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冒険者の報告書  作者: 人生迷走グミ
冒険者たちの報告書
9/18

報告者: 『灰刃の探索士』レアン・ハーヴィル

*《観測調査任務報告書/古塔遺構の光波解析および手配魔獣遭遇記録》*


報告者: 『灰刃の探索士』レアン・ハーヴィル

(C級探索者, シルバーランク, Lv36, ローカスト探査団所属, 中立)

日付: 星暦1028年、第六の月の残光期27日目

任務: 西方荒野「ケルトラス古塔」内部構造の魔力残留調査/C級調査任務(途中発生:手配魔獣討伐)

依頼主: 学術ギルド西方分室・主任研究員カーヴァス

提出先: フォルガード冒険者ギルド



*パーティーメンバー*


* 探索者: 『灰刃の探索士』レアン・ハーヴィル

(C級, シルバー, Lv36, 報告者)


* 魔導士: 『紅書の観測者』リシア・メーヴェン

(C級魔導士, ゴールド, Lv39, 学術ギルド所属, 研究派)


* 狩人: 『風骨』トリス・アルヴェン

(C級狩人, シルバー, Lv35, 狩猟協会所属, 独立派)



*任務概要*

ケルトラス古塔は百年前に落雷で崩壊した観測塔。

近年、周辺の魔力波が不規則に点滅し、研究対象として再調査が要請された。

目的は塔基部に残る「光波共鳴石」の解析と採取。

報酬は調査完了で2300金貨。追加報酬は討伐対象により変動。



*請負成立経緯*

学術ギルドより正式依頼。

塔跡は荒野地帯にあり、魔獣出没が多いため冒険者の同行が義務化。

私が探索担当としてリシアの補佐に任命され、トリスが外周狩猟支援として同行。



*経過詳細*


1. 塔外周調査 (午前)

 塔基部の魔力波を測定。共鳴石の残響値=+7.2、通常の約三倍。

 周囲の動物死骸はなし。魔力集中による“静域現象”が発生。

 リシアが採取準備、トリスが周囲に結界杭を設置。


2. 塔内部進入 (昼過ぎ)

 階段部で風圧反応。内部に“音の反響”が存在。

 リシアが詠唱記録を開始、私が光波測定器を起動。

 その瞬間、塔全体が鳴動し、魔力の逆流が発生。

 上層から黒影が落下――対象《斬響狼》。

 かつて王都で逃走したB級手配魔獣の記録と一致。

 即応戦闘に移行。


3. 交戦記録 (午後)

 《斬響狼》は音波干渉による“共鳴斬撃”を放つ。

 塔内部の音響構造が敵に有利で、振動が壁を走った。

 私が足場を制御して崩落誘導、リシアが魔導封鎖式を展開。

 トリスの矢が音波の節に命中、敵の咆哮が共鳴を崩壊させる。

 最後は私の短剣による喉部貫通で沈黙。

 魔力波が安定、塔の共鳴も停止。


4. 調査完了 (夕刻)

 光波共鳴石を採取。残響値正常化。

 手配魔獣の角部および音核をギルド回収袋に封入。

 外周の安全確認後、撤収。



*成果*

・光波共鳴石1基採取(解析用)

・手配魔獣《斬響狼》討伐確認。討伐証明書発行番号:FG-8821

報酬:調査報酬2300金貨+臨時加算討伐金2700金貨=計5000金貨。

討伐成果によりB級昇格審査対象。

消耗品:〈魔導封鎖札〉3枚、〈癒光薬〉2瓶、〈振動安定符〉1枚。


*所見と提言*

《斬響狼》は光波共鳴石を音源として利用していた可能性がある。

音核の共鳴周期が塔の残響と完全一致しており、

古塔自体が“捕食された共鳴器”のように機能していた。

学術ギルドは共鳴石を封印管理すべき。

また、討伐は偶発的ながら、魔導士・狩人・探索者の連携が奏功した。

この塔はまだ鳴っている気がする——音のない夜に、遠くで。


署名: 『灰刃の探索士』レアン・ハーヴィル


=====================


*【日誌】*


日付: 星暦1028年、第六の月の残光期27日目

場所: ケルトラス古塔外周・野営地にて


タイトル: 塔が吠えた日


塔の中で風が喉を鳴らしていた。

光も音もひとつの流れになって、塔の中を回っていた。

それを壊したのは、俺たちだ。


斬響狼——名前だけは知っていた。

昔、王都の処刑場で逃げた魔獣。音で刃を作り、人を切る。

まさかこんな場所で再会するとは思わなかった。


リシアの詠唱が塔に響く。

狼の咆哮と重なって、空気が裂けた。

トリスの矢が音を裂き、俺の刃がその静寂を突き刺した。

終わった後、塔の中に“余韻”だけが残った。

まるで、狼がまだ息をしているみたいだった。


リシアは黙って共鳴石を抱え、トリスは空を見ていた。

風が塔の中を抜けると、今度は“音のない風”になった。

あの瞬間、俺は気づいた。

塔も、狼も、同じ声を持っていたんだ。


ギルドは討伐報告を受理した。

金は出る。昇格もあるかもしれない。

でも俺たちは、ただ調査に来ただけだ。

“殺すつもりはなかった”なんて言っても、塔はもう沈黙した。


夜、焚き火の火が揺れるたび、遠くで風が鳴る。

それが塔の残響なのか、狼の声なのか、

もう聞き分けられない。

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