表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/108

第30話 守れた仲間と命、震える指先

ぼんやりとした光が、瞼の裏に滲んでいる。

(……ここは……?)


身体が重い……。

鉛を抱え込んだみたいに、腕も脚も思うように動かない。

喉がひりつき、呼吸をするたびに胸が軋んだ。

──でも、不思議と、痛みより先に安心感があった。


「……目を覚ましたか」

静かな声が聞こえた……。

ゆっくりと瞼を持ち上げる。

滲む視界の中に、黒髪の男が立っていた。

淡い光を背にして、月夜みたいな瞳が私を見下ろしている。

「紫苑……さん……?」


声にならない声が喉から零れた。

紫苑さんは無言のまま、ベッド脇の椅子に腰を下ろす。

冷たいはずの瞳が、どこか安堵に揺れていた。

「……どれだけ眠っていたか分かるか?」

私は首を横に振る。

言葉にする力もなくて、ただ紫苑さんを見つめ返した。


「……三日だ」

(……三日も……?)

驚きと同時に、胸がぎゅっと締め付けられる。

あの戦いの最中、何度も意識が遠のきそうになった。

最後の最後まで、怖かった。

でも、それ以上に……守りたいって思った。


「……皆……無事ですか……?」

震える声で尋ねる。

紫苑さんはわずかに目を細め、そして頷いた。


「あぁ……お前のおかげだ」


その言葉を聞いた瞬間、張り詰めていたものが崩れ落ちそうになった。

喉の奥が熱くなる。


(よかった……守れた……ちゃんと……皆……)

でも同時に、あの戦いの記憶が蘇る。

刀を握る手が震えて、怖くて、泣きそうで……。


──でも、あの時……。

私は、確かに感じた。

あの絶望の淵で、私の中から響いた声。

意識を失う前に聞こえた、優しい声⸺。

《……もういい……眠れ……私が護る……》

それは、私自身の声のようで、私じゃない声だった。

(……誰……?私……?でも……)

朧げな意識の中で、その声にすがりたくて、泣きたくなるくらい温かくて、でもどこか悲しかった。


「……天音」


名前を呼ばれて、はっと意識が戻る。

紫苑さんが手を伸ばし、そっと私の頬に触れた。

冷たいはずの指先が、優しくて。

思わず涙が滲む。

「……怖かったか……?」


「……はい……でも……守れて……よかったです……」

声が震える。

紫苑さんは何も言わずに、ただ私を見つめていた。

その瞳の奥に、深い哀しみと切なさが滲んでいることに、私はまだ気づけなかった。


──その後、紫苑さんが病室を出ていくと、すぐに賑やかな声が聞こえてきた。


「天音ちゃん!!」

扉が勢いよく開き、絢華さん、凛子さん、一鉄さん、桔梗さん、煌さんが飛び込んでくる。

一鉄さんと凛子は怪我だらけで、包帯が痛々しかった。

「よく頑張ったな!」

一鉄さんが豪快に笑い、凛子さんは泣きそうな顔で「無事でよかった……!」と呟く。


絢華さんは「まったく、無茶しすぎよ」と呆れながらも、優しく頭を撫でてくれた。

桔梗さんは腕を組み、「まぁ……今回は認めてあげるわ」とそっぽを向き、

煌さんは「……お疲れさま」と小さく微笑んだ。


(……皆……来てくれた……)


胸が熱くなる。


守りたかった人たちが、今ここにいる。

生きて、笑って、泣いてくれる。

それが、こんなにも嬉しいなんて……。


(私……もっと強くなりたい……)


そう思った瞬間、またあの声が、微かに耳の奥で響いた。


《……私は……私を……超えていけ……》


(……私……?)


でもその声に返事をする前に、皆の笑い声に包まれて、私はそっと目を閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ