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マキシマム・ザ・クラウン  作者: しータロ(豆坂田)
第一章 ジャンクヤード編

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第15話 強化外骨格装甲

 エルドファミリーの拠点近くは、ジャンクヤードに広がるスラムと僅かにだが違う様相を呈している。

 バラック小屋が寄り添うように並び、むき出しの地面が目立つ景色ではなく、コンクリートの外壁に覆われた家が立ち並ぶ。大きさとしては小さいものの、それでも防犯面は比べ物にならない。

 ギルバーンを始め、エルドファミリーに恨みを持つ者は多く構成員が襲撃されることは多々ある、その時に少しでも防犯面を強化しようと拠点の周りに頑丈な家を建てていた。


 また街並みは広く、網目状になっている。

 スラムのように不規則にバラック小屋が立ち並んでいたり、横一列に並んでいたり、乱雑に組み立てられていたり、といったことが無い。ギルバーンなどの敵対組織からの攻撃に対処しやすいよう、拠点周りはこのような作りになっている。

 それでいて、拠点の周りには構成員しかおらず、不審な人物でいればすぐに素性を調べられる。

 すでにミカはエルドファミリーのテリトリーの中。

 しかしヴォルトハイブとマグボルトという武器を隠さずに歩くミカに対して構成員は声をかけない。武器を持った不審な人物がいれば最悪、銃口を向けながら威圧的に来てもおかしくはない。


 そうならないのは、すべてダンテの『準備』のおかげだ。


 ミカはエルドファミリーの拠点に行くにあたって幾つかの懸念事項があった。まずは、拠点に行くまでの道のりで構成員と戦うハメになる可能性。きっと、ダンテから呼ばれたと言ってもそう簡単には解放してくれないだろうし、穏便に済ませられたとしても、確認を取るまでの時間が無駄だ。

 だから昨日の電話でダンテには、ミカが攻撃されないよう事前に来ることを周知しておくよう『準備』を頼んだ。


 どうやら、ダンテは仕事を果たしたようで誰もミカのことを攻撃しようとしないし、話しかけようともしない。それどころか避けてすらいる。

 拠点へと続く通りの真ん中を我が物顔で知らない人物に歩かれれば、嫌な顔の一つでも見せそうなもの。

 しかし彼らは一切ミカの方なんてみずに通り過ぎていくか、横道に入って消えていく。


「……」


 その光景に対してさすがに不思議に思い始めるが話しかけて訳を問いかけようとおも思えない。

 ミカは道の真ん中を歩くのをやめて端による。

 ただそのせいで、横道から飛び出した構成員とぶつかった。 

 彼は耳に当てていた通信端末を落とし、体を揺らめかせて倒れ込みそうになる。

 

 相手の方が悪いが、ミカも注意不足ではあった。

 まずは相手を立ち上がらせようとミカが手を伸ばす。

 一方で相手は落とした衝撃で通信端末に傷がついたことや転ばされたことで怒りながらミカを見る。

 男は手を差し伸べるミカを見て、怒りに震えていた表情が一瞬で消える。そして段々と青ざめていく。


「ごめんなさいッ」


 そのまま、男は這いつくばって出て来た横道の方へと消えていく。ミカはそのありえない反応に手を差し伸べたまま固まって、周りを見た。

 周囲には人影があるが、誰もミカと視線を合わせようとしない。


「おい……まて……え?」


 脳内で様々な予想ができては流れて消えていく。


「何をやりやがった」


 ミカはこの事態を引き起こしたであろうダンテに恨み言を呟くと、急ぎ足で拠点へと向かった。


 ◆


 エルドファミリーの拠点は幾つかのビルが複雑怪奇に絡まり合った形をしている。元は病院であった場所に数百二も及ぶ拡張工事や新しく建てたビルとつなげるなどをして、その規模は数倍近くになった。

 ギルバーンの拠点よりも遥かに巨大且つ頑丈。 

 幾重もの拡張工事を経ても尚、堅牢な作りは保ったままだ。


 ミカは今、その建物の前に立っている。

 今も変わらず、構成員に話しかけられることは無い。やはり、ダンテが何かしたに違いないだろう。

 そしてミカが来ていることはすでに通達されていたのだろう、拠点の正面入り口の前にダンテの姿があった。


「待ってましたよ」

「こっちこそ、聞きたいことがある」


 ミカはダンテに鋭い視線を向けながら近づく。


「事前に知らせておいてくれ、とは言ったが、あれはなんだ。怖がられてないか? 俺」


 ミカの発言にダンテが周りを見てみる。

 一応、ダンテに何かあった時の為に数人が待機しているが、いつもならばロビーのそこら中にいるはず。ダンテがいても特に変わることはないから、ミカのせいだとすぐに分かった。


「はは」


 ダンテは何か思いついたのか笑った。


「たぶんあれだ。強く言っておかないとどうせ聞かないと思って、ちょっと怖めにミカのこと伝えといたんだよ」

「どんな風にだ」

「いや、別に大層なもんじゃないよ。普通に商業組合の傭兵全員を一人で殺したってことと、拠点も潰したってことだけ。たぶん、部下から部下に伝えられる中で、その話が誇張されて広まったんじゃないかな。はは」


 確かに、強く言わなければ荒くれ者だらけの構成員は話を聞かなそうではあるし、ミカが商業組合を潰したのも本当の事。しかし別の伝え方があったのではないかと思える。


「ま、別にいいでしょう、この程度のことは」


 ダンテは大したことなかったように言うとミカを案内する。


「時間も勿体ないので、取り合えず見てみましょうか」

「ああ……」


 疲れた返事を返す。

 厄介ごとに首を突っ込むのは面倒だ。

 しかし今はどうしても関わらなければならない。その思いもあって、ダンテについていくミカの足取りは重かった。目的の場所はロビーから二分ほど歩いた場所にあった。

  

 拠点の中でも特に整備された通路を進み、見えてきたのが鋼鉄の分厚い扉。

 ダンテは扉の横に取り付けられたパネルに目を見せて、虹彩こうさい認証のロックを解除する。

 すると扉は自動で開いた。


 中は巨大な整備工場で、ミカの家の地下室とは比べ物にならない。天井からはクレーンが吊るしてあったり、隅の方には重機も見える。そして端の方には二足歩行のロボットである強化外骨格装甲が二機待機していた。


(ただの強化外骨格か……)


 端の方に置いてある強化外骨格は主に建築用に使われる代物。武装は無く、分厚い装甲は無く、ただ単純に力強い。それであっても武器を持たせればスラムでは強大な戦力となることは分かり切っている。

 二機だけでも十分な戦力だろう。

 問題は……


(治安維持……鎮圧用の強化外骨格装甲か)


 倉庫の中心にあるのは端にある強化外骨格よりも一回り大きい二足歩行のロボット。

 一目見て、あれが今回ミカが来ることになった原因の強化外骨格装甲だと分かった。

 規格は軍用規格とまではいかなくとも、最低限の武力は元から備え付けられている暴徒鎮圧用の強化外骨格。爆発物や対物ライフルを想定して作られた装甲は分厚く堅牢。

 mm弾ではとても貫けない。

 スラムでは過剰な力だ。

 加えて、ダンテの話から推測するのならば、あの強化外骨格装甲には電磁機構が組み込まれている。あの馬鹿でかい構造物に詰め込まれた巨大なバッテリーから最大の出力を出して電磁機構を動かす、果たしてどのような動きができるようになるのか想像もつかない。


 異常な戦力。

 何よりも、エルドファミリーがあの強化外骨格装甲をどこで手に入れて来たのかが気になる。

 その点がやはり、ダンテが言葉を濁した部分に繋がるのだろう。


「っくは! やっと来たか! 待ってたぜ」


 強化外骨格装甲の横に立っていたライアンがミカの姿を見ると手をあげて声をかける。

 その喜々に満ちたライアンの表情とは打って変わって、ミカは心底面倒そうな表情を滲ませていた。

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