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第18話 母じゃない──八咫烏として

堕天使の猛攻も収まり、荒廃した街に、再び静寂が訪れた。


私は焼けるように痛む頬を押さえながら、荒い息を吐く⸺。

何度深呼吸しても心のざわめきは落ち着かない。

堕天使を倒したはずなのに、達成感より何とも言えない悲しみが胸を締め付けて離さない。


(……あの堕天使私を見て母って言った……? 私が……?)


刀を握る手に力が入る。

痛みよりも、あの声の残響が私の心を支配していた。

(……違う……そんな訳ない……私は……)


「天音っ!」

振り返ると、一鉄さんが血の気の引いた顔で走り寄ってきた。

凛子さんもすぐに駆け寄り、私の頬を見て顔を歪める。

「……酷い火傷……痛むでしょう?」

「大丈夫です……私は……」


声が掠れた……。

痛みで涙が滲むけど、それ以上に胸の奥のざわつきが私を苦しめる。

(あれは……何かの間違いだ……あんな……腐った怪物が……私を母なんて……)


「無理しないで、治療するね」


凛子さんが癒しの結界を展開し、頬に淡い光が差し込んだ⸺。

少しだけ痛みが和らぎ、呼吸が楽になる。

肺から取り込んだ空気が全身をかけ巡る。

「ありがとう……ございます……」


一鉄さんが険しい目で周囲を警戒する。

「……まだ終わっちゃいねぇ、行くぞ!生存者反応が北側の崩落ビルで確認されてる。」

私は小さく頷き、立ち上がる⸺。

膝に残る震えを押さえつけ、刀を握り直した。

(私は……八咫烏……母なんかじゃない……ただの聞き間違い……私は……世界を変えるんだ……!)


三人で崩れた街を駆け抜ける⸺。

廃墟の隙間から、無数の黒い影が蠢くのが見えた。

「……あれは……」

凛子さんが息を呑む。

瘴気の中から現れたのは、先程と同じ堕天使……いや、それ以上の数。

五体、十体……数え切れない程の堕天使が、血のように赤黒い瞳を光らせていた。

「数が多すぎる……」

「ビビるなよ、天音……」

一鉄さんが拳を握り、笑った。

「ここを抜けりゃ、生存者はすぐだ。行くぞ!!」

「……はい!」

「そうね、一刻も早く生存者を見つけなきゃ……」

震える足に力を込めた。

恐怖も痛みも、不安も全部、刀に乗せる。


(私は……戦う……!私は……私だ!!)


堕天使たちが一斉に咆哮を上げ、私たちに向かって飛びかかってきた⸺。


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