第90話 幽閉の中の小さな炎
光の吸い込まれるような感覚が収まり、気がつくと――冷たく静寂に包まれた空間にいた。
足元も、壁も、天井も、白く淡く光るだけで、手を伸ばしても何も掴めない。
息を吸うたびに、空気が冷たく胸を刺すようで、体中に力が入りにくい。
(……ここは……どこ……?)
刀を握りしめ、必死に体を支えようとする。だが、床の感触は遠く、まるで私は空中に浮かんでいるようだった。
耳を澄ませても、仲間の声は届かない。風もない、光もない、ただ無機質な冷たさと静けさだけ。
――その時、声が響いた。
「少しは頭が冷えたか?」
見上げると、最高神代理が私を見下ろしていた。
「私は、絶対に貴方の思い通りにはならない……きっと皆が助けに来てくれる!」
私は最高神代理を精一杯睨みつける。
それが、私に出来るささやかな抵抗だった。
「……ふっ仲間か……本当に助けにくるとでも?……お前の仲間は助けに来ない、今頃お前の幻と共に笑いあっている事だろう」
その言葉が、胸に鋭く突き刺さる。
今頃、仲間は私の幻と笑い合っているのかもしれない。
その一言が、希望の火を消し、心を押し潰す。
(う……そ……嘘だ……!)
必死に頭の中で否定する。
でも、声は止まらず、私の心をえぐるように続く。
「お前にできることなどない、ここで何を抵抗したところで無駄だ……」
冷たい光が、心の奥まで侵食してくる。
腕も、脚も、刀を握る手も――力が抜け、ただ無力さだけが残る。
(……だめ……もう……)
絶望に沈みかけたその時、胸の奥で、微かに声が響いた。
『……天音……諦めないで……』
――その声は、前世の天禰さんのもの。
耳に届くものではなく、心の奥から静かに湧き上がる声。
『天音は……一人じゃない……大丈夫……きっと大丈夫……だから希望を……捨てないで』
私は目を閉じ、刃を握る手に残る冷たさを感じながら、心の奥に灯った小さな炎を見つめた。
絶望の淵に立たされても、天禰さんの声は柔らかく、しかし確実に私の意思を揺さぶる。
(……まだ……終わらせない……)
私は、幽閉の闇の中で、小さく体を震わせながらも、刀を握り直す。
冷たい空気が肌を刺す感覚、闇の深さ、孤独――全てを受け止めるように、意識を集中させた。
胸の奥で、わずかに灯った希望の炎が、まるで反抗の叫びのように燃え広がる。
――絶対に屈しない。
――絶対に、希望を失わない。
刀は冷たく重いままだけど、握る手に力が戻る。
心臓の奥で小さな決意が芽吹き、幽閉の闇に立ち向かう意志が確かに生まれた。
私は、闇の中で静かに刃を握り直し、天禰さんの声を胸に刻んだ。




