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第49話 八咫の神の元へ

「……っは……!」


はっと目を覚ました瞬間、私は勢いよく体を起こした。

息が荒い。額には汗が滲んでいて、指先がかすかに震えている。


(夢……?)


けれど、それはただの夢とは思えなかった。

確かに私は──彼女に会っていた。

淡い光の中、微笑んでいた“天禰”に。


(私の前世……神だった、私……)


夢の中で彼女は言っていた。

“その力は、神の力──神威”だと。

それが私の中に眠っているのだと。


(紫苑さんに……よろしくって……)


その言葉を思い出した瞬間、胸の奥がざわりと波打つ。

天禰の口調に嫌味はなかった。優しかった。ただ、心からそう言っていた。

でも私は──。


(どうして……紫苑さんのことを……)


問いかけようとした時、部屋のドアがノックされた。


「天音、起きたか」


低く、静かな声。紫苑さんだ。

私はびくりと肩を揺らしながら、声を返す。


「……はい」


ドアが開くと、そこに立っていたのは、見慣れた黒装束の紫苑さんだった。

けれど、その瞳はいつもよりもずっと鋭く、真っ直ぐに私を射抜いてくる。


「……頭領室に来い。話がある」


その一言だけを残して、彼は踵を返した。

まるで、私が“逃げる”ことを許さないかのような、冷静な圧。

いつもの紫苑さんではない、八咫烏頭領としての紫苑さんだった。


(……やっぱり、怒ってるよね……)


私は覚悟を決めて、立ち上がった。


* * *


「命令違反──これは、処罰の対象だ」


紫苑さんはそう言って、頭領室の中央に立つ私を見据えた。


(……言い訳なんて、できない……)


私は力を使った。暴走しかけた。

仲間の言葉を無視して、勝手な行動をした。


「……申し訳ありません」


そう、深く頭を下げると、紫苑さんはわずかに目を細めた。


「だが──結果的にお前は、結を救った……だが、それは結果論だ、次同じことがあれば二度と戦場には出さない……肝に銘じろ」


「……はい」


しばらく沈黙が流れる。

紫苑さんの視線が、私の奥の奥を探るように深くなった。


「……お前の力。その正体について、少しずつ見えてきたことがある。おそらく、それを確かめられる場所がある」


「……場所……?」


紫苑さんは無言でこちらへ一歩近づくと、重々しい口調で言った。


「ついて来い、天音。お前を“八咫の神”のもとへ連れていく」


「──え?」


思わず声を漏らした。


(八咫の……神……?)


「八咫烏の創設に関わり、国を守るためにこの国と契約した神だ“異能”の根源と繋がる存在。俺たちは、今こそ、その力の正体と向き合うべきだと思っている」


その瞳に、迷いはなかった。


紫苑さんは、私を信じてくれている。

それは分かる。でも同時に、私は──自分の中に“神”が居るということを、受け止めきれずにいた。


(でも……もう、逃げられない)


天禰の言葉。

紫苑さんの眼差し。


全部が、私の背を押している。


私は、小さく息を吸い、頷いた。


「……はい。行きます。私、自分の力と向き合いたい」


「そうか。ならば、すぐに支度しろ夜には発つ」


夜の静けさが迫る中、私は自分の歩むべき道を、一つ選んだ。

紫苑さんとともに──“神の座”の元へ。


(私は、天音⸺天禰じゃない……大丈夫)


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