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第56話 凛子、消息不明

会議室を飛び出した私たちは、凛子さんの姿を求めて施設の中や周辺を手当たり次第に探し回った。


「……いない……」

水輝さんが額の汗をぬぐい、息を切らす。

「屋上も見たけど、影も形もなかった」


「こっちもダメだ」

無口な八雲さんまでもが眉をひそめる。

その顔に、焦りが隠せていなかった。


紫苑さんの通信が入る。

『進捗は?』

「見つからない!」

「こっちも!」

仲間たちの短く尖った声が、次々と通信に乗る。

それだけで、胸の奥に冷たい不安が広がった。


――このままじゃ、時間だけが過ぎてしまう。

焦燥が全身を支配する。

何かしなきゃ、凛子さんが……遠くに行ってしまう。


「……だったら、手分けして探しましょう!」

気づけば、声が出ていた。

一瞬、皆の視線がこちらに集まる。


「……確かに、固まって動くより効率はいい」

煌さんが頷き、銃を構え直す。

「通信は繋ぎっぱなしで行こう。何かあればすぐ連絡だ」


紫苑さんも短く言葉を添える。

『ああ。各自、捜索範囲を広げろ。合流は必要に応じてだ』


仲間たちはすぐに散り、それぞれ別の道を駆けていく。

水輝さんは「絶対見つける!」と叫びながら大通りへ走り、八雲さんは無言で屋根伝いに姿を消した。

煌さんも「妙な胸騒ぎがするから、気をつけて」とだけ言い残し、反対側の路地へ消える。


私も息を整える間もなく、路地裏へ飛び込んだ。


――どうして、凛子さんが……何も言わずにいなくなるの?

優しくて、穏やかで……誰よりも仲間を気遣う人なのに。

そんな人が、置き手紙ひとつ残さず、静かに姿を消すなんて。


足音だけが響く。

胸の中で、嫌な予感がじわじわと形を持ちはじめていた。


思い返してみれば、結さんの時から凛子さんの姿を見ることが少しずつ減っていた気がする。

(まさか……凛子さんの大切な人が……いや、まだ判断するには早すぎる……凛子さん!無事でいて!)


どうしても、最悪な結末が頭をよぎる。

そんなことを考えている場合じゃないと、自分に言い聞かせる。

それでも――その答えを知ったとき、私は……どうすればいいのだろう。


息が荒くなる。

けれど、足は止まらない。

ただひたすらに、あの優しい背中をもう一度見つけるために走り続けた――。


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