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マキシマム・ザ・クラウン  作者: しータロ(豆坂田)
第一章 ジャンクヤード編

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第13話 AIの実力

 ミカが起動するとドローンはすぐに空高く飛び上がる。軍用ドローンと比べてみれば遥かに性能は低く、有り合わせの部品を使って修理したため、本来の性能にも劣る。

 ダストシティならば簡単に手に入る家庭用ドローンでももう少しは性能が高い。

 

 ただ、その欠点を補って余りある機能がミカのドローンには搭載されている。武器も飛行性能も防御性能も、多種多様な機能も無いが、ミカのドローンにはウィンドウ由来のAIが仕込まれている。

 最高効率に遵守し、最も効果的な方法を自動で執る。

 

 ミカ自身は知らぬことだが、ウィンドウ由来のAIは軍用ドローンに搭載されたどんなAIよりも優れている。独立した思考、幅の広い選択権が与えられ、ミカにとっての利益を最優先に考え動く。

 ミカが起動のボタンを押した瞬間から、AIの稼働は始まっている。

 

 ドローンの持つ限界ギリギリの出力を出しながら一気に上空へと移動すると、ジャンクヤードを見渡す。御世辞にも高性能とは言えないカメラを動かしてミカを狙ったギルバーンの構成員を発見した。

 対象の装備や数から単独での殲滅が可能と判断。

 ドローンに搭載された武装を確認。


 射程距離も威力も乏しい拳銃が一挺のみ。弾数は14発。相手は三人、殺しきれるかは分からない絶妙なラインだ。

 しかし、ドローンは瞬時に殲滅へと移った。


 ◆


「ッチ。最初の一発で殺しきれなかったか」


 ギルバーンの構成員の一人が、ミカが消えたスクラップの山を見ながら吐き捨てる。

 ミカと彼らとが出会ったのは全くの偶然であった。

 彼らはジャンクヤードから南地区へと入り、商業組合が支配していたパウペルゾーンがどのようになっているのか偵察するために向かっていた。その際中に偶然ミカを発見し、先制攻撃を仕掛けた。

 すでにミカの存在はギルバーン内で周知されており、見つけ次第、殺せそうならば攻撃に移り、そうでないのならば情報を持ち帰るよう言われている。相手は商業組合をたった一人で潰した化け物。


 基本的には攻撃せず、ミカに関しての情報を集めた方が良い。

 ただ今回に関しては、ミカが彼らの存在に気がついていなかったことや、数で優っていたことなども鑑みて、攻撃を仕掛けた。


 しかし初撃を躱された今、その選択が正しかったのか彼らには決断のしようがない。


「取り合えずもうやるしかない」


 攻撃してしまった以上、もう後戻りすることはできない。ここで逃げ帰ればギルバーンの顔に泥を塗ることになるし、そもそもとしてミカを相手に背中を見せて逃亡というのはかえって怖い。

 ここは馬鹿真面目に戦うしかないのだろう。


 幸いにも武器はそれなり、数は三人と優っている。

 三人で部隊を組みながらミカを少しずつ追い詰める。

 問題としてはジャンクヤードでの戦闘は知識と経験がある分ミカの方が有利ということ。

 そして誤算は、ミカには手に入れたばかりの協力者がいたこと。

 

 直後、彼らの耳にドローン独特の風を切る甲高い機械音が響く。

 

「なん――」

 

 発砲音が響き渡り、至近距離にまで接近したドローンが眼前で弾丸を撃ちだす。銃口の中まで見えるほどの近さでの発砲。当然避けることはできず、男は頭部を撃ち抜かれる。


「あの野郎ッがあああ!」


 味方の一人が突撃銃を乱射する。

 しかしゴミの運搬用ドローンとは思えないほどの速度で飛び回り、時には急旋回、急停止、急発進。まともに捉えることができない。ミカでさえあの素早い動きを小さな物体を正確に撃ち取ることは不可能に近い。

 ただ、それはあくまでも突撃銃を使っている場合に限る。

 

「ったくぶっ壊れろや!」


 散弾銃を使われた場合、ドローンの撃墜は幾らか楽になる。飛び散る散弾の幾つかが命中さえすれば装甲が存在しないドローンはそれだけで飛行能力を失う。

 幸いにも構成員の一人は銃身を切り詰め、銃床を短くした小型の散弾銃を携帯していた。

 

 当然、AIは最初男達を見た時から小型の散弾銃を持っていることを認識していため、男が散弾銃を手に持った瞬間、一気にスクラップの後ろに隠れた。


「あいつ逃げやが―――」


 そしてドローンばかりに集中していると痛い目を見る。

 ミカが遠方からゆっくりとマグボルトの銃口を男に向けていた。

 ドローンの対処で意識のほとんどを取られている上に、仲間が一人殺されたという怒りと焦燥もあり、ミカの存在を覚えていながらも警戒できていなかった。その隙を突いて、一発の弾丸がジャンクヤードを駆け抜けた。


 弾丸は男の胸部を貫き、穴を開ける。

 

「っごぼ」


 口からは血を吐き出し、胸の空洞から流れ出る血液や臓器が零れないよう胸に手を当てながら、男は倒れていく。


 これで残り一人。

 殺された味方を見て初めて、そこでミカの存在を思い出す。

 同時に、ミカに意識が取られた瞬間、今度はドローンが金切り音を響かせて急速に距離を詰めた。


「やめろ近づ――」


 突撃銃を構え、一心不乱に乱射する。

 何十発もの弾丸が飛び回るドローンを追いかけて宙へと散っていく。そして撃ち続ければいつかは弾丸も底を尽きる。

 引き金が重くなった。

 

 弾丸は撃ち出されない

 

 男が一瞬だけ突撃銃の状態を確認するために視線を向けた。そして次に目の前を見た時、ドローンはすでに目前にまで迫っていた。

 額に向けられた拳銃。 

 確実に仕留めきるための距離。 

 もはや逃れることなどできず、発砲音が響くと同時に男の後頭部から鮮血が飛び散った。


 その瞬間、ドローンはそれまでの甲高い音を消してその場に浮遊する。

 ミカはマグボルトをホルスターにしまいながら、ゆっくりと近づく。そして傍まで来ると三人の死体を見てからドローンを見た。


(性能は十分だな……だが)


 軍用ドローンでもない、単発でしか発砲できない武装しか取り付けていない、そんなドローンがミカの助けもあったとはいえ三人の武装した者たちに勝利した。もしこのAIを軍用ドローンに搭載すれば、さらなる強化が見込める。

 だが同時に、取り扱いには細心の注意を払わなければならない。


 ドローンがミカに反旗をひるがえさないとも限らないのだ。できればドローンの複数運用が理想的。しかし己の力を越える武力を付近に配置しておきたくはない。

 それが、『ウィンドウのAI』という信用しきれない代物なら尚の事。


(ここら辺はまだ調べる必要がありそうだな)


 浮遊したまま停止していたドローンの電源を切ると、ミカが手に持った。そしてギルバーンの構成員を殺したこともあって、長居すれば面倒なことになりそうなので、ミカは予定よりも早めに帰路につくことにした。

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