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第72話 止まらぬ剣、追い越せぬ未来

「……怖い、なんて言ってる暇はない」


刀を握る手が汗ばむ。

それでも、胸の奥にあるのは恐怖じゃない。

倒さなきゃ……パパを救うために!


「行く!!」


私は地を蹴り、一直線に二刀の天使へと飛び込んだ。

双剣が私の首を狙う──ギリギリで身を捻る。

冷たい風が頬を裂いた。


「八咫烏⸺【空斬・穿】!」

八雲さんの双剣が、空間そのものを切り裂いて死角から斬り込む。

背後を取ったはず──!

だが、敵の翼が蠢き、硬質な羽根が盾のように弾き返した。


「チッ……!」

八雲さんの舌打ちと同時に、天使は反転し、その剣が八雲さんの喉元を狙う。


「八咫烏⸺【結界展開・鉄壁】!」

桔梗さんの光壁が間に割り込み、ギリギリで刃を防いだ。

だが衝撃で壁がひび割れる。

「八咫烏⸺【魔弾連射】!」

彼女の銃から光弾が雨のように降り注ぎ、天使の動きを押さえ込む。


だが──双剣が一閃した瞬間、弾丸が紙のように弾かれた。

桔梗さんが小さく舌打ちする。


「八咫烏⸺【未来視・転告】!」

千歳さんの声が飛ぶ。

「左ッ、三歩──!」

叫びに従い飛び退いた瞬間、天使の剣が空を切った。

だが次の瞬間にはもう別の動き。

「速すぎて……未来が、追いつかない……!」

千歳さんの額から汗が滴る。


(千歳さんの予知すら超えてる……!?)


胸がざわめく。

けど足を止めれば終わる。


「八咫烏⸺【斬撃最大強化】!!」

私は振り抜いた。

刃が白く光を帯び、天使の胸を裂いた。

確かに深々と切り裂いたはず──!


だが、肉は蠢き、泡立つように傷が塞がっていく。

「嘘……」

目の前で再生する光景に、心臓が冷たくなる。


「なら──これでどうだッ!」

八雲さんが再び空間を裂き、死角から斬り込む。

桔梗さんの光壁が進路を縛り、銃弾が撃ち込まれる。

千歳さんの声が次の動きを指示する。


──まるで全員が一つの体のように連携した。


「……っ今しかないッ!」


能力の反動で腕が痺れて、刀を落としそうになるが再び、刀を構え直す。

震える足を叱りつけるように、私は地を蹴った。


「八咫烏⸺【斬撃最大強化】!!」


渾身の一閃。

光の軌跡が空を裂き、天使の胸を深々と断ち割った。


──肉が裂ける。骨が砕ける。

確かな手応え。


けれど次の瞬間、血肉は泡立つように盛り上がり、砕けた骨すらも軋みながら再生していく。


「そんな……」

誰かの声が震えた。


だが私は叫ぶ。


「化け物だろうと……!!」

「私が、ここで斬るんだッ!!」


刀を握る手に、もはや迷いはなかった。


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