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第20話 迫る巨影──生存者救出任務

堕天使たちの咆哮が、荒廃した街に響き渡る。

私は荒い息を吐きながら刀を構える。

瘴気に蝕まれた空気が喉を灼くように痛い。


「天音っ、来るぞ!!」

一鉄さんの怒号と同時に、腐った羽根を広げた堕天使が私に飛びかかってきた。

(来る……!)

刀を握り締め、私は迎撃態勢に入る。

「……マ……ママ……」

その堕天使は、腐敗した喉から掠れる声でそう呟いた。

(っ……やめて……!)

堕天使の言葉を聞くと、まるで全身の力が抜けるように、思うように刀が振れない……。

でも──

(今は……考えてる場合じゃない……任務に集中しないと……!)

「はぁあああっ!!」


私は刀を握り直し、一気に振り抜く⸺。

勢いのまま堕天使の腹部を斬り裂く。

黒い血と腐臭が周囲に広がった。

「マ……ママ……」


倒れた堕天使が、最後にそう呟き崩れ落ちる。

聞き取れないほど小さな声だったが、確かに聞こえた。

まるで、子供が母親を求めるかのような声……。

(私は……母なんかじゃない……今は……戦うんだ……!)


「天音!!まだ気を抜くな!!」

一鉄さんが堕天使を殴り飛ばし、瓦礫を砕く音が響く。

凛子さんは槍を構えながら癒しの結界を張り、私の傷を淡く癒してくれた。


「ありがとう……ございます……」


「お礼は後!!早く生存者を探すわよ!!」

その言葉に私はハッとして顔を上げる。

周囲を見渡すと、崩れかけたビルの地下駐車場の奥で微かに動く影が見えた。

「あそこ……!」


私は駆け寄り、瓦礫をどける。

「だ、大丈夫ですか!?」

そこには血まみれになりながらも必死に震えている中年女性と、小さな男の子がいた。

「お、おねがい……助けて……」

女性が涙を流しながら訴える。

私は頷き、彼女の手を握った。

「大丈夫です……私たちが守ります!」

一鉄さんが二人を抱えるようにして立ち上がる。

「よし、急ぐぞ!このまま脱出──」


その瞬間。

ズゥゥゥン……ッ

地鳴りのような重低音が街全体に響き渡った。

身体の奥から響く重低音⸺。

「な……に……?」

ビルの影⸺。

そこに、ビルの三階部分に届くほどの巨体が、ゆっくりとこちらを見下ろしていた。


腐り落ちた黒い翼を広げ、頭には冠のように湾曲した角を生やしている。

その身から溢れ出る瘴気は、空気を震わせ、血の匂いと腐臭が入り混じった異様な匂いが鼻を突いた。

その瞳は赤黒く輝き、ただ立っているだけで全身が粟立つような圧力を放っている。


「っ……なに……あれ?……」

私は思わず声を漏らした。


凛子さんが顔を強張らせ、槍を握り締める。

一鉄さんも、珍しく笑みを消して大型堕天使を睨みつけた。


「……前に一度戦ったことがある……

あれは……普通の堕天使とは比べものにならねぇ……!」

「ええ……全員で戦っても互角だった……」

二人の言葉に、私の背筋を冷たいものが走る。


(そんな……二人でも……)

大型堕天使の赤黒い瞳が、生存者と私たちを真っ直ぐに射抜いていた。

腐りきった翼を広げた瞬間、街全体を揺るがす咆哮が轟く。

「ギャアアアアアアアアアッ!!」

大型堕天使の咆哮に、ビルのガラスにヒビが入る⸺。

私も思わず耳を塞ぐが、それすら意味がなく、

鼓膜のさらに奥まで響くのを感じた。

その声だけで肺が潰されそうになる。

足が震え、恐怖で心が潰れそうになる。

でも⸺。

(守らなきゃ……私が……私たちが……!)


刀を握る手に力を込め、私は震える膝を押さえつけた。


(私は……逃げない……!)


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