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冒険者の報告書  作者: 人生迷走グミ
冒険者たちの報告書
16/18

報告者:『焦土の盾』ガルヴィン・ブラックスミス

*【討伐・警戒任務報告書】*


《辺境防衛線第七区画・竜族偵察個体排除任務》


報告者:『焦土の盾』ガルヴィン・ブラックスミス

(B級重装兵/プラチナ/Lv56/鉄鱗団所属/人類強硬派)

日付:星暦0884年 第八月〈戦塵期〉17日

任務:竜族偵察個体の排除・防衛線維持(B級)

依頼主:辺境諸国連合軍事局・第七防衛司令部

提出先:冒険者ギルド辺境本部



*パーティーメンバー*


* 重装兵:『焦土の盾』ガルヴィン・ブラックスミス(報告者/人類強硬派)

* 魔導士:『銀鎖の術士』リシア・フォルネウス(B級/Lv51/中立派魔族・共生派)

* 弓兵:『風裂き』トーマス・グレイウルフ(C級/Lv47/対話派人類)

* 斥候:『影渡り』ケイン・アッシュ(C級/Lv44/人類強硬派)


*中途合流*

* 竜騎士:『蒼翼の騎士』エリス・ヴァレンティア(B級/Lv53/共生派竜族・人類協力者)



*任務概要*


第七防衛線上空に竜族偵察個体(推定:若年成体、体長約一翼※約15m相当)が三日連続で出現。哨戒班からの報告を受け、排除または追い払いを実施。魔族支配派の偵察活動との関連性も調査対象。防衛線の動揺を抑えるため、速やかな対処が求められた。


*請負成立経緯*


軍事局からの緊急通達。竜族対立派の動向が活発化しており、偵察個体の背後に魔族支配派の誘導がある可能性が指摘された。鉄鱗団が防衛線常駐のため即時対応。中立派魔族のリシアが同行することで、魔族関与の有無を見極める方針となった。


*経過詳細*


1. 第七防衛線・北端監視塔(灰明の刻)


哨戒班から竜族個体の接近通報。体長約一翼程度、青灰色の鱗、翼は完全展開せず滑翔型の飛行。高度は約雲底程度。攻撃の意図は見られないが、明らかに防衛線の配置を観察している。


斥候ケインが先行偵察。竜族個体は人間の動きに反応し、高度を上げたが撤退せず。距離は常に矢程以上を保持。



2. 防衛線中央部・第三砦(薄影の刻)


竜族個体が砦上空を二環刻(約一鐘※1時間相当)旋回。トーマスが警告の矢を放つが、個体は回避し距離を取る。攻撃ではなく観察であることが明白。

リシアが魔力探査を実施。「竜族個体の魔力パターンに、魔族由来の干渉波が混在している。誘導されている可能性が高い」との報告。

このタイミングで蒼翼の騎士エリスが竜(共生派)に騎乗して到着。エリスは竜族言語で個体に呼びかけを試みる。



3. 上空対話・交戦回避(風紋の刻)


エリスの呼びかけに対し、竜族個体は一時停止。竜族言語での短い交信が行われた(内容は後述)。

個体は「魔族の声に従っただけ。人間を襲う意図はない」と主張。だが、エリスが「防衛線への接近は挑発と見なされる」と警告すると、個体は北方へ飛び去った。

追撃は行わず。エリスの判断により、「この個体は対立派の末端であり、排除より情報収集を優先すべき」との結論。


4. 事後確認・報告(宵の刻)


竜族個体の撤退を確認。防衛線に被害なし。哨戒班に警戒強化を指示。

リシアの追加報告:「魔族支配派が竜族対立派の若い個体を利用している。おそらく防衛線の弱点を探る目的。今後、同様の偵察が増加する可能性」



*成果*


* 竜族個体の排除(実質的には追い払い):達成

* 魔族関与の確認:達成

* 防衛線の動揺抑制:達成

* 戦利品:なし

* 報酬:2800金貨(各員配分)

* 経験値:各員+850

* 消耗:矢束12本、魔力結晶小×3



*所見と提言*


竜族対立派と魔族支配派の連携が具体化しつつある。若い竜族個体は「魔族の声」に誘導されやすく、意図せず人類への敵対行動を取る可能性が高い。

エリスのような共生派竜騎士の存在は、無用な交戦を回避する上で極めて有効。今後、防衛線各区画に共生派竜族との連絡役を配置すべき。

また、魔族中立派( リシアのような)の協力により、魔族支配派の動向を早期に察知できる。派閥を超えた協力体制の構築が急務。

ただし、人類強硬派(当方を含む)の中には「魔族との協力は裏切り」と見なす者もいる。内部対立の激化を避けるため、上層部の明確な方針提示を求める。


署名:『焦土の盾』ガルヴィン・ブラックスミス


=====================


*【日誌】*


日付:星暦0884年 第八月〈戦塵期〉17日

場所:第七防衛線・第三砦詰所、武器庫の片隅


タイトル:灰色の翼と、消えない疑念



〈業務余録〉


竜の翼は、思ったより静かだった。

雲底の高さを滑るように旋回する青灰色の影。風切り音すら聞こえない。ただ、見られている感覚だけが首筋に刺さる。矢程よりさらに遠い距離を保ちながら、確実にこちらを観察している。


トーマスが矢を引く。弦の音が空気を裂く。竜は避ける。当然だ。警告だと分かっている。


リシアが「魔族の干渉波がある」と言った時、俺の中で何かが冷えた。魔族が竜を操っているのか。それとも、取引しているのか。どちらにせよ、俺たちは挟まれている。


エリスが来た時、正直、複雑だった。彼女は竜に乗っている。共生派だ。俺たちと同じ「人類側」のはずだが、竜に乗っている姿を見ると、どこか違う世界の住人に見える。塔頂よりさらに高い空を、まるで地を歩くように自然に飛んでいる。


彼女が竜族言語で呼びかける。竜が応える。俺には何を言っているのか分からない。ただ、数十息ほどの会話の後、竜が去っていった。それだけだ。


=====================


〈私的記録〉


任務後、武器庫で盾の手入れをした。


表面に小さな傷。指幅の半分ほどの長さ。竜の鱗の欠片が飛んできたのか、それとも石礫か。分からない。磨く。傷は消えない。深くもない。ただ、そこにある。


リシアが詰所で茶を淹れていた。魔族だが、動作は人間と変わらない。湯の温度を確かめ、茶葉を量り、静かに注ぐ。俺が武器庫から戻るまで、一刻ほど待っていたらしい。


「ガルヴィン、あなたは私を信用していない」


突然そう言われた。


「ああ」と答えた。嘘をつく理由がない。


「それでいい。信用は時間が作る。今は、共に生き延びることだけを考えよう」


彼女は笑わなかった。俺も笑わなかった。


ただ、茶は温かった。



〈総括〉


エリスが去る前、短く言った。


「次はもっと大きな個体が来る。今日のは子供だ」


子供。あの一翼の長さが、子供。


俺は盾を持つ。それしかできない。


竜が来ようと、魔族が来ようと、防衛線は守る。


それが俺の仕事だ。


だが、心のどこかで思う。


この戦いに、終わりはあるのか。


それとも、俺たちは永遠に灰色の翼を見上げ続けるのか。


明日も、同じだ。


盾を持ち、立つ。


それだけだ。


【記録終了】

**【用語・単位について】**


本報告において使用される独自の単位および用語について、辺境諸国連合以外の閲読者の理解を助けるため、以下に説明を記す。


**距離の単位**:

- 指幅:人差し指の幅程度(約2cm相当)

- 掌幅:手のひらの幅程度(約10cm相当)

- 腕尺:肘から指先までの長さ程度(約45cm相当)

- 歩幅:成人男性の一歩程度(約70cm相当)

- 間:両腕を広げた幅程度(約1.8m相当)

- 竿:測量用の長竿一本分(約6m相当)

- 翼:大鷲の翼を広げた幅程度(約15m相当)※竜の体長表現にも使用

- 矢程:弓矢が届く距離(約100m相当)

- 鐘響:鐘の音が届く範囲(約500m相当)


**時間の単位**:

- 息:深呼吸一回分程度(約5秒)

- 刻:香が一節分燃える時間(約15分)

- 環刻:日時計の影が一区画移動する時間(約30分)

- 鐘:定時の鐘が鳴る間隔(約1時間)

- 環:日の出から日の入りまでを四分割した一区画(約6時間)


**高度の単位**:

- 樹冠:森の高木の頂点程度(約20m相当)

- 塔頂:監視塔の高さ程度(約50m相当)

- 雲底:低い雲の底の高さ程度(約300m相当)


**その他**:

- 禁足地:王国により立ち入りが制限された危険地域

- 魔力探査:魔力の流れや性質を感知する技術

- 干渉波:他者の魔力が混入している状態を示す波動

- 共生派/対立派/中立派:種族内の政治的立場を示す分類


※本報告は辺境諸国連合の標準記録様式に準拠しているが、地域や文化圏によっては異なる単位系が使用されることがある。

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