第22話 足止めの決意──仲間を守るために
大型堕天使が一歩踏み出すたび、地面が揺れた。
崩れた瓦礫が転がり、足元が不安定になる。
(っ……油断したら、転ぶ……!)
私は生存者の女性と子供の手を握り締め、必死に足を動かした⸺。
けれど、疲弊した二人を引っ張り、走り続けるには限界がある。
私達のスピードは次第に衰退していった……。
背後で、腐った羽根が風を切る音が響く。
「ギャアアアアアアッ!!」
咆哮が空気を震わせ、肺の奥まで震動が届いた。
(近い……すぐそこまで……殺される……!)
背後から感じる瘴気が、首筋を撫でるように冷たかった。
「クソッ……このままじゃ追いつかれる……!」
一鉄さんが振り返り、大型堕天使を睨みつける。
そして、凛子さんと私に叫んだ⸺。
「お前ら……先に行け!!」
「え……!?」
「ここは俺が足止めする!!」
私は走る足を止めた。
「ダメですっ!!一鉄さんも一緒に──」
「無理だ!!このままじゃ全員共倒れだ!!」
一鉄さんの怒号が、私の胸を撃ち抜いた。
巨大な影が近づくたび、地面が軋む。
瓦礫が崩れ、コンクリートの粉塵が舞い上がる。
「でも……でも……!」
「天音……!!」
凛子さんが私の肩を掴んだ。
その手は震えていた……。
「……一鉄の判断は正しい……っ……今は、生存者を守る事が最優先……!」
「……っ……」
悔しくて、悲しくて、胸が張り裂けそうだった。
だけど──。
一鉄さんは、眩しいほどの笑顔で笑った⸺。
「大丈夫だ……すぐ追いつく!そう簡単にはやられるかよっ!……」
拳を鳴らし、巨大な堕天使に向かって踏み込む。
その背中が、恐ろしく大きく見えた。
「行けっ!!走れっ!!!!」
「……っ……」
私は唇を噛み締めた……。
(ごめんなさい……一鉄さん……)
「行くわよ天音!!」
凛子さんが私の腕を引き、再び生存者と共に走り出す。
拳を鳴らし、巨大な堕天使に向かって踏み込む。
瓦礫を踏み砕きながら前へ進むその背中が、恐ろしく大きく、そしてどこか頼もしく見えた。
そして次の瞬間、鉄骨を砕くような轟音と、一鉄さんの咆哮が響く⸺。
「おおおおおおおおっ!!」
涙が滲む……。
視界が涙でぼやける……。
それでも走り続けた。
一鉄の覚悟を無駄にしない為に……。
(私が……もっと強ければ……っ……!)
荒廃した街を、私たちはただひたすら走り続けた。
(絶対に……戻りますから……一鉄さんどうか!……無事で!)




