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第96話 再会の温度

森で数時間休んだあと、私と紫苑さんは本部へ戻った。

見慣れた建物の輪郭が視界に入った瞬間、胸の奥が熱くなる。


扉を開けると、いつもの空気。

でも、その中心で仲間たちが一斉に振り向いた。


「――天音!」


絢華さんが真っ先に駆け寄ってきて、私を抱きしめる。

肩に顔を押しつける勢いで、ぐっと力がこもる。


「どれだけ心配したと思ってるのよ! 次やられたら承知しないんだから!」

「……ごめんなさい。でも、もう大丈夫です」


思わず笑うと、絢華さんの目尻にほんのり涙が光った。


凛子さんは両手を胸の前でぎゅっと握り、涙をこらえきれずに頬を濡らしている。

「天音ちゃん! 本当に……本当によかった……!」

その声に、胸がじんとした。


「おーい! 天音ちゃん、無事かぁー!」

水輝さんが私の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

「痛っ……!」

「ははっ、元気そうで安心した!」


煌さんは人形を抱いたまま、静かに目を細めた。

「……帰って来てくれて、ありがとう」

その言葉がずしんと胸に落ちる。


「天音……あの時、守れなくて……すまなかった」

低く言ったのは一鉄さんだった。


そして、桔梗さんが一歩前に出る。

いつもなら叱咤に近い言葉で場を切る彼女が、しばし口を噤んだまま私を見つめた。

その沈黙に、空気が張りつめる。


「……天音、あの時……守れなかった。私の判断が遅れたせいで――」


一瞬だけ視線を伏せ、深く息を吐く。

その声は、いつもの棘を潜めていた。


「本当に、ごめん」


強い言葉を選ぶ桔梗さんが、真正面から言葉にした謝罪。

胸が詰まりそうになった。


「……違うんです。誰も悪くありません」

私は二人の肩を掴み、強く首を振る。

「これは全部、私の力不足です。……だから次は、負けないくらい強くなります」


一瞬、場がしんと静まった。

その沈黙を破ったのは、桔梗さんだった。


「言ったわね。じゃあ次は泣き言なしよ?」

口元に薄い笑みを浮かべながら、からかうように言う。

でも、その目尻には小さな涙が浮かんでいた。


絢華さんもにやりと笑った。

「訓練メニュー、倍にしてやるから覚悟しときなさい」

「……はい。お願いします」


不思議と怖くなかった。

むしろ胸がすっと軽くなった。


「天音ちゃん……ごめんなさい……私がちゃんと視えてたら……」

千歳さんが悲しそうに俯く。私は千歳さんの頭にそっと手を置いた。

「千歳さんのせいじゃないです……私、もっと強くなりますから」


「天音ちゃん……無理はしないでね」

その瞳が、ほんの少しだけ遠くを見ている気がした。


(……あぁ、帰ってきたんだ……ここが、私の居場所なんだ)


胸の奥がじんわりと熱くなる。

次こそ、絶対に守り抜く。


視線を感じて振り向くと、紫苑さんが静かに立っていた。

何も言わないけれど、その瞳が「よくやった」と言っている気がした。

私は深く頷いた。


その瞬間、紫苑さんの口元がわずかに緩んだ――気がした。

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