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マキシマム・ザ・クラウン  作者: しータロ(豆坂田)
第一章 ジャンクヤード編

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第4話 新しき相棒

 その日の夜。ミカは早速拾い集めた銃器の部品を組み立てる作業に入っていた。組み立てに必要になりそうな、ガンオイルやスプリングなどの部品はあらかじめ買い足しておいて、銃器の部品と一緒に床に並べてある。


 楽しみだったがゆえについ奮発して金を使い過ぎてしまったが、後悔はしていない。


 毎日のようにスクラップを床に並べては組み立てて、修理して、ウィンドウの補助があるとはいえ難解で頭の使う作業だ。それをずっと続けている。ウィンドウが見えるようになった一年前からではない。


 その前から。ウィンドウが使える前から毎日のようにスクラップを組み立てていた。

 

 時には成長を感じられず、意味を感じられず、難解で面倒で、それでも続けられているのは、やはりこの作業が好きだからだろう。


「やるか……」


 喜々とした面持ちで床に並べられた部品たちを一瞥いちべつしてから、まずはウィンドウを表示させ、その中から今ある部品で作成可能な物のリストを表示させる。


 リストには幾つかの銃器から電子端末、その他機材に至るまで何十個ものアイテムの名称がずらりと並んでいる。


 そのうち一つの名前に触れてみると、ホログラムが浮かび上がった。

 リストに載っている名前だけでは判別がつきにくいので、このホログラムを見てどのような物なのかを確認していく。


 リストを上から順に押して行ってホログラムを見ていく。

 ただし、リストの中には『強化』の際と同様に『エネルギーパック』が必要素材として求められるものがあり、それらは他と違って僅かに名前の欄が薄く表示され、作成不可能なアイテムとなっている。

 試しにリストに表示された名前を選択してみても、他のアイテムのようにホログラムに投影されることはなく、表示されるのは名前のみで、それ以外の情報は得られない。


 調べることもできないのでリストの中で表示の薄いアイテムは選択せず、それ以外のものを選んでいく。

 短機関銃や小銃、狙撃銃、拳銃。そして高周波ブレードなど。


 ミカの知識が足りないのか、それとも新しい武器なのか。

 リストの中にはミカが知っているような姿かたちをした銃もあるし、見たことの無い銃もある。


(電磁コイルを活かしたいよな……)


 ニコちゃんマークのついたドローンから投下された物の中には電磁コイルや電磁機構を備えた内部機構も入っていた。


(作るとしたら……こいつか)


 リストの中央部分に電磁機構砲台レールガンに分類される銃器が幾つか載っている。固定砲台として機能するもっともスタンダードなタイプの電磁機構砲台レールガンから、小銃や狙撃銃の内部機構に電磁機構砲台レールガンの要素を入れ込んだものまで様々だ。

 幾つか銃器は作っておきたいが、売却用と個人で使う用で用途は分けるつもりだ。


 そして今選んでいるのが自分が使う用の銃。やはり自衛に使う銃は品質のよいものを揃えておきたい。取りあえずはこの電磁機構砲台レールガンを作ってから、他のものを考えていく予定だ。


 果たして拳銃か小銃か、それとも短機関銃か突撃銃か。

 悩ましいところだ。

 スラムで高威力の武器を使う必要はない。そのような機会に出くわすことはほぼ無い。かといって制圧能力が必要かと問われても、難しいところ。威圧用として長物を持っておくのも良いのかもしれないが、戦闘で使っているイメージがあまり湧かない。

 無難に行くなら拳銃か短機関銃。

 

「まあこれかな」


 ミカが選んだのは《《散弾銃》》だった。

 長物且つ取り回しがしにくい上に、使う場面もそう訪れない。

 

「ま、かっけえからな」


 しかし、そういった合理的な視点の分析を『かっこいい』というロマンが打ち勝った。

 それに、散弾銃だと一つ使ってもまだコイルが余る。そのあまりで突撃銃か短機関銃か、拳銃かを作れる計算だ。

 実は、散弾銃のホログラムを見た時からこのような結末に帰結することは分かり切っていた。やはり憧れは止められない。


「取り合えずいくか……」


 散弾銃に決めたものの、作るのは果てしなく難しい。

 初めて作るのだ。慣れないこと、失敗してしまうこともあるだろうが、根気強く作り続けていくしかない。

 ミカは散弾銃のホログラムを表示させ、制作に取り掛かった。


 ◆

 

「やるんだな」


 深夜。スラムにある一軒の家屋の中で男達が話し合っていた。

 男達はパウペルゾーンの屋台を取りまとめる《《自称》》商業組合の幹部たちだ。

 彼らの仕事は、パウペルゾーンで屋台を構える店主のうち、商業組合に参加している者の屋台を保護することだ。


 もともとパウペルゾーンでは、個人間の協定や暗黙の了解によってスラムの秩序が保たれていたが、彼らはそれを明文化・可視化した。自称「商業組合」とはいえ、それ以前には明確な規則もなく、露店は立てては壊され、また立てては壊されるという無意味な繰り返しが行われていたところを、彼らが商業組合を立ち上げ、加入者の屋台を守るようになったことで、破壊行為は多少なりとも改善された。


 ただ、参加しない店主の屋台を壊したり、家にまで行って脅迫したりと、行為は最低に近いものだった。ただスラムでは法など無く、ある程度の力を持つ彼らは罰せられない。

 パウペルゾーンでは彼らの敷いた規則が適用されることとなった。


 ただ、従わない者もいる。

 本来ならばそうした者は取り潰せばよい。しかし中には後ろ盾があったり、個人で武力を持っていたり、違う商業組合を作って団結と武力を盾に攻撃されにくい立場を作っていたり、商業組合にとっての敵は多い。

 パウペルゾーンで商業を営んで若い者にとっては人脈も権利も無いので、この商業組合の存在はありがたいが、そうでない者にとっては鬱陶しいことこの上ない。子供の頃から同業者と喧嘩しながらも信頼と人脈を得たミカにとっても、この商業組合は面倒なものだった。


 同時に、商業組合にとってもミカは邪魔な存在だ。

 人通りの多い道に屋台を構え、高品質なジャンク品を売る。商業組合が支配する地域の中にいるというのに従わず、それでいて客を奪う。加入している店主からはミカを恨めしく思う者も多く、幹部たちに苦言を呈す者もいる。

 何もしなければ商業組合の信用に関わる以上、ミカには何かしらの対策を取らなければならない。


「今まで失敗してきたんだぞ、やっぱりやめたほうがいい」


 ジャンクヤードやパウペルゾーンで、さらには家にまで押しかけて刺客を送ったが、全員が返り討ちにされた。

 その過去があるからこそ、手出しは慎重にならざるを得ない。


「いや、やるんだ。ここであいつを殺して力を証明する」

「でも誰に殺人の依頼をするんですか」

「私たちの部隊を使う」


 彼らの商業組合が急速に成長できたのには訳があった。商業組合を作り、身勝手な規則を敷けば当然反発が出てくる。その意見を封殺したのが彼らが抱える私兵だ。皆がスラムにしては良い装備を持って、それなりの訓練を受けている。

 もともと、この商業組合はダストシティからドロップアウトした者が、残していた資産のすべてを使って作ったということもあって、最初からある程度の強さを持った状態で誕生した。

 

 その結果が抱えている部隊であり、急成長のわけでもある。


「それに、私たちには《《後ろ盾》》もある」


 強力な後ろ盾だ。スラムを支配できるほどの権力を持ち、武力も圧倒的。ミカが敵う相手ではない。それに今日は、後ろ盾から戦力も少しだけ借りている。もはやミカが勝てる可能性はほとんど残されてはいなかった。

 

「必ず、今日で終わらせる」


 これから、商業組合がさらに権力を持ち、活動範囲を広げる上で足元に転がった障害は邪魔になる。

 だからここで叩き潰す。その先を見据えて。

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