表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者の報告書  作者: 人生迷走グミ
冒険者たちの報告書
7/18

報告者: 『管路の修復士』イオ・フェルメル

*《設備再稼働業務報告書》*


報告者: 『管路の修復士』イオ・フェルメル

日付: 星暦1028年、第四の月の導環期14日目

任務: 旧王都地下導管「エリュシオン配流路」再稼働作業/B級技術任務

依頼主: 王都整備局・魔力供給課

提出先: セントラル冒険者ギルド本局


*同行者: なし(単独任務)*

*『管路の修復士』イオ・フェルメル

(B級導管技師, ゴールドランク, レベル48, アーケインワークス本部所属, 技術派)


*任務概要*

旧王都地下に残る大規模導管網「エリュシオン配流路」の一部区画で、魔導流供給が停止。

都市部の灯火・防壁結界に断続的障害が発生しており、速やかな再稼働が求められた。

前回の修繕班が行方不明となっているため、単独による調査と補修を実施。

報酬は基本5200金貨+技術復旧手当1000金貨、称号「導管再生技師」。


*請負成立経緯*

魔力供給課より緊急通達。既存の導管図面は劣化・不完全。

導管構造認識魔導具を持つ現役技師として、私が指名された。

本任務はB級危険度扱い。現場直行、補助員なし。


*経過詳細*


1. 第一接続路 (午前)

 導管入口の閉鎖符を解除、圧力弁を開く。内部は長年の沈泥と胞子層で満たされ、視界はほぼ皆無。

 測定結果:魔導流圧力=0、温度=+4.3。

 補助灯を設置し、汚染除去符を三枚展開。構造は安定。


2. 第二分岐層 (昼刻)

 過去の補修痕を発見。符文痕跡が黒化しており、“自己修復型導管材”が反転成長。

 過剰な導魔素が金属層を侵食し、流路を封鎖していた。

 私は外殻を切開し、魔素濾過器を挿入、流量を再均衡。

 圧力値が上昇。魔導流の微弱な脈動を確認。

 記録音声:低周波音が連続発生、「運転再開」の自動音声かと思われたが、人声の抑揚を帯びていた。


3. 主管路制御盤 (夕刻)

 導管本体の中枢端末を起動。操作には“旧都市整備官コード”が必要だったが、

 登録名簿に私の祖母の名が残存しており、自動承認された。

 再稼働手順を実行。流体音とともに導管が震動。

 圧力=標準値、出力=再安定。都市防壁の魔力供給ランプが上層で点灯したとの通信確認。


*成果*

旧導管の再稼働に成功。圧力安定、魔導流正常化。

腐食部は局所補修済み。再検査は七日後予定。

回収:[自己修復材サンプル]1個、[旧都市認証鍵(祖母の名義)]1基。

報酬:6200金貨、称号「導管再生技師」。

経験値+3000。〈濾過器〉2基消費、〈符板〉5枚使用。


*所見と提言*

導管内部の“自己修復材”は完全に機能を逸脱し、自己増殖化していた。

設計段階で「生体式合金」と呼ばれた技術が暴走した可能性がある。

また、音声記録中の「運転再開」という発声波形が、人の音声パターンを模倣している点に留意。

現場環境が自律意志を獲得しつつある兆候が見られる。

技術局は今後、導管を単なる装置ではなく“長期記憶体”として扱うべきだろう。


署名: 『管路の修復士』イオ・フェルメル


=====================


*【日誌】*


日付: 星暦1028年、第四の月の導環期14日目

場所: 地下導管第七層・補修作業区の端


タイトル: 導管は、生きていた


空気が湿っている。

けれど湿り気の奥に、心臓の鼓動のような脈を感じた。

それが導管の音だと気づくまで、しばらくかかった。


祖母がかつて整備していた区画。

壁の銘板に、彼女の筆跡が残っていた。

“誰かが読むまで、動き続けろ”——それが最後の整備記録だった。


第二分岐層の黒化箇所を切り開いたとき、金属が「痛い」と鳴いた。

錯覚だと思いたいが、魔導波形は確かに共鳴していた。

魔力を流し直すたび、壁が呼吸する。

手を離せない。放っておくと止まりそうで怖い。


主管路の再起動で、上層から通信が入った。

「街の灯が戻った」と。

その瞬間、導管の中で何かが安堵の息を吐いた気がした。


帰路、作業灯を消したとき、

遠くの闇の向こうで、祖母の声がした。

「おかえり、よくやったね」

答えられなかった。喉が詰まった。


導管は生きている。

そして私たちは、その命の続きを修理しているだけだ。

報酬をもらっても、この仕事は終わらない。

いつかまた、あの音を聞きに戻るだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ