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第106話 天使たちの沈黙

神界の朝は、どこまでも澄んでいるはずだった。

昨日の緊張感が嘘のように澄み渡っている。

けれど、訓練場に足を踏み入れた瞬間、胸の奥がざわつくのを感じた。


(……あの鎧……昨日の夜から引っかかっている違和感……やっぱり、ただの装いじゃない……)


目の前には、鎧に身を包んだ天使たちがずらりと並んでいた。

整列した姿はまるで機械のようにまっすぐで、表情のひとつも読み取れない。

冷たい光を反射する鎧の下に、人の気配はあるはずなのに――まるで魂が抜けた人形のようだった。


「……あの、頭の鎧を取ってもらえますか……?」

思わず声に出す。

でも、天使たちは無反応だった。動く気配すらない。


(……やっぱり……ただの装いなんかじゃない……)

胸の奥がぎゅっと締めつけられる。違和感が、恐怖に変わりかけていた。


仕方なく、自分の手で鎧に触れ、取り外そうとしたその瞬間――


「天禰」


背後から響く声に思わず手を止める。

振り返ると、先代最高神が立っていた。静かで、しかし確実に私を押さえつける圧を放っている。

その瞳は深く澄んでいるのに、どこか底知れない闇を含んでいる。


(……あっ……見られた……!)

慌てて手を引き、無理やり微笑みを作る。


「な、なんでもありません……」


でも、胸の奥ではわかっていた。

彼は、私を天使たちから引き離そうとしている。

その意図は明らかで、彼の動きには絶対に逆らえない力が伴っていた。


(……でも、私は知りたい……)

胸の奥が熱くなる。恐怖と好奇心が混ざり合い、手が震える。

何としても、この天使たちの正体を突き止める。

たとえ誰に見られようと、たとえ何が起きようと。


深く息を吸い、鎧をまとった天使たちを改めて見渡す。

彼らの動きは機械的で、感情の欠片もない。

でも――この無表情の下に、真実が隠されているはずだ。


(……絶対に……見抜く……!)

拳を軽く握りしめ、爪が掌に食い込む感覚を確かめる。

先代最高神の存在が重くのしかかる。

その視線は、まるで私の心の奥を覗き込み、私の意志を試しているようだった。


(……この人は……私を守ろうとしている……の? それとも、封じようとしている……?)

胸の奥で葛藤が渦巻く。

恐怖と疑念、知りたいという欲求と、従わざるを得ない現実。

心の中で何度も問いかけ、何度も答えを否定する。


――そして、私はまだ知らない。

この静かな訓練場の奥で、恐ろしい計画が密かに再び動き出していることを。

整列した天使たちは、これから起こる恐ろしい未来の最前線に立つ存在なのだということを。

そして、その未来は、私の決意だけでは止められないものになるということを。


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