報告者: 『風裂の整備士』ロヴェル・ヴァイン
*《観測任務実施報告書》*
報告者: 『風裂の整備士』ロヴェル・ヴァイン
日付: 星暦1027年、第一の月の風暦期5日目
任務: 空路交易路「第七風脈帯」磁気嵐異常の調査/C級観測任務
依頼主: 王立航路管理局・空路安全課
提出先: ハイエア冒険者ギルド
*パーティーメンバー*
* 空艇技師: 『風裂の整備士』ロヴェル・ヴァイン
(C級, ゴールド, Lv43, スカイワーカーズ, 技術派, 報告者)
* 星術師: 『天環の導き手』リナ・スカイウォーク
(D級, シルバー, Lv26, スターウォッチャーズ所属, 派閥なし)
* 操縦士: 『疾風の帆翼』カイ・ブランシェ
(C級操縦士, ゴールド, Lv45, スカイレイダー所属, 航空派)
* 錬金師: 『硝子の調合士』メリア・トーン
(D級錬金師, シルバー, Lv28, アルケミア会所属, 技術派)
* 兵士: 『白槍』ラト・エイン
(C級槍兵, ゴールド, Lv47, アイアンシールド所属, 保守派)
*任務概要*
王都と北域間を結ぶ主要空路「第七風脈帯」にて、磁気嵐が周期を乱し、航路の羅針結界に干渉。
貨物艇数隻が迷走・墜落。異常原因を特定し、航路磁界を安定化させる。
報酬は基本4200金貨+技術手当800金貨、称号「空域安定技師」、星導協会補助資格付与。
*請負成立経緯*
空路管理局より緊急要請。嵐帯中心での計測には空艇修理資格者と星術補佐が必要との条件。
スカイワーカーズ本部より私に指名が入り、航法士・操縦士・防衛員をギルド経由で編成。
依頼主立会いの上、王都飛行場にて観測艇を受領。
*経過詳細*
1. 風脈帯外縁 (午前)
離陸後三刻で磁界乱流を確認。結界計測器が反応限界に達し、方位磁針が回転停止。
リナの星術で天球座標を参照、航行経路を補正。
メリアが放出された電磁粒子を採取、結晶構造が人工性を示唆。
空中戦闘:電撃性浮遊体“プラズマ・エイド”出現。ラトが槍で打ち払う。
戦利品:[帯電結晶粉]少量。
2. 嵐帯中心部 (昼過ぎ)
航路結界の発信塔が黒化、符文が反転。
塔基部に古いエーテル反応、内部コイルが“再結線”されていた。
リナが解析、「人為的共鳴改造の痕跡あり」と判断。
私は補助回路を切断し、共鳴波を一時停止。メリアが絶縁液を噴霧、嵐の波形が沈静。
カイの操縦で嵐流を抜け、結界のリセットを確認。
3. 帰還航行 (夕刻)
帰路で風脈の回復を観測。空流・星位とも安定。
ただし磁界の底部に残留位相波(低周波・外界方向)を検出。
リナ曰く「星界の音」との一致。次回調査要。
嵐帯を抜けた瞬間、北天に光の柱が一瞬発生(記録映像あり)。
*成果*
磁気嵐の異常を鎮静化。航路の結界座標を再設定。
回収:[帯電結晶粉]×2、[変調コイル断片]×1。
報酬:4200金貨+技術手当800金貨、称号「空域安定技師」、星導協会補助資格付与。
経験値:全員+2400EXP。リナ→Lv27、メリア→Lv29。〈修理工具〉一式損耗、〈絶縁液〉2瓶消費。
*所見と提言*
磁気嵐の発生源は自然現象ではなく、旧式結界塔の“意図的改造”による人工共鳴が主因。
反転符文は二百年前の航法式に類似し、再稼働者の存在が推測される。
外界位相の波形は観測機器では説明不能で、星界干渉の可能性がある。
航路再点検の際は星導協会と技術局の共同体制を推奨。
また、結界塔の制御権限が現代式ではなく「声認証」だった点を記録しておく。
……あの“声”がまだ塔内に残っている気がする。
署名: 『風裂の整備士』ロヴェル・ヴァイン
=====================
*【日誌】*
日付: 星暦1027年、第一の月の風暦期5日目
場所: ハイエア飛行場・格納庫にて
タイトル: 嵐の心臓が、誰かの声で鳴っていた
空の匂いは、焼けた鉄と ozone。
嵐帯に入ると、世界がひっくり返る。風が下から吹き、雲が横に流れ、磁界が空を裂く。
計器は役立たず、あとは勘と経験。
塔を見た瞬間、嫌な胸騒ぎがした。
符文が生きていた。まるで誰かが今、刻んでいるみたいに。
リナが星を読むとき、結界塔の波形が同期した。星と塔が話していた。
あれは古い航法式——声で起動する制御構文。
塔の奥で微かな声がした。
「航路、守護、再点火」。
私は反射的に回路を切った。
次の瞬間、光が爆ぜて嵐が静まった。
風の音が戻り、空が青くなった。
けれど、機関室の通信筒から、誰のものでもない声が最後に囁いた。
「航路、維持完了」。
帰還後、整備記録をつけていると、計器に残留音波が一行刻まれていた。
──座標補正値・“−0.007”
これは、空にない数字だ。
誰かが、嵐の中から航路を“直して”くれたのかもしれない。
報酬は受け取った。
けれど夜になると、格納庫の天井に青い光が差す。
風がまだ鳴っている。嵐の心臓は止まっていない。
俺はもう一度、あの声を聞きに行くつもりだ。




