表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/108

第83話 答えを抱えたまま

朝の光が差し込むはずの窓辺を、私はただ無言で見つめていた。

眠ったのかどうかさえ曖昧で、まぶたは重く、体は鉛のようにだるい。胸の奥にはまだ、昨夜の声がこだましている。


――「知りたくはないですか? 前世に何があったのか」


先代最高神と名乗ったあの男の言葉が、頭から離れない。

知りたい。けれど、知ってしまえば今の自分が壊れてしまう気もする。

紫苑さんの前では強がったけれど、本当は怖くて仕方がない。


「……支度、しないと」


独りごちて身を起こし、戦闘服に袖を通す。鏡に映る顔は少し青白く、唇も乾いていた。それでも、仲間に心配をかけるわけにはいかない。私は八咫烏の一員なのだから。



食堂へ向かうと、すでに数人が席に着いていた。

凛子さんが私を見つけ、ふんわりと微笑む。


「おはようございます、天音ちゃん。……あら、顔色が少し悪いわね?」


「い、いえ。大丈夫です。少し寝不足なだけで」


慌てて笑顔を作るが、凛子さんの優しい視線が胸に刺さる。

絢華さんはパンを頬張りながら、じろりとこちらを見る。


「ふーん……何かあったんじゃないの? まあ、言いたくないなら詮索しないけどさ」


その軽口めいた言い方に救われるような、逆に図星を突かれたような気分になる。


千歳さんは静かにお茶を口に含んでから、私を見た。

柔らかい笑みを浮かべながらも、その瞳の奥にはどこか深いものが揺れている。


「無理はしないでくださいね。……時には、休む勇気も必要です」


私は小さく頷いた。けれど――彼女に“何かを見透かされている”気がして、心がざわめく。



「……来ていたか、天音」


低く落ち着いた声に振り向くと、紫苑さんが食堂に入ってきた。

無表情に近いその顔が、ほんの一瞬だけ私を確かめるように見つめる。

心臓が跳ね上がり、視線を逸らしてしまった。


(言えない……あのことは……。言ってしまったら、また迷惑をかける……)


自分に言い聞かせるようにスープを口に運ぶ。けれど味はほとんど分からなかった。



やがて本部に任務の報せが届く。

任務――過去へ行き堕天使討伐のための招集。

天音の胸の奥で、不安と恐怖と期待がないまぜになって渦を巻く。


(また……戦いが始まる……)


そして、昨夜の言葉が蘇る。


――「考えてみてください。知ることを望むなら、私はいつでも応じます」


答えを出せぬまま、私は任務へと歩き出す。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ