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冒険者の報告書  作者: 人生迷走グミ
冒険者たちの報告書
8/18

報告者: 『森渡りの薬士』ティナ・アルデン

*《採集任務報告書/燐霧草の採取および光脈調査》*


報告者: 『森渡りの薬士』ティナ・アルデン

日付: 星暦1028年、第五の月の萌芽期9日目

任務: 山岳地帯「霧樹林」における燐霧草の採取および発光異常調査/D級採集任務

依頼主: 薬師ギルド・東部支部長セレナ・メイス

提出先: イースティア冒険者ギルド


*パーティーメンバー*


* 薬師: 『森渡りの薬士』ティナ・アルデン

(D級薬師, シルバーランク, レベル28, ハーバルヒーラーズ所属, 派閥なし, 報告者)


* 斥候: 『風切り』ジン・マーヴィス

(D級斥候, シルバー, Lv30, フォレストランナー所属, 独立派)


* 神官: 『小聖鐘』フェイ・ルーメン

(D級神官, シルバー, Lv29, 白灯会, 中立)




*任務概要*

霧樹林に自生する燐霧草は、薬師ギルドが管理する鎮痛薬「霧花油」の主要素材。

近年、光が青から紫に変化し、魔力値が不安定化。

品質確認と採取を兼ねた調査を実施。

報酬:1600金貨+素材単価、称号「霧花採集者」。


*請負成立経緯*

薬師ギルド東部支部から依頼。

採集技能資格を持つ冒険者の中で、過去に霧樹林踏査経験がある私に白羽の矢。

安全確保のため、斥候と神官を同行。



*経過詳細*


1. 霧樹林入口 (早朝)

 霧濃度:高。魔力含有値:基準の1.3倍。

 斥候ジンが獣道を確認、魔導方位盤が乱れ、方角感覚が狂う。

 フェイが結界灯を設置、視界安定。

 燐霧草の分布域を特定。光は弱いが拍動していた。


2. 下層湿地帯 (午前)

 採集開始。通常の鎌では刃が弾かれるため、私はアルコル合金製採集ナイフを使用。

 光が断続的に明滅、付近の苔も反応し一帯が“呼吸”するような揺らぎ。

 ジンが地面の割れ目に発光根茎を発見。

 採取中、瘴気性の「霧喰い蛾」群が接近。フェイの聖光で散退。

 戦利品:[燐霧草]15束、[発光根茎]2本。


3. 樹林奥部の光脈 (午後)

 根茎を辿ると地脈露出箇所に到達。

 青白い光が川のように流れ、燐霧草がそこから魔力を吸収していた。

 光脈の拍動が早く、草の発光周期と一致。

 フェイが祈祷で波形を安定化、私が過剰魔素を抽出。

 結果、草の光は本来の青へ戻る。




*成果*

燐霧草15束、発光根茎2本、霧花油用素材10単位採取成功。

異常の原因は地脈の魔素流速変動による魔力過飽和と判明。

報酬:1600金貨+素材単価(計2100金貨)、称号「霧花採集者」。

経験値+1200。〈解毒薬〉1本、〈浄化符〉2枚消費。


*所見と提言*

燐霧草は環境魔素の変動を早期に感知する“自然指標種”として機能している。

今回の光色変化は地脈圧の変動による一時的現象とみられるが、

周期的な拍動は“地脈の呼吸”とも解釈できる。

霧樹林は静かにだが、確実に何かを伝えようとしていた。

今後も採集報告のたびに魔力値を測定し、変動傾向を記録することを提言する。


署名: 『森渡りの薬士』ティナ・アルデン



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*【日誌 】*


日付: 星暦1028年、第五の月の萌芽期9日目

場所: 霧樹林・採集拠点テント内


タイトル: 草が呼吸していた日


夜明けの霧は冷たいけれど、息を吸うと胸が温かくなる。

霧樹林はまるで眠っている人のようだ。

風も、音も、全部ゆっくりとした鼓動でできている。


燐霧草の光が乱れていると聞いたときは、病気かと思った。

でも、近づくと分かる。あれは“焦っている”光だった。

地脈の流れが早すぎて、草たちがついていけなくなっていたんだ。


湿地の泥に膝をついて刃を入れると、

土の中から青い息が漏れた。

光は私の手首を伝って、胸の中まで入ってきた。

それが怖いというより、どこか懐かしかった。


ジンが風の音を聞き分けて道を示し、フェイが光を安定させた。

三人での作業は不思議に滑らかで、

まるで森に“動き方を教わっている”みたいだった。


夜になるころ、草の光は元に戻っていた。

一面が青く揺れて、まるで星が地上に降りてきたみたいだ。

あの瞬間、私は森の呼吸を感じた。

生きている。ここも、私たちも。


報酬を受け取ったけれど、金よりも嬉しかったのは

手の中に残ったあの温かい光。

帰り道、指先がまだうっすら光っていた。

たぶん、森が“ありがとう”と言ってくれたんだと思う。


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