第101話 神兵計画、開かれし真実
黄金の光が収まった瞬間、息を呑むほどの光景が広がった。
果てしなく続く白亜の街並み。
空には幾つもの神殿が浮かび、そこから降り注ぐ光が街を金色に染める。
澄み切った風が髪を揺らし、遠くで鈴のような音が響く。
(……ここが……天界……)
立ち尽くしたまま見惚れていると、隣に立つ天禰が静かに告げる。
『ここから語るのは、私が最高神として生きた最後の時代……そして、あなたがこの世界に生まれ落ちることになった理由』
その言葉と同時に、視界が揺らいだ。
目の前にもう一人の自分――天禰が立っていた。
長い白金の髪、深く澄んだ瞳。
その姿は、今の自分よりも少し大人びていて、背筋が凛と伸びている。
(……私……?)
光が弾け、天音の視界が“天禰”と重なる。
次の瞬間、自分が白い広間に立っている感覚が押し寄せた。
高い天井、金色の柱、並ぶ神々の視線。
その中心、玉座に座る一人の青年がゆっくりと目を開ける。
長い銀髪が肩に流れ、冷たい光を宿した瞳がこちらを見た。
その姿は、美しく、そしてどこか人間離れした威厳を放っていた。
(この人は……誰……?)
『彼は、先代最高神。私が一番憎い相手』
天禰の声が心の奥に響く。
その瞬間、胸がずきりと痛んだ。
懐かしさと、どうしようもない寂しさが同時に込み上げる。
「――これより、神兵計画に関する最終会議を始める」
先代最高神の声が広間に落ちる。
重い沈黙が支配する。
神々が一斉に口をつぐむ中、天禰――いや、今の自分が一歩前に進んだ。
心臓が高鳴る。
足元の大理石に、きっぱりとした足音が響く。
『……神兵計画を、即刻中止してください』
その言葉が広間を震わせた。
神々がざわめき、空気が一気に張り詰める。
先代最高神がゆっくりと玉座から立ち上がった。
「天禰、この計画は神界維持に必要不可欠だ……これ以上神界が傾けば天禰お前には柱となってもらう他ない」
『分かっています。それでも、人間を兵器として扱うのは間違っている』
天禰の声は震えていなかった。
その瞳には、ただ強い意志だけが宿っていた。
(……私、こんな顔をしていたんだ……)
天音は心の奥で呟く。
同時に胸の奥で熱いものが広がる。
広間の空気がさらに重くなる。
先代最高神の瞳に、ほんの一瞬だけ哀しみが宿った気がした。
「……天禰」
低い声が落ちる。
――物語が動き出す瞬間だった。




