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第92話 一縷の光

どれくらいここに閉じ込められているんだろう。

刀を何度も振り、見えない壁を叩き、虚空を切り裂いてきた。

でも何も変わらなかった。


(……出られない……!)


時間の感覚なんて、もうわからない。

目を閉じても開いても、景色は同じ。

体は冷え切り、思考だけがいやに冴えていく。

そのせいで、どんどん不安が膨らんでいく。


(……私、このまま……ここで……)


怖さに押し潰されそうになった瞬間、胸の奥で、かすかな光が揺らめいた。


『……天音……』


「天禰さん……!」


思わず声がこぼれる。

胸の奥から響くその声に、涙が滲んだ。


「お願い……! ここから出たい……力を貸してください……!」


一瞬の沈黙。

そして、天禰さんの声が静かに落ちてきた。


『……天音……場所は神界。私の神威はここで増幅する……天音の体が、魂が、耐えられるか分からない』


「……!」


飲み込まれる……?

私という存在が消えてしまうかもしれない――

その現実が、足元から冷たいものを這い上がらせる。


『最悪、天音を守るはずの私が、天音を飲み込んでしまうかもしれない……』


背中に寒気が走る。

体が震えそうになるけど――私は強く首を振った。


(……怖い……でも……)


紫苑さんの顔が浮かんだ。

肩を叩いて笑う水輝さん、真剣な絢華さん、無口だけど優しい八雲さん……

皆の顔が、次々に思い浮かぶ。


(私は……皆に沢山の勇気を貰った!……諦めない事を教えてもらった!だから……絶対に諦めない!!)


刀を握りしめ、私は叫ぶ。


「それでもいい!!」


胸の奥から、熱い何かが込み上げる。


「ここで何もしないで最高神代理の思い通りになるくらいなら……!

一度きりの望みでもいい……私に力を貸して!!」


少しの沈黙のあと、天禰さんの気配が柔らかく震えた。


『……本当に、強くなったわね、天音』


その声は、誇らしげで、でもどこか哀しそうだった。


『わかった。私の力を貸す。でも約束して……どんなに苦しくても、天音は天音のままでいて。たとえ私に飲み込まれそうになっても――最後の一線を、絶対に手放さないで』


「……はい!」


次の瞬間、胸の奥で光がぱっと広がった。

全身の血管が一斉に沸き立つみたいに熱くなり、骨の髄まで焼かれる感覚に声が漏れる。


「――っ……!」


膝が崩れそうになるのを必死に堪え、私は刀を握りしめた。

白い空間が一瞬、雷鳴のような轟きと共に光に満ちる。


(負けない……! 絶対に……ここから出る!)


刀が脈打つように震え、刃先から眩い光が奔った。

空間が裂ける瞬間、鼓膜を突き破るような鋭い音が響く。

風が吹き抜け、閉じ込められた空気が解き放たれるのを肌で感じた。


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