第78話 ごめんなさいの先に
視界がようやく落ち着き、赤い光も消えていく。
床には倒れた天使たち、仲間たちは血を流しながらも必死に立ち上がっていた。
桔梗さんの腕には深い切り傷、八雲さんの肩には血がにじみ、千歳さんは汗と血でぐっしょり濡れている。
その光景を目の当たりにした瞬間、胸の奥が締め付けられた。
「……私が、こんな……」
声がかすれる。刀を握る手がまだ震えている。
胸の奥に渦巻く罪悪感が、足を地に縛り付けるようだった。
これが……私のせい?
「天音、落ち着け」
紫苑さんの声が静かに響く。背後から、彼がそっと腕を回し、私を支えた。
「大丈夫だ。もう、終わった。お前は悪くない」
涙が勝手に頬を伝う。胸の奥の痛みが少しだけ和らぐ。
でも、仲間たちの目に映る傷や疲労は……私のせいだと思えてならない。
「ごめんなさい……本当に……」
思わず口をつく。謝らずにはいられない。
桔梗さんが光壁を解除しながら近づく。銃を置
き、私の肩に手を置く。
「違う、天音。暴走していたのは力に飲まれただけ。自分を責める必要はない」
その眼差しは冷たくもあるが、どこか温かさがあった。
「……でも、みんなが……」
言葉が続かない。視線の端に、八雲さんの傷ついた姿がある。
「危なかった……けど、お前は戦った。間違ってなんかない」
八雲さんは無口に見えるけど、短い言葉の重みが胸に刺さる。
その沈黙の中の確かな信頼が、私を少しだけ落ち着かせた。
「天音ちゃん、大丈夫」
千歳さんの声は震えていたけれど、温かい。
「私の能力でも、あの天使は倒せなかった……危なかったけど、天音ちゃんは間違ってない」
仲間たちの言葉が、胸の奥にじわりと染みていく。
暴走していた自分が怖くて、悔しくて、でも……少しだけ落ち着けた。
「ごめんなさい……本当に、ありがとう……」
小さな声でつぶやくと、紫苑さんがそっと抱きしめ直してくれる。
その温もりに、ようやく自分を取り戻せた気がした。
頭の奥に、まだ先代最高神の声がかすかに響く。
『ふふ……まだ堕ちる余地はある……』
でも今は、恐怖よりも、仲間たちの温かさが勝っている。
手を握り直す。震えていた指先が少しずつ力を取り戻す。
「……次は、必ず……」
拳を握り直す。決意が胸を満たす。
パパの死を変えられなかった悔しさも、仲間を傷つけてしまった罪悪感も、ここからの力に変えていく。
私の手は再び、刀をしっかりと握っていた。
――もう、逃げない。
視線を上げると、仲間たちがそれぞれ血を拭い、立ち上がろうとしている。
桔梗さんが軽く頷き、八雲さんは手を差し伸べる。
千歳さんは肩を押さえながらも微かに微笑む。
私は胸の奥で震える声を、わずかに呟いた。
「……ごめんなさい……」
紫苑さんは言葉を返さず、ただ強く抱きしめる。
その温もりに、私はようやく自分を取り戻していった……。




