部の意見を統一する必要があり、僅かに時間がかかってしまうがライアンがその気になればすぐにでも構成員を動かせる。

 上手くいけば目障りだった商業組合を叩き潰せる上に優秀な修理屋まで引き入れらる。


「っくは!」


 ライアンは特徴的な笑い声をあげるとエルドファミリーの拠点へと向かって歩き始めた。


 ◆


 ミカが散弾銃の制作にあたってから一日が経過した。

 夜を越えて、次の日になっても制作を続け、たまに携帯食料と水分を取るのみでほとんどはホログラムとにらめっこをし続けながら、部品を組み立てた。散弾銃を作り終わった後は他の銃を、余った部品があれば外に置いてあるスクラップの山から必要な部品をかき集めて再度作った。

 部屋を照らす壊れかけのランタンの近くでミカは部品を作り続けた。そして24時間ほどが経過してまた夜が訪れた頃、やっと作業が一段落した。


 作業に使っていた手袋は黒く汚れ、オイルのせいでべとべとになっている。

 顔も煤のようなもので黒く汚れているし、家の中も少しだけ汚くなってしまった。

 しかしその甲斐あって、ミカは幾つかの銃器とジャンク品を作り上げた。


 拳銃が二つ。小銃と散弾銃、突撃銃がそれぞれ一つずつ。

 手元にあるフレームの形を考慮して拳銃一つと小銃、突撃銃はミカでも知っている量産型且つ安価、それでいて整備性の高いよく知られている銃器を制作した。残りの散弾銃ともう一つの拳銃。

 この二つはどちらとも電磁機構砲台レールガンと同様の性能を備えた物となっている。

 

 基本的に、この二つを作らなければ他のも色々と作れる物はあった。しかしやはり、ロマンというのは追い求めたい。散弾銃を作った余りを使って拳銃を作成。主にこの二つの制作に半日以上を使った。

 何しろミカが初めて見る機構を搭載している物。ロクな道具も環境も無いこの汚い場所で作るには些か難易度が高かった。

 いや、高すぎた。

 最初に作った散弾銃と拳銃でミカの体力はほぼ底をつき、その後に製作した小銃と突撃銃、拳銃で完全に無くなった。その後も時間を掛けつつ、体力を回復しつつ機材類の制作に取り掛かりはしたものの、ミスの連発、思う用にはいかなかった。

 しかしそのおかげで。


「XR-12—ヴォルトハイヴとARC-7—マグボルトか、いいね」


 それぞれ制作した時にリストに載っていた散弾銃と拳銃の名だ。

 実に高揚する文字の並び。制作作業が一段落した達成感と最高の武器を手に入れられた充足感で思わず顔がにやけてしまう。本当ならば残った拳銃一挺と突撃銃と小銃もそれぞれ持っておきたいところ。


 しかし売る目的で作ったため、これは手放すしかない。

 それに、どうせあっても使う機会はそう訪れないし、使うとしたら電磁機構砲台レールガンの機能が搭載された方にしたい。普段使いする分には普通の拳銃をすでに一挺持っている。


「余ったやつは……」


 ミカが床に並べられた部品を見る。今回使わなかった、使い切れなかった素材たちだ。

 家に置いていたら盗まれる可能性があるが、今のところ盗みに入られたことはない。すぐにでも売ってしまって現金化するのもまた良し。ただ、あまり高くは売れないだろう。

 であれば、ジャンクヤードやパウペルゾーンで必要な部品を見つけたらその度に集めて買って、少しずつ組み立てていく方がいい。それに、まだ残っている部品で明日も組み立てられそうな物はある。


「……疲れたな」


 丸一日寝ないで、前日を含めると30時間以上寝ないで作業をしている。今すぐにでも寝たいところだ。ただ床に部品を並べたままじゃ寝られないので、片付けをする必要がある。

 片づけをして、明日に備えて寝る。

 また明日からスクラップ拾いと屋台での営業が待っている。


「さて……」


 一旦、疲れを体を伸ばすために立ち上がって背伸びをする。その瞬間、外から発砲音が響き渡った。

 一瞬で百発を越える弾丸が打ち込まれトタンの壁は穴だらけになる。柱を失ったバラック小屋は屋根を支えきれなくなり、土埃をあげて倒れていく。


「やったか」

「確認しろ」


 外では突撃銃を持った商業組合の傭兵が取り囲んでいた。

 数は五人。

 ゆっくりと倒壊したバラック小屋に近づく。トタンを掘り返し、ミカの死体を見つけるまで終わらない。


「それにしてもこんなが――」


 傭兵の一人が声を出した瞬間、バラック小屋の残骸を吹き飛ばす勢いで散弾が飛び散った。

 電磁機構砲台レールガンの機構が組み込まれた散弾銃の弾は一発でも掠れば手足がもげる。

 それを全身に食らえば?


「まだ生きて――」


 全方位に散弾銃が一気に放たれた。正面から散弾を受けた者は肉片となって飛び散る。

 手や足、頭部や内臓が遠くに密集して存在しているバラック小屋に降り注ぐ。

 たった三発。

 それだけで五人の傭兵を殺した。


 うずもれていたトタンの塊は散弾銃の衝撃ではじけ飛び、もはや見る影もない。

 スクラップとトタンの破片と、様々な物が積み重なった物の中からミカが姿を現す。

 頭から血を流し、銃弾が僅かに掠った影響で左腕をだらんと伸ばしていた。


「ったくよぉ……いてぇな……どうしてくれんだよ。クソが」


 肉片となった傭兵を見る。

 その中の一人にまだ息があった。両足とも吹き飛び、片手を失い、内臓が露出しているが。


「おい。どうしてくれんだ」

「ぢが……お――」

「違くはねぇだろ」


 次の瞬間、男の頭部が拳銃によって撃ち抜かれる。

 そして周りを見渡して、肉片となった傭兵を見る。その装備、襲われた状況から鑑みて商業組合の手勢だ。


「やろってんだなあいつら……ああいいぜ。やってやるよ」


 スラムでナイフを向けたのならば、銃を向けたのならば、その時点でどちらかが死ぬまで終わらないデスゲームが始まる。痛み分けはありえない。必ず、どちらかの死を持って決着となる。


「相手にとって不足なし――ってか?」


 ミカが二挺の拳銃をそれぞれ左右のホルスターに収める。

 方や電磁機構砲台レールガンの機構が組み込まれた拳銃——マグボルト。方や何ら変哲の無いスタンダードなタイプの拳銃。


 両手には電磁機構砲台レールガンの機構が組み込まれた散弾銃——ヴォルトハイヴ。


 まさかこんなにも早く、使う機会が訪れるとは思わなかった。


 準備を終えると、遠く離れた場所にあるバラック小屋を見る。銃声を聞きつけて住民が出て来ていた。


「漁んなよ」


 ミカがいなくなった後に漁られては困る。

 しかし、杞憂だろう。

 傭兵を一瞬で肉片ミンチした散弾銃を持った奴になど誰も近づきたくはない。


「待ってろよ、クソが」


 傭兵はまだ残っている。

 問題なく全員殺して商業組合の奴らも全員殺す。

 当然だ。それがスラムのしきたりだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ