報告者:『紅鎖の戦斧士』ガルドラン・ヴォルク 3枚目
【護衛訓練任務・緊急報告書】
報告者:『紅鎖の戦斧士』ガルドラン・ヴォルク
(B級戦士/ゴールドランク/Lv57/ブルズハウンド傭兵団出身/独立登録/保守派)
日付:星暦1028年、第十の月〈灰風期〉10日目
任務:王立訓練院新人野外演習護衛任務/C級合同任務
依頼主:王立冒険者訓練院・教導課
提出先:バルハーン冒険者ギルド本局
*同行者*
* 剣士見習い:『新月の刃』リオ・カーデン
(E級, ブロンズ, Lv12, 訓練院所属, 新人)
* 弓士見習い:『風読み』メリア・ヴェント
(E級, ブロンズ, Lv13, 訓練院所属, 新人)
* 魔術士見習い:『青燐の灯』トリエ・フェンネル
(E級, ブロンズ, Lv11, 訓練院所属, 新人)
* 書記官補佐:『灰墨の記録士』カーレン・ドレッド
(D級, シルバー, Lv25, ギルド記録局)
*任務概要*
アルメナ渓谷西部にて、訓練院生3名の野外行軍・護衛訓練を実施。
通常行程中に“変異山賊団〈黒砂の笑い骸〉”と遭遇。
敵性:人型、構成人数約15〜20。行動傾向に異常性(魔術的催淫・錯乱効果)を確認。
交戦の上、撃退・指導対象全員生存。
報酬:基準報酬2600金貨+緊急討伐加算1000金貨。称号「訓練守護官(暫定)」。
*経過詳細*
1. 陽中刻・訓練行軍中
谷間を抜けた地点で敵影。人声による“笛鳴き”信号。
直後、周囲より香煙発生、精神混乱を誘発。
トリエが術式干渉を試みるも不完全、リオとメリアに軽度の幻惑症状。
私が前衛突破、敵の陣形を分断。
2. 宵刻・戦闘交錯
山賊団は戦闘と同時に不明な呪油を散布、皮膚感覚過敏・錯乱を引き起こす。
敵頭領〈笑骸のガルズ〉を確認。身体各所に鉄刺と鈴を装着。
近接戦闘にて指揮官を斬首。残党逃走。
副頭領を生け捕り、魔術士トリエが麻痺術で拘束。
3. 翌明刻・鎮静確認
新人体調回復を確認。物資・記録を収集後、現地解散。
*成果*
変異山賊団〈黒砂の笑い骸〉主力壊滅。
残党数名逃走も、再編は困難と判断。
戦利品:[鈴付き鉄刺]4本、[呪油瓶]2個、[山賊信号笛]1本。
報酬:2600金貨+緊急加算1000金貨。称号「訓練守護官(暫定)」。
*所見と提言*
敵の“香煙”及び“呪油”には性的刺激を伴う錯乱作用。
原因は古代催淫符の流用と思われ、禁呪法に抵触。
調査班による残留符痕の解析を要す。
また、新人教育任務では想定外の魔術干渉に備え、
防呪符・清浄香の常備を義務化すべき。
署名:『紅鎖の戦斧士』ガルドラン・ヴォルク
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*【日誌】*
日付:星暦1028年、第十の月〈灰風期〉10日目
場所:アルメナ渓谷・帰還路野営地
記録者:ガルドラン・ヴォルク
夜が近づくと、谷底の風がぬるくなる。
その匂いで“人の匂い”が混じると、戦の予感がする。
あの山賊どもはただの野盗じゃなかった。
奴ら、香油を焚いて笑ってた。
笑いながら、まるで女の声を真似たような声で。
リオとメリアの目が濁っていくのを見た瞬間、俺の中の何かが切れた。
気づいた時には、斧の刃が三人まとめて叩き割ってた。
血が砂に染みて、音もなく消えた。
俺は戦士だが、女や子供を狙う連中だけは許せねぇ。
戦場で死ぬのと、下卑た快楽で死ぬのは違う。
トリエは震えながらも符を重ねてた。
「先生、終わりましたか」と言った時の顔が忘れられねぇ。
終わったよ。全部。お前らが汚される前にな。
野営地に戻って、火を焚いた。
若い連中は黙って飯を食ってる。
誰も笑わねぇ。笑う理由もねぇ。
だがそれでいい。笑えるのは、もう少し先でいい。
飯は焦げた干し肉と黒パン。
味なんかどうでもよかったが、
リオが一言、「守ってくれて、ありがとうございます」って言った。
胸が熱くなった。
……たぶん酒のせいじゃねぇ。
夜空に鈴の音が残ってる気がした。
風が吹くたび、斧の刃が月光を弾く。
次に同じ匂いを嗅いだら、迷わず斬る。
あんな連中に若い芽を摘まれるのは、見たくねぇ。
記録了/宵環の刻終わり




