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第88話 迫る真実

光が収束し、瞼を開けると――そこは戦場ではなかった。

足元には白く冷たい石の床。天井は果てしなく高く、荘厳な柱が並ぶ。まるで神殿の中に立たされているような錯覚を覚える。


(……ここは……どこ……?)


刀を握る手に力を込め、息を整える。だが、周囲には仲間の気配はどこにもない。

静寂。空気すら動かないほどの静けさに、背筋が凍る。


その時だった。


「……ようやく来たか」


低く、しかし揺るぎない声が響いた。

振り返った先に、ひとりの男が立っていた。


白銀の衣を纏い、背筋を伸ばし、瞳は凍りつくように冷たい。

威圧感――いや、それ以上だ。存在そのものが押し寄せてくるようで、呼吸すら乱れる。


「……誰……ですか」

声が震えた。私は刀を構え、睨みつける。


「私は最高神代理。この世界の秩序を守るために、神の座を預かっている者だ」


最高神代理――。

その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がざわめいた。昨夜、先代最高神と名乗った男の声がよぎる。


――「知りたくはないですか? 前世に何があったのか」


(まさか……この人も……)


「……私は……神なんかじゃありません。私はただの人間です」

必死に言葉を吐き出す。

否定しなければ、立っていられない気がした。


けれど、男は一歩も動かず、淡々と告げる。


「否定するのも無理はない。今はまだ“眠っている”のだからな。だが、いずれ思い出す――お前が誰であったのかを、全く人間の身でありながらあの方を受け入れられないとは……」


胸の奥を冷たい手で掴まれたように、息が詰まった。

刀を握る手がわずかに震える。


「……思い出したくなんか……ない……!」


叫ぶように吐き捨てる。

でも、心のどこかで――“もし知ってしまったら”という恐怖と、“知りたい”という衝動が渦巻いていた。


男の瞳が深く光る。

そこには慈悲も怒りもない。ただの冷酷な真実だけが宿っている。


「お前に選択の余地など無い、一刻も早く思い出してもらわねば」


静かな声が、石造りの空間に反響する。

胸がざわめき、言葉を失った。

身体がガタガタと震える。

歯がガチガチと音を立てる。


(人として……神として……そんなの、まだ……答えられない……!)


胸の奥が焼けるように熱くなる。

私の中で何かが弾け、気づいた時には――刀を抜き放っていた。


「うるさいっ!!!!」


叫びと同時に、私は最高神代理へと切りかかっていた。


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