第43話 叫び、届かぬ名を
(間に合って!──)
焦りで心が燃えていた。
千歳さんの手も、煌さんの声も振り払って、私はただ市街地を走っていた。
風を裂くように。胸を叩く鼓動が、痛いほど速かった。
目の前に広がるのは、歪んだ空。
そして、神々しくも無慈悲な羽根を持つ天使たちの群れが私を襲う。
「……邪魔……しないで……!」
私は、刀を抜き天使達を切り伏せる。
「八咫烏⸺【斬撃強化】」
(右腕が……でも、そんなこと……)
今はどうでもよかった。
この先にいる仲間たちの元へ、一刻も早く辿り着かなければ。
一体、また一体。
迫る天使の槍をかわし、神々しいその羽を切り落とす⸺。
止まることの無い猛攻を刀で受け流し、私はただ前へ。
「どいてってば……!」
斬撃とともに、鮮烈な光が天使の一体を貫いた。
身を焦がすような熱が、腕から広がっていく。
代償だ。力を使うたび、痺れが増す。動きが鈍くなる。
(でも……止まるわけにはいかない)
──ようやく、道がひらけて私は前進む。
市街地を走り抜け、ビルとビルの間をスピードを緩めることなく駆け抜ける⸺。
裏路地を抜けると、すぐそこに仲間達の姿が見えた。
堕天使……その中心に、堕天使達とは違う雰囲気を纏ってる人が居た。
資料で見た、神兵の姿だった。
「……あれは……」
少女だった。
けれど、その姿は、どこか壊れた人形のようで、瞳にも……いや全てにおいて生気が無い。
背中には、一際大きな黒い羽、無機質に無表情でただ、私達に剣を向ける⸺。
その少女の前に、ただ一鉄さんが立ち尽くしていた⸺。
「……なんで……なんで!お前が居るんだ!?!結!!!!」
戦場の中に、一鉄さんの叫びがやけにはっきりと響いた。
(やっぱり……一鉄さんの言ってた亡くなった娘さんなんだ……でもそんなはず……)
少女の姿に、私の心がざわつく。
哀しい⸺。
怒り⸺。
色んな感情が混ざり合って、吐き気がする。
でも、それ以上に……。
助けたい……心の奥からそう思った。




