報告者:『紅鎖の戦斧士』ガルドラン・ヴォルク
*【討伐任務実施報告書】*
報告者:『紅鎖の戦斧士』ガルドラン・ヴォルク
(B級戦士/ゴールドランク/Lv57/ブルズハウンド傭兵団出身/独立登録/保守派)
日付:星暦1028年、第九の月〈烈日期〉十五日
任務:南方砂漠帯「クル=ハーラ遺跡群」魔蝕種殲滅任務/B級合同任務
依頼主:王都南域防衛局・砂漠駐屯支部
提出先:バルハーン冒険者ギルド
*同行者*
* 符術士:『蒼紋の見習い』リーナ・エステル
(D級/シルバーランク/Lv23/アーク学院所属/新人)
* 斥候:『影砂の猟犬』ドレイ・フェン
(C級/ゴールドランク/Lv45/ハンターズギルド所属)
* 弓兵:『陽炎の射手』カナ・リュフェル
(C級/シルバーランク/Lv33/独立登録)
* 神官:『白陽の巡礼者』ソルム・グラード
(C級/ゴールドランク/Lv41/白灯会)
*任務概要*
南方交易路の要衝「クル=ハーラ遺跡群」において、
商隊および発掘隊を襲撃する“魔蝕種群”が出現。
群体規模は推定百体、巣穴は遺跡地下二層部。
殲滅および遺跡構造の安全確保を実施。
報酬:4800金貨+砂漠危険手当800金貨/称号「南砂討伐士」。
*経過*
* 第一環刻(黎明前)
砂嵐の収束を待ち進軍。視界悪化、気温推定+38度。
ドレイが風向を読み、東側ルートより侵入。
* 第二環刻(昇陽)
地下入り口を発見。瘴気濃度中等。
リーナが符文封鎖を試みるも魔蝕種反応活発化。
群体先頭と交戦、斬撃・神光弾併用にて制圧。
* 第三環刻(烈陽)
遺跡主祭壇下部に“魔蝕母体”を確認。
体長六メートル、耐熱外殻。弓兵カナが右眼射抜き、
ソルムの聖光降下と合わせ、私が戦斧で心核を破壊。
魔蝕流の停止を確認。
*成果*
殲滅完了。地表・地下とも瘴気残留値4%以下。
遺跡構造の崩落なし、通行再開可能。
回収品:[魔蝕殻片]4個/[瘴気結晶]1個/[古代銀飾]1点。
報酬金全額受領。称号「南砂討伐士」認定。
*所見と提言*
瘴気発生源は魔蝕母体体内に残存していた古代符術炉の影響。
符術士リーナの判断で強制停止を行ったが、炉心は完全破壊に至らず。
後続の符術班による調査を推奨。
また、新人符術士の実戦投入には経験者の同行を必須とする。
署名:『紅鎖の戦斧士』ガルドラン・ヴォルク
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*【日誌】*
日付:星暦1028年、第九の月〈烈日期〉十五日
場所:砂漠都市バルハーン・宿屋「赤砂の杯」
記録者:ガルドラン・ヴォルク
砂を噛んだまま酒を飲むと、歯の隙間がざらつく。
これが南方の味ってやつだ。
遺跡の中じゃ一滴も汗を拭けなかったから、今夜の麦酒は身体の芯まで沁みる。
あの新人のリーナ嬢ちゃん、若いのに肝が据わってたな。
戦場であんな細腕の女が符文を刻んでるのを見ると、
戦斧の持ち手としてはつい守ってやりたくなる。……いや、胸の話じゃない。たぶんな。
群れの処理は上出来。
ドレイの鼻がなきゃ、砂中潜行種に食われてただろう。
カナの弓も正確で、尻尾を射抜くたびに砂煙が光った。
俺の斧もまだ錆びちゃいねぇ。
魔蝕母体をぶっ潰した時、斧の柄が折れたが、あれは想定内だ。
予備の鉄骨を溶接して延命中。
帰り際、リーナが俺の背中を見て「斧の扱い、力任せすぎです」と笑った。
言われて悪い気はしなかった。
あの笑い方は、昔の仲間と同じだった。
宿に戻って風呂を借りた。
桶の中に砂が浮いてる。誰の髪だか知らんが、香料の匂いがして悪くない。
南の女は香りが強い。強い香りの下で生きる女は、戦より怖い時がある。
飯はスパイス煮込みの肉団子。味は濃いが、酒が進む。
ソルム神官は相変わらず真面目に祈ってやがる。
俺は酒で清める派だ。神より酒だ。
明日は装備を直して、北に戻る。
ギルドの事務官がまた小言を言うだろうが、報告書はもう出した。
仕事は終わりだ。
今夜はもう一杯やって寝る。
どうせ明日の朝には砂まみれだ。
――“戦場の砂は、風呂でも落ちねぇ”って昔の教官が言ってた。
ほんと、その通りだ。
記録了/烈陽後の刻




