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マキシマム・ザ・クラウン  作者: しータロ(豆坂田)
第一章 ジャンクヤード編

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第31話 抗争の行方

 エルドファミリーとギルバーンとの抗争。その最前線はジャンクヤードの中にあった。

 スクラップがどこまでも積み上がる山を盾にして構成員同士が銃口を向け合う。

 飛び交う数千発にも及ぶ弾丸は、ほとんどが地面へと命中してスクラップを散らすか、空の彼方へと飛んでいく。 

 稀に構成員に命中すると鮮血を散らし、叫び声をあげさせる。


 最初こそただただスクラップが積み上がっただけの空間が形成されていたが、今ではそこに塹壕のようなものも掘られ、泥臭い戦争の様相を呈し始めていた。このままでは物資と人員を消費するだけの泥沼の戦いになる。

 

 両陣営の構成員が薄っすらとその予想を立て始めた時、それは現れた。

 強化外骨格。

 エルドファミリーの本戦力の投入だ。

 スクラップを踏みつけながら前線を押し上げ、爆発物を無効化し、銃弾を跳ね返す。

 どの沼の戦いの中に現れた救世主。

 停滞していた前線が、抗争の様相が一気に変わっていく。


「ぶっ殺せ!」


 強化外骨格に続くようにスクラップの山から構成員が続々と現れる。時には投げ込まれた爆発物に巻き込まれるが些細な問題ではない。一人殺されても二人殺していれば、この抗争は勝利できるのだ。

 数は同じ。武器の質は僅かにギルバーンが優っている。しかし勢いと地理的な優位はエルドファミリーにある。


 強化外骨格は左手に装着された巨大な分厚い鉄の板を盾に、右手に持った機関銃で敵を一掃する。

 通常の人類では持てぬほどに巨大な機関銃。

 本来は戦闘機や戦車に取り付けられる代物を改造し、強化外骨格ように仕立てたもの。

 撃ち出される弾丸は人差し指ほどの長さを誇り、威力はすさまじい。

 一発でも当たれば致命傷は避けられないほどの威力だ。


 そのような武器を持った強化外骨格が盾で防御しながら悠々と歩みを進める。


「逃げ、逃げろー!」


 敵が一目散に後退していく。

 仕方がない。

 このまま前線を維持していても無駄な犠牲が出るだけで、意味が無い。

 しかし、作戦も無く、連携も取れていない退避行動は敵に背中を晒すだけ。

 逃げるその背中を強化外骨格の機銃が悠々と撃ち抜いていく。


 それでも全力でスクラップの山を駆け抜けて逃げるギルバーンの構成員。

 その退避に待ったをかけるようにして、ギルバーンもやっと本戦力が辿り着いた。

 ギルバーンの陣地に現れたのは三機の強化外骨格。


 装甲は持たずとも片手に盾を、片手に武器を持つ。

 一方でエルドファミリーの強化外骨格は装甲を持ち、分厚い盾と高性能な武器を持つ。


 数ではエルドファミリーが二機と劣るが、性能では上。

 

 数か質か。


「殺せぇー!」


 両陣営の強化外骨格が睨み合う中、後ろに控えたエルドファミリーの構成員が擢弾てきだん発射機を構え撃ち出す。ギルバーンの強化外骨格は装甲を持たない分、爆発物を盾で防げなければそれだけのダメージを受ける。

 そうはさせまいと、ギルバーンの構成員も弾丸を撃って敵の行動を抑制する。

 どちらの陣営の強化外骨格が勝つか。

 それが戦況を左右すると分かっている以上、構成員は全力で援護する。そして隙があれば敵の構成員に向けて銃弾を放つ。


(さて……)


 強化外骨格が戦う中、ミカがその後ろを小銃を持って歩いていた。背中にはヴォルトハイブを抱えている。

 ミカが気絶した後、ケルンが回収したヴォルトハイブとマグボルト。この抗争の前に整備された状態で渡された。

 ウィンドウを表示させ、状態を確認してみて異常がないことを確かめる。

 何かされたのではないかと疑っているわけではなく、地下での壮絶な戦闘でどこかに異常を来してしまったのではないかと思っていたためだ。特に電磁機構は通常の衝撃ならば問題なく耐えるが、強い衝撃となるとすぐに異常を生じさせる。

 思った通りというべきか、やはり繊細な機構なのだ。

 ウィンドウを使った補助機構の構築で幾らか頑強なつくりをしているが。


(取り合えず減らしておくか……)


 大胆な行動をする必要はない。

 怪我明けのミカがするのは敵の隙をついてその頭部を撃ち抜くことだけ。


 幸いにも敵は強化外骨格の方に意識を釣られている。

 スクラップの山に体を隠してはいるものの、攻撃する時には頭を出さなければならない。

 その一瞬の隙を突き。

 頭を撃ち抜く。

 容易なことではないが、幼少の頃より何万発と銃弾を撃ち出してきたミカにとっては、そう難しいことではなかった。


 構成員に紛れ、小銃で次々と敵を撃ち抜いていく。

 負傷したせいでその動作はいつもの時と比べるとまだ鈍いが、直接的な肉弾戦闘というわけでもないので、それなりに戦えている。ミカの言う『20人分の働き』もこの調子ならばできそうだ。


「おめえがエルドさんが言ってた奴か」


 ミカが敵を撃ち殺していると、隣にいた構成員が荒々しく問いかける。

 すでにミカの話は一部の構成員の間でも話題になっていた。

 元々、商業組合を潰したことや、強化外骨格に組み込まれる予定の電磁機構修理の際に流布された情報などによって、ミカのことは末端の構成員を含めてかなりの人物が知るところ。

 それに加えて今回、噂程度ではあるものの一人でゲルグを陥落させた男、としても広まっていた。


 ミカの隣にいる男はその噂を聞いていた人物でもあり、二人同時に敵を撃ち殺しながら軽く話し合う。


「あんたがいれば、ある程度安心できるぜ」

「それは買いかぶりすぎだ」


 ミカが苦笑する。

 少年であるミカの外見で判断せず、実力で見てくれる分には嬉しいが、買い被されるほどじゃない。さすがのミカでも数百を超えるギルバーンを相手を一人で負かせるほど強くない。

 安心してもらっては困る。


「まあ心強いってことだ」

「そうかよ」


 二人がそうして軽口を言い合っている際中、強化外骨格同士で戦闘が繰り広げられていた。

 盾で弾丸を防ぎながら機銃で敵機を狙い続ける。

 盾の性能も武器の性能もエルドファミリー側が上。

 撃ち出された弾丸は敵機の盾を貫き、装甲の無い躯体を破壊する。

 ギルバーンの三機の強化外骨格は持久戦が不利だと早々に判断し、敵機が持つ武器の破壊へと移る。


 その結果、エルドファミリー側の強化外骨格の武装が盾を残し全壊。

 対して、ギルバーンの強化外骨格は一機が全壊、残り二機は武装の損失、機動力の大幅な減少など、深いダメージを負った状態。


 すでに武装を使い果たした二機はその巨体を使った肉弾戦のみに戦闘の方法が絞られる。 

 同時に、武装を失った強化外骨格を両方の陣営がそれぞれ援護する。

 ある者は擢弾発射機を構え、ある者は爆発物を投げ込み、ある者は弾丸を撃ち出す。

 

 肉弾戦という単純な性能勝負。それでいて爆発物なども投げ込まれる環境。

 つまり、装甲の有無や出力の限界値などといった単純な性能差が最も現れた。


「行けぇ!」


 元々、二機ともに武装を失い損壊が激しかったギルバーンの強化外骨格は擢弾発射機や爆発物、加えて銃弾によるダメージも重なり、最終的に腹部に受けたエルドファミリー側の強化外骨格のパンチによって稼働を停止する。 

 もう一方の強化外骨格もまた操縦者諸共頭部を潰され、スクラップの山に倒れ行く。

 

 ギルバーンの強化外骨格はすべて潰れ、対してエルドファミリー側は残った。

 構成員の士気も両者で雲泥の差。


「殺せ、殺せー!」


 強化外骨格の勝利に乗じてスクラップの山から大量の構成員がギルバーン側へと押し寄せる。

 その瞬間、砲弾がエルドファミリー側へと打ち込まれた。


「戦車だ!」


 スクラップの山を越えて戦車が現れる。

 ギルバーンが秘密裏に入手していた型落ちの戦車だ。


 今の時代に主流になっている無人化、軽量化などの設備面での強化に加え、対空強化、ドローン指揮、などの機能を持たない、一世代前の産物。ほとんどが廃棄されるか解体されたのちにスクラップへと成ったが、一部はまだ稼働できる状態で残ってた。

 第二次企業抗争前の産物である。

 ギルバーンは廃棄直前だった戦車をダンを経由して、都市から払い下げて貰った。

 仕入れてからまだ少ししか経っていないが、取り敢えず間に合った。

 

 現代の戦争、抗争に当てはめると出番が与えられないただの鉄くずではある。しかし、装備・兵器ともに第二次企業抗争前と道程の水準でしかないこの徒党間の抗争において、戦車は脅威となる。


「隠れろー! ……え」


 しかし、戦車程度であれば強化外骨格の背後に隠れながら擢弾発射機を撃ち込むなどして対処していけばいい。

 盾がある分、前線を押して行ける。

 だがその肝心の強化外骨格が、突如として現れた六脚の兵器——ボファベットによって壊滅させられる。

 

 蜘蛛のように高速で接近すると、その鋭い脚の末端で胸部を突き刺す。

 装甲をいとも容易く破壊し、強化外骨格の心臓部である動力源を破壊する。

 ボファベットの登場に伴ってもう一機の強化外骨格が対処へと移った。しかしそれよりも僅かに早く、ボファベットが背後に回り込むと後頭部をその足を突き刺す。操縦者と共に操縦席コックピットは破壊され、同時に強化外骨格は倒れ行く。


(ボファベットか……)


 その一部始終を見ていたミカがボファベットを見て内心呟く。

 戦車が衰退し、補助役に回らざるを得なくなった原因を作ったのはあのボファベットだ。

 近代戦を象徴する新しい兵器。

 第二次企業抗争で名をあげたマンティス社の最高傑作。


(ここからか)


 相手が手を出し切ったであろうこの瞬間からが本番だ。

 ミカは小銃を捨て去って、ヴォルトハイブに持ち替えた。

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