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マキシマム・ザ・クラウン  作者: しータロ(豆坂田)
第二章 ナイトウォッチ編

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第48話 未知の勢力

 ミカとレオンが外路エリアの一角にある、誰もいない路地で話していた。


「取り合えず誰もいないところに来れたし、まずは挨拶から」


 レオンは軽く息を吐いてから喋り始める。


「特別三課所属のレオン・グランバートだ。まあ、僕がここにいる理由はだいたい把握できるかな?」


 特別四課と同じく特別三課もM-2PIKの捜査に割り当てられた。前々から地下街が怪しいという情報はすでにあって、調べるのは当然のこと。外路エリアと拡張現実の向こう側にあるこの領域についてまで調べるのは難しいことだが、相手も特別部門。 

 ミカと同じやり方か違うやり方か、いずれにしても特別三課もこの領域に辿り着いたということだろう。


「さっきは助かった。特別四課所属のミカだ。よろしく」

「どういたしまして」


 二人が軽く握手を交わす。

 そしてレオンが先に口を開いた。


「君がここにいるのは、M-2PIKの捜査のためかい?」

「そうだな。そっちも同じだろ?」

「まあね」


 今度はミカが懐に仕舞った拳銃の動作確認をしながら問いかける。


「今、どこまで分かってる」

「生憎、僕も今さっきここにきたばかりで多くの事は分からないな。おそらく、君と同程度だ」

「そうか……他に行動している仲間とかはいるのか」

「僕一人だね」


 となるとミカと同じ。

 

「君はどうだい?」

「俺も一人だ」

「となると……」


 少なくとも現状はこの二人だけでどうにか外路エリアの問題に対処しなくてはならない。一旦退避するにしても進むにしても、難しい問題だ。できれば外から助言を仰ぎたいところだが……。


「ここに入った時に通信機器が壊れてしまってね。君のはどうだい」

「俺も同じだ」


 ミカがリングを指し示し、次に胸元のボディカメラに目を向ける。

 記録こそされているものの、リアルタイムでの通信は途絶えていた。


「ただ、ボディカメラ(こっち)は通信こそ途絶えてるが、ここに入る前までは仲間と通信してた。何かあったことぐらいはあっちも分かってるはずだ」


 ホログラムの壁を越えた瞬間に通信が遮断されれば何かが起きたことは理解できるはず。

 そしてその原因が理解できないミリアとウォルターではない。

 きっと適切に行動してくれるはずだ。


「ならよかった。僕の方はまさか通信が遮断されるだなんて思っていなくてね」


 レオンも仲間に外路エリアのことと捜索のことは説明していた。 

 

「僕としては、こんな状況で捜査を進めるのは止めといたほうがいいと思ってる」

「まあ、そうだよな」

 

 ミカもおおむね同じ意見だ。

 仲間との連絡手段が立たれている上に、完全なアウェイ。土地勘が無い場所でM-2PIKの捜索をしなくてはいけない。加えてミカは生身だ。今からでも偽装工作をすればどうにか取り繕えるが、ここの住民を完全に騙せるわけでもない。 

 それに無理に進めばそれこそ売人に勘づかれて逃げられる。

 土地勘も連絡手段も無い状況で追いかけるのは難しい。


 だが、敵に好きにさせておくというのも気持ちよくない。


「ただ、このまま帰るってのも味気ない。少し探る」


 もしミカが敵だと気づかれていればすでに敵が逃げ始めているかもしれない、迎撃・襲撃の準備をしているかもしれない。あくまでも、ミカたちが一旦退いた方がいいのは、相手に勘づかれていないという前提の上に成り立っている。

 ミカはすでに敵に気がつかれているし、リングの偽装もバレた。

 もしこの情報が届いていれば退避という選択は最悪の結果をもたらす。

 

 ミカの決断が完全に正しいわけではない。

 しかし退避か進むかを迫られた時に一歩踏み出す様な選択を取るのがミカだ。


「君は……なんかこう、すごいな」


 ミカの言葉に対してレオンは否定も肯定もすることなく、ただただ関心していた。

 所詮はミカも子供、だと思っていた節があったのかもしれない。

 最年少での特別部門配属と築いてきた実績。

 実力もあっただろうが、運がよかったからだと無意識に思っていた。

 どうやら、確かな実力があるらしい。

 

「分かった。じゃあ少しだけ僕も手伝おうかな」

「いいのか」

「年下の子に手柄が取られたんじゃ仲間に示しがつかないからね」

「じゃあ競争だな」

「ははっ、そうだね」


 ミカは拳銃を懐に収め、そして二人は歩み始めた。


 ◆


「っが! 大丈夫ですか! ウォルターさん!」

「ちと痛てぇが、まあ大丈夫だ」


 ミリアとウォルターが乗っていた車両は擢弾によって爆破されたが、二人は簡易型強化服を着ているということもあって生きていた。それでも露出していた頭部は負傷し、ウォルターは血を流している。


 二人は爆発と共に燃え上がった車両の中から飛び出し、周りの様子を確認する。

 好奇心からか近づく市民が見えるのみで、襲撃犯は見当たらない。攻撃してすぐ逃げたのか、それとも市民に紛れて攻撃の機会を伺っているのか。


「報告したらすぐ行きましょう!」

「そうだな」


 現状、車両も無い状況で襲撃犯を追うのは難しい。

 それに周りに配置された監視カメラを使えばある程度は襲撃犯を解析できる。

 今、ミリアたちがするべきなのはミカを助けることだ。

 現状、ミカに何が起きているのかは分からない。しかし、ミカとの通信が遮断されるのとほぼ同時に擢弾を撃ち込まれたのは、あまりにもタイミングがかみ合い過ぎている。

 ミカにも何かがあったと考える方が妥当だ。


 であるのならば、襲撃犯の捜索よりミカの安否を心配する方が先決。

 このことは巡査部門や捜査部門に任せるとして、二人はミカの元へと行くのが最善の選択肢だ。


「連絡しときました、もうすぐ応援が来ます」

「了解。じゃあ現場を譲り渡した後、すぐ行くか」


 ◆

 

「現状、この場所は身体拡張者のための秘匿された空間ということになっているらしい」


 人気ひとけのない外路エリアの一角を歩きながら、レオンがミカに説明する。


「売られているのは違法なクロームギアや死者の記録を追体験するブルーレイチップ。基本、脳の髄まで機械に侵されたジャンキー用の物品が立ち並ぶ」


 違法のものばかりが市場に並ぶ、ということは摘発を避けるために規則が必要になる。

 それが外路エリアを包み込む閉鎖的なコミュニティであるし、ジャミングであった。

 ある程度説明が終わったところで、ミカが口を挟む。


「今どこに向かってるんだ」

「中心街かな」


 M-2PIKが外路エリアのそこら中で売られているわけでもない。何しろ警察が本腰を上げて捕まえに来ているのだから、警戒するのは当然。となると売るのは簡単にはたどり着けないような場所。

 それでいていつでも外敵を排除できる場所。


 簡単に目星をつけるのならば外路エリアの中心地だろう。


「取り合えず、こんなところかな」


 レオンが簡単に行動の理由を説明する。

 ミカよりも多少は外路エリアのことについて知っているというだけで、深くは知らない。

 ただ基本的な推測から中心街に向かえば何かあるのではないか、という予測は建てることができる。ミカも少し時間が与えられていれば同じ結論に辿り着いていただろう。

 直後、目の前の道から義体化を行った二人の男が歩いて近づいて来る。


「さて……」

 

 レオンが仕方ないといった顔をしながら拳銃を引き抜く。

 同時にミカも拳銃を引き抜いた。

 ミカとレオンが軽く話し合いながら男達とすれ違う。その瞬間に男達は体内に格納したブレードを展開させ――るよりも早く、ミカたちが二人とも撃ち抜く。

 

「どうやら、君行動は正解だったらしいね」

「まだ分からないけどな」


 襲撃者が来たということは敵がミカたちに気がついているということ。もし退避を選択していれば敵に逃げる時間を与えていた。あそこで進む選択をしたミカは間違っていなかったということになる。

 ただ、進んだとしても何も得られなければ意味が無い。

 敵が逃げる前に追いつく。

 依然として時間が敵であることに変わりはなかった。

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