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冒険者の報告書  作者: 人生迷走グミ
冒険者たちの報告書
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報告者: 『河辺の修理屋』カノン・リデル

*【業務報告兼観測記録】*


報告者: 『河辺の修理屋』カノン・リデル

日付: 星暦1024年、第三の月の新耕期22日目

任務: 辺境農村「ミルウェル村」水車魔導炉の異常調査および修復/C級技術依頼

依頼主: ミルウェル村長エッダ・ホルム

提出先: イースティア冒険者ギルド


*パーティーメンバー*


* 魔導技師: 『河辺の修理屋』カノン・リデル

(C級, ゴールド, Lv41, アーケインワークス, 技術派, 報告者)


* 土術師: 『緑環の護り手』トヴァ・ハートル

(D級, シルバー, Lv33, テッラオーダー所属, 自然派)


* 傭兵: 『双刃』オルド・ゲイル

(C級戦士, ゴールド, Lv45, 無所属, 中立)


* 司祭: 『白鐘』ミリエル・ノースウィンド

(C級司祭, ゴールド, Lv46, 白灯会所属, 中立)


* 薬師: 『草香の手』ラシェル・ミン

(D級薬師, シルバー, Lv29, ハーバルヒーラーズ所属, 派閥なし)


*任務概要*

ミルウェル村の農業用魔導炉(水車式エーテル駆動機構)において、出力異常および昼夜照度の固定現象が発生。作物の枯死と村人の体調不良を誘発しており、緊急の原因特定と炉心安定化を要請された。

報酬は基本3500金貨、危険加算800金貨、称号「辺境再生の工匠」、エーテル技師協会の功労点1。


*請負成立経緯*

現地ギルドの通報を受けたアーケインワークス本部が派遣候補を指名。私が炉心調整専門の資格保持者として選出され、補助班をギルド経由で招集。

現地炉は50年前の地方型M-III型。公式記録では廃型扱いで、図面も欠落多数。


*経過詳細*


1. 村外・水路入口 (朝刻)

 魔導炉への水路を封鎖し、流量計測。水流は安定、異常値なし。だがエーテル導管から“発光性胞子”の混入を確認。トヴァが土霊術で採取し、胞子の魔素値を分析(基準値の6倍)。

 ラシェルが被曝症状の村人を治療、軽度の魔力酔いと診断。


2. 水車機構室 (正午)

 機構室にて光学遮断発生。周囲の影が固定化し、日照が凍結状態に。

 オルドが周囲警戒、私が炉外殻を開放。炉心からの脈動周期は通常の二倍。内部の魔導符板に“植物紋様”の侵蝕を確認。

 トヴァが胞子由来の魔性植物「ルミナ苔」と特定、地脈に反応し魔導素を吸収していた。

 応急で符板を削除し、ルミナ苔を焼却。炉出力を半分に絞る。


3. 炉心制御室 (夕刻)

 焼却の影響で炉が暴走傾向。ミリエルが祈祷で魔導流を鎮静、私が符板を再接続し再起動。

 オルドが影化した異形(形態:人型ルミナ苔)と交戦、殲滅。

 再起動後、照度が回復、夜が訪れる現象を確認。村全域の魔導照明が正常化。

 水質検査でエーテル値正常、胞子再発リスク低。


*成果*

魔導炉の安定化に成功。照度および出力は標準値内。ルミナ苔を完全除去。

戦利品:[ルミナ苔の灰]1瓶(試料)、[古式符板]2枚(破損)。

報酬:3500金貨+危険加算800金貨、称号「辺境再生の工匠」、功労点1。

経験値:全員+2500EXP。カノン→Lv42、ラシェル→Lv30。〈修理工具〉1式損耗、〈薬草〉3個、〈浄化符〉1枚消費。


*所見と提言*

M-III型炉は自然共鳴系魔導構造のため、地脈・生態魔素との干渉を受けやすい。

今回のルミナ苔は環境のエーテル濃度上昇を引き金に発生した自律共鳴体と思われ、単なる生物ではない。

この種の“半魔導生態”が他地域でも確認され始めており、各地の古型炉に同様の腐食が起きる可能性が高い。

炉の封印ではなく「自然との共鳴制御」による運用が望ましく、植物術士や土術師を含む定期点検制度の設立を推奨する。


署名: 『河辺の修理屋』カノン・リデル


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*【日誌】*


日付: 星暦1024年、第三の月の新耕期22日目

場所: ミルウェル村・水車小屋裏、仮設作業台にて


タイトル: 止まっていた昼を、もう一度回す


“昼が止まった村”という報告書の言葉は大げさじゃなかった。

太陽は動かず、影も伸びず、風さえ眠っていた。子どもたちは影を怖がり、畑の作物は枯れていた。


水車の軋む音だけが生きていた。

炉心に手を置くと、心臓のように脈を打っていた。けれど脈の拍子が速すぎる。まるで何かを必死に呼び込もうとしている。

符板には葉脈のような紋様。人工物のはずなのに、生きていた。


ルミナ苔を焼いた瞬間、光が逃げ出した。

炎の中で苔が形を変え、誰かの顔になりかけて消えた。

ミリエルが祈りを続ける。オルドは剣で影を裂き、トヴァが地脈を抑える。

私は歯車を回す。炉を殺さないように、でも暴れないように。

静かに、確実に。


夜が来たとき、村人たちは泣いた。

ずっと昼だったから、星を忘れていたのだ。

一番星が出た瞬間、風が戻ってきた。風車が鳴り、川が歌った。


作業を終えても、炉は低く唸っていた。

中でまだ、何かが“呼吸”している。

それは悪いことじゃない。機械が生きている証だ。

問題は、なぜ生きようとしたのか——そこだ。


報酬を受け取り、炉の側に小さな木札を置いた。

「次に止まったら、また回しに来る」と書いた。

魔導炉も、人間も、動き続けなきゃいけない。

止まった昼をもう一度動かしたのなら、次は夜明けを確かめに来よう。


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