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第19話 血戦の街──守る者として

堕天使たちが一斉に咆哮を上げた瞬間、私は反射的に刀を構える。

(来る──!)


血のように赤黒い瞳が、憎悪と飢えで爛々と輝かせながら、一斉に向かってくる。

前衛に立つ一鉄さんが拳を構え、踏み込みと同時に地面を砕くほどの衝撃で突進する。

「邪魔だあああッ!!」

一鉄さんの拳が堕天使の顔面を抉り、そのまま地面に叩きつけた。腐った羽がちぎれ、黒い血が地面を汚す。


「天音、右よ!」

凛子さんの声に、私は瞬時に右へ回避した。

寸前まで立っていた場所を、堕天使の巨大な腕が薙ぎ払う。

(危ない……大丈夫……私は私の出来る事をやる……)

私は地を蹴り、堕天使の懐に飛び込んだ⸺。

刀を握る指先が白くなるほど力を込める。

「──はぁっ!!」

刃が腐敗した胴体を斬り裂き、黒い血が私の頬に飛び散る。

鼻を突く腐臭に吐き気が込み上げたが、堪える……。

「まだだッ!」

一鉄さんの叫び声で振り返ると、別の堕天使が私に腕を振り下ろしてくる。

私は刀を横に構え、衝撃を受け流しながら足を滑らせるように回避する。

(落ち着いて……訓練通りに……)

胸の奥で紫苑さんの言葉が蘇る。

任務前に言われた言葉……。

──恐怖を殺せ。生きたいなら、刀に全てを乗せろ。


(私は……八咫烏……!)

私は刀を握り直し、地を蹴った。

堕天使の腕を踏み台にして跳躍、腐った羽根の根元めがけて刃を振り抜く。

「っ──!」

刃が肉を裂き、悲鳴と共に堕天使が崩れ落ちた。

その瞬間、凛子さんの癒しの結界が淡く輝き、私の疲弊した体力が僅かに戻る。


「ありがとうございます、凛子さん……!」


「お礼は後よ!!集中して!」

凛子さんが別の堕天使を槍で突き刺し、毒のような黒い血を浴びながらも表情一つ変えなかった。

「全然数が減らねぇ……!」

一鉄さんが地面を砕きながら堕天使を叩き伏せる。

だがその背後から別の堕天使が迫るのを、私は見逃さなかった。


「一鉄さんっ!!」

私は駆け出し、刀を逆手に構えて跳び上がる。

堕天使の背後に回り込み、首筋を一閃した。

「ギャアアアアア……ッ!」

悲鳴と共に堕天使が崩れ落ち、一鉄さんが振り返って笑った。


「助かったぜ……やるじゃねぇか、天音!」

「まだ来ます……!」

息が荒く、心臓が痛いほど脈打つ。

でも──足は止まらなかった。


(私は……守る。私が……変えるんだ……!)


荒廃した街に響く咆哮と悲鳴、そして血と腐臭。

だけど、その中で私は確かに生きていた。


──刀を握り、仲間と共に戦う。

それが今の私が此処にいる理由だった。


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