表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/108

第85話 再び刃を握りしめて

光が消え、目を開けると――そこは過去の世界だった。

見慣れた景色とは少し違う、空気のひんやりとした匂い。光の色も、空気の色も、どこか懐かしくて、深い森の中。


(……知らない場所……)


胸の奥がざわめく。戦う緊張、未知への恐怖、そして少しだけ興奮している自分。

目の前には、一鉄さんがすでに立っていた。


「天音!久しぶりの一緒に任務にだな!!」

その声に、背筋が伸びる。迷いを捨て、前を向いている一鉄さんの姿を見ると、私も自然と気持ちが引き締まった。


「はい!よろしくお願いします」

小さな声でも、確かな決意がこもる。


桔梗さんは冷静に周囲を見渡し、淡々と指示を出す。

千歳さんは静かに天音の横に立ち、温かい目で私を見守る。

その視線に、胸の奥がじんわりと温かくなる。

恐怖や不安はまだ残っているけれど、仲間がいるだけで少し安心できる。


(……みんながいる……大丈夫、きっと乗り越えられる……)


そんな思いを胸に、私たちは進み出した。

森の奥から黒い影がもたらす重苦しい気配。堕天使だ。


「来たわね」

桔梗さんの声が鋭く響く。

「天音、無理はしないでよね。連携を意識して」


刀を握り、深呼吸をひとつ。

胸の奥で心臓が早鐘を打つ。恐怖もある。でも、刀を握る手は震えていなかった。


「……行きます」


私たちは息を合わせ、堕天使に立ち向かう。

一鉄さんが前に出て攻撃を仕掛け、桔梗さんが銃を構え、弾丸を放つ。千歳さんは状況を読み、私に指示を出す。


(……こうして、戦っている間は、私でいられる……)


堕天使の影が迫り、光が瞬く。刀と力の刃がぶつかり合う衝撃が、全身に響く。

そのたびに心臓が跳ね、全神経が研ぎ澄まされる。恐怖も不安も押し込めて、ただ目の前の敵だけを見る。


「天音ちゃん、右!!」

千歳さんの声に反応し、体を瞬時に転じる。

間一髪で攻撃をかわし、刹那に刀を振り返す。斬撃が堕天使に直撃し、影が揺れた。


(……勝たなきゃ……仲間を守らなきゃ……)


戦いの中、心の奥で小さく紫苑さんの姿がよぎる。

拒絶された痛み、先代最高神の囁き、昨夜の孤独――それらを振り払うように、私は力を込めて攻撃を繰り返す。


堕天使が倒れ、静寂が訪れた。息を切らし、刀を握る手に力が残っていることを確認する。

血の匂い、風の感触、仲間の無事な姿――それだけで胸が温かくなる。


「大丈夫か、天音?」

一鉄さんが、少し笑みを含んだ声で尋ねる。


「はい……大丈夫です」

恐怖や不安はまだ残る。けれど、仲間の存在が私を支えてくれている。

だから私は、全力を尽くす。


(……戦って……戦って……強くなる……)


次の戦いがすぐそこに待っている。

でも、仲間とともにいる今は、目の前の戦いに集中できる。


私は刀を握りしめ、胸の奥で静かに誓った。

――再び、過去の戦場で、私は私でいるために。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ