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第62話 背中の光

陸さんの刃が地を割り、破片が四方に飛び散った。砂煙が視界を遮る中、私はその影を見逃さないよう必死に目を凝らす。

「くっ……!」

反射的に身を翻した瞬間、風を裂く重い一撃が背中をかすめた。わずかな遅れが命取りになる――そう理解しながら、私は必死で足を踏み込む。


だが、前へと出た私の横に影が並んだ。

「天音ちゃん!」

凛子さんが槍を握りしめ、陸さんに向かって身構えている。その表情は苦渋に染まっていた。


「退いて、凛子さん! 危ないから!」

「でも……あなた一人じゃ――!」


言葉の途中で、陸さんの叫びが夜気を震わせた。

「ウ、ウアアアアアアッ!!」

赤黒い光が陸さんの腕を覆い、暴力そのものの一撃が放たれる。私は刀で必死に受け止めたが、重すぎる衝撃に膝が軋んだ。


その刹那、凛子さんの槍が横から打ち込まれる。

「やめてっ、陸くん……私よ凛子よ!!」

しかし、その一撃には迷いがあった。刃先はほんのわずかに逸れ、凛子さんの腕をかすめただけ。


すぐさま陸さんの刃が反撃のように迫る。

「凛子さん!」

私は彼女の腕を引き、転がるように二人で地面に伏せた。直後、岩盤を砕く音が背後で轟く。


震える手で槍を握る凛子さんは、唇を噛み締めていた。

「……わたし……やっぱり、陸くんを……傷つけられない……」

その声音に滲む涙に、胸が締め付けられる。


でも――今は立ち止まっている暇なんてない。

「でしたら、後ろで支えてください! 回復も、援護も……凛子さんだからこそ出来ることがある!」

「天音ちゃん……」

「私一人じゃ、きっと押し切れない。でも――大丈夫。絶対に陸さんを取り戻すから!」


一瞬、凛子さんの瞳が揺れた。それでも彼女は槍を引き、深く息を吸い込む。

「……わかったわ。わたしは後ろから、あなたを全力で支える」


その言葉に、胸の奥が熱くなる。

「はい!」


次の瞬間、陸さんが地を蹴った。黒い残光をまとい、怪物のような速さで迫る。その圧力に心が折れそうになるけれど――背中に凛子さんの気配を感じるだけで、不思議と足が前へ出た。


「行くよ、陸さん……!」

刀を構え直し、再び闇を裂くように戦いへ飛び込んでいった。


「八咫烏⸺【癒しの雫】!」


後ろから凛子さんの声が響く。身体が淡い光に包まれ、私の傷や疲労が癒えていく。光が触れるたび、彼女の背後から支援される力が伝わり、全身に活力が戻る。


私は振り返り、ほんの一瞬、凛子さんに微笑みを向けた。

「ありがとうございます、凛子さん……二人で陸さんを助けましょう!!」


凛子さんも小さく頷き、私に微笑みかける。涙を隠した瞳には、揺るがぬ覚悟の光が宿っていた。


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