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3人と1体の物語  作者: 端くれのぬん
第1章「前置き」
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記憶と声

初心者が書きます

第1話「過去」


俺は昔から祖父母が住むド田舎の村が好きだった。年に数回帰省していて、都会の人混みから開放された気分を楽しんでいた。


俺はこの村に住む「女の子」と仲良くしていた。ある日、いつものように女の子の家に遊びに行くと、女の子が「面白いところ連れてってあげる。」といい、そのまま半ば強引に着いて行かされた。


だが、向かっている先は明らかに草木が生い茂り、人が通る道ではなかった。その時不意に、祖母の話を思い出した。

「いいか?この村には神様が祀られた祠がある。ここの神様は絶対に近づいてはならない。そして、知ってしまっても絶対に人に話してはならないよ。広めてはならない」というものだ。

俺はもしかしたらと思ったが、俺はついて行くことにした。子供特有の好奇心と行動力だ。


そして進んでいくと、しめ縄が落ちていた。女の子はそれをまたいで進んで行ったので、急いで追いかけた。そして目に付いたのは、石像だった。そこには文字が刻まれており、その文字を読んだら、この世のものとは思えない寒気と、「読んだね?」と女性と男性が同時に喋ったような声が聞こえた。俺は女の子を見た。魂が抜けたカカシのような状態だった。俺は焦る。


だがその時。「何してる」という老人の声が聞こえた。それと同時に寒気はなくなり、女の子も意識が戻ったのか、「あれ?あれ?」と、焦っていた。その後は老人と一緒に村に戻った。


この時には日が暮れており、急いで家に戻ろうとしたが、女の子の両親と俺の両親が前から歩いてきて、「村長の家へ行くぞ」とだけ言い、俺らの手を引っ張ってきた。俺は戸惑いながらも、村長の家へ向かった。村長は、「話は聞いたよ。何があったか、言ってくれるかい?」と優しく言ってくれた。


俺はあったことを正直に話した。村長は俺が話している間。笑顔で頷いてくれていた。だが、「読んだね?って女性と男性が混ざった声が…」って言おうとした時。村長は下を向き、真顔になった。だがすぐに元に戻った。一通り話した後。村長は「いいかい?このことは絶対に他の人に話してはならない。もうあいつを縛る力はない。封印はとかれてしまった」とだけ言い、両親と一緒に村から出て、帰るように言われた。両親はなにも反論せず、家に帰った。最後の最後、女の子を見た。だけど今は顔や声、容姿すら覚えてない。




第2話「現在」


俺は20歳になるまでこの事を忘れていた。だがある日、いつも通り仕事から帰り、ベットに横たわった時、「*****」と、聞き取れない声が聞こえた。あの女性と男性の混ざった声だ。俺はその後気絶したようだ。気づいたら朝だった。その日は仕事を休み、実家に電話した。「祖父母の家がある○○村は何処だっけ?」と聞いた。何となく、生きている保証のない村長に助けて欲しかったからだ。だが両親は「○○村?何処よそこ」と言われた。俺は混乱した「え?祖父母のいた○○村だよ!?」って言っても、「お母さんは認知症で施設に、お父さんは2年前に死んじゃったでしょ?あんた葬式に出てたじゃない」と言われた。俺は「そうだったそうだった」といい、電話を切った。


俺はパニックになり、つい中学からの親友に話してしまった。親友は「そうか、それは大変だったな。で?行くの?そこ。ついてくよ」と言ってくれた。「なんで信じてくれんだ?」といったら「だってそんな数時間もペラペラと創作話を話せるか?もし話せてたらお前は詐欺師目指すべきだよ」と言われた。俺は親友が親友で良かったと思った。俺はこいつと○○村へ行く事にした。何とかその村がある山だけは思い出せたので、そこへ行けば村にたどり着くと思ったからだ。俺は親友とバイクでそこへ向かった。


だが、山に入ってすぐ村につくはずなのに、隣町へ着いてしまった。俺は混乱した。親友は「道を間違えた訳では無さそうだな」と言った。その言葉は余計俺を混乱させた。


とりあえずその日はビジネスホテルに泊まり、家に帰った。その後市役所に向かい、○○村について聞きに行った。役所の人が言うには、「○○村というものはありませんが、この山には約100年前村がひとつあった」と言った。俺はその資料を持って帰って家族にみせた。


だけど家族は「100年前なんてありえないに決まってる」と言った。ごもっともだ。しかし、毎夜毎夜、あの声が聞こえていて精神がヘラっていた俺を察したのか、両親は信用出来る寺にお祓いして貰うことを提案した。俺はそれを受け入れ、その寺へ向かった。


寺に着いた俺を出迎えたのは昔からお世話になっているお坊さんだった。「話は聞いています。早速中へ」と言われ、寺の中へ入った。改めてお坊さんにこれまでのことを話した。話し終えた後にお坊さんは「そうですか、恐らくそれは神様などではありません。直ちにお祓いを始めましょう」と言い。手際よくお祓いの準備がされ、行われた。


念仏?というのだろうか。俺は昔からこういうのには興味がなかったから知らなかった。信用できると思っていたのは親だけで、俺はあまり信用していなかった。だが、こういうものはちゃんと効果があったらしい。念仏を聞いてすぐに激しい頭痛等の体調不良に見舞われた。それと同時に頭の中から「うるさい」や「やめろ」などという声が聞こえた。聞き馴染みのあるアイツの声だ。お坊さんはこの事を察したのか、より激しく唱え始めた。俺は体調不良に耐えきれず、そのまま気絶したらしい。気がついた頃には念仏は終わっていた。


お坊さんはお茶を出し「お祓いは無事終わりましたが、完全に祓いきれてません。力を封じ込めただけです。いずれまた同じ事が起こります。恐らく1ヶ月も持ちません。ですが、このお守りを枕元に置いて寝てください。1回なら守れると思います。」と言い、お守りもくれた言。その後はそのまま帰り、ベットに横になった。驚くべき事に、アイツの声は聞こえない。こういうものは信じた方がいいと思えた事だ。


その日からしばらくは聞こえなかったが、代わりに夢を見るようになった。それを一言日記として残そうと思う。




第3話「夢」


1回目、周りは真っ暗だ。目の前には人がいる。どこが懐かしい人影だった。


2回目、同じく周りは真っ暗。同じく目の前には人。だが昨日より近づいてきているようだった。このまま近づいてくれれば、2回分近づいてくれれば顔が分かりそうだ。


3回目、同じく周りは真っ暗で人がいる。順調に近づいてきている。


4回目、同じく周りは真っ暗で人がいる。顔も予定通り見れた。が、顔は見れなかった。何を言っているか分からないと思うが、顔があるのに顔が分からなかった。認識できなかったの方が正しいのだろうか。しばらく思い出そうとよく顔を見ていた。すると、後ろから、寒気がした。子供の頃のあの感触と似ていた。俺は思い出した。今日で1ヶ月が過ぎていたのだ。言われてみれば最初からこの夢は涼しかった。なぜ気づけなかったのだろうか、きっと顔を見るのに必死だったからだろう。アイツはズッ、ズッ、っと何かを引きづりながら確実に近づいてきていた。もう真後ろに来たであろう時に、目が覚めた。


まだ真夜中だった。汗が大量に出ていて気持ちが悪かった。目が覚めて少し経つと、あの声がした「また邪魔を」と言ったように聞こえた。俺は枕元を確認した。お守りがズタズタに引き裂かれていた。やはりこういうものは信じた方がいいな。と思うと同時に、次アイツに狙われたら守るものがない。という恐怖でその日は寝れなかった。夜が明け、寺が空いたであろう時間になり、寺に向かったが、その日は親や、色んな人が来ていた。「週末だからか?」と考えたが、親に「お坊さんが心臓麻痺で亡くなった」と聞いた。俺は罪悪感を感じたと同時に、アイツの力を思い知らされた。


俺はどうすればいいのか、何をすれば救われるのか、混乱と恐怖で頭がいっぱいだ。


俺は混乱し、親友に全てを話した。親友は「ワロタ、お疲れさん。俺は葬式の予約だけ取っといてやるよ」と言った。シャレにならないと反論しようとした時に、「そんな事よりも、俺なりに市役所とか図書館やらに行って調べたんだよ。んで、有益な情報が市役所から届きましてね」と言った。こんな時にも冗談を言ってくる所を除けば、改めて親友で良かったと思う。そして親友が得た情報によると、「両親がその村に住んでいた」という人が隣町に住んでいるというものだ。親友の有能さに感激しながら俺はその住所へ向かった。




第4話「老婆」


書いてある住所に着き、「ごめん下さい」と言うと「はいはい、ちょっと待ってねぇ」と、老婆の声がした。老婆はドアを開け、「奥へどうぞ」といい、俺を家の中へ招き入れた。そのまま奥へ進み、上座に座った後、老婆は下座に座った。仕事柄、こういうものにはどんな時でも意識してしまうんだなと思っていると、老婆が「早速、村について話そうか」と言ってきた。


どうやらやはり村はあったそうだその村では老婆、老婆の両親、そして、老婆の娘が暮らしていたそうだ。自然が豊かで、ド田舎の割には子供が遊べる場所もあり、ご近所との関係も良く、今思えば、人生で一番心地が良い時間だったと言う。俺はその話を聞き、「確かに、私の記憶でもそんな感じだったと思います」と返した。子供はド田舎は遊べるものが限られててあまり楽しくないと聞いていたが、あの村は公園やらなんやらが充実していたからだ。


老婆はその後はスイッチが入ってしまったのか、昔の話をずっと話していた。その中に気になる話があった。それは「あの時はねぇ春夏秋冬、4ヶ月に1回その時に取れた一番貴重なものを神様に捧げて、平穏を祈ってたのよぉ、あ!そういえば私が産まれる10数年前まで、人間を捧げてたんだって!怖いわよねぇ、子供の頃なんてなーんも覚えちゃないが、この話だけは妙に覚えておるのよねぇ。生贄に選ばれた人が神の元へ1人で行き、捧げられて。でもね、その人間を生贄にする習慣が終わるきっかけがあったんだって、それがね、生贄に選ばれた人が走って戻ってきたんだって、そんでなんて言ったと思う?「あれは神なんかじゃない!」と言ったのよ、で、その勢いに負けて皆が神様の所へ行ったら、この世のものとは思えないやつが、いて、恐怖で反射的に攻撃したんだと、だけど偶然それがいい所に入ったおかげで、アイツを瀕死にして、その時の村長さんが封印したんだってさ、殺しちゃえばよかったのにね。で、村長さんは「今は封印が解けるその日までこのことは広めてはならぬ」と言ったから皆黙ってるんだと、今思えば両親はなんで私に話したんだろうね。」


…思いもよらぬ事だった。俺は知らず知らずのうちに虎のしっぽを踏んだんだと。あの時殺してくれればこんなことにはならなかったのに、とも思ったが、過去の人間の行動を責めてる暇は無い。俺はアイツの正体を知った。それ意外に考えることは無い。


だが、何度考えてもおかしい。なんで俺が100年前の事を知っているんだ。何か理由があるはずなのに、どうやっても説明がつかない。とりあえず俺はその日のうちに帰る事にした。車に乗り、バックミラーを見た時の老婆の申し訳なさそう顔が、余計に俺を不安にさせた


俺は寝ることに恐怖し、徹夜をしたが、やはり人間は寝なければ生きていけない。どれほどの時間が経っただろうか、今までの疲労も含めて長い間寝ていたようだが、何故か夢は見なかった。アイツはなかなか嫌な奴だった。




第5話「覚悟」


俺は行動することにした。今止まっていても何も変わらない事を知っているから。どう行動しようかと考えていた時、あることに気づいた。村は確かにたどり着かなかったが、100年前には存在した。山をしらみ潰しに探せば村に辿り着けるはずだと。俺は登山の準備をし、出発した。


山に入ってすぐ分岐点があり、片方は村へ、片方は隣町へ繋がっており、村への道は入り組んでいて、道を間違えてしまうと隣町へ行ってしまう事を思い出すことができた。よく両親が道を間違えて隣町へ行っていたからだ。俺はあの時忘れていたから自然と道を間違え、隣町へ行ってしまったんだろう。


俺は道を進んで行った。すると凄く見覚えのある道を見つけた。そうだ、そういうことだったんだ。今思えば当たり前のことだ。もう使うことがない道は整備させているわけが無い。村への道は草木で完全に覆われていたのだ。念の為、鎌を持っていたので、草木を切りながら進むことが出来た。


どれほどの時間が経っただろうか。もう時間感覚も失った。その時、光が見えた。また少し進むと、見覚えのある大草原が広がっていた。見つけた。ようやく見つけることが出来た。俺はそのまま村へ向かった。


村を歩いて暫くは思い出に浸っていたが、違和感を感じていた。だが、この違和感はほんの些細な物であり、思い出に浸っていた事もあって、考えることもしなかった。気がつくとあの石像がある道の前に立っていた。これが運命ってものなのかもしれない。


俺はまた草木をかき分けながら進む、そうすると、あの忌々しい石像を見つけた。あの時見た以上にボロボロになっていた。でも文字は読めた。その時後悔と絶望を感じた。読んでしまった。俺は覚悟した。……寒気はしなかった。本当にアイツは嫌な奴だ。


帰り道は当たり前だが比較的楽だった。その後も歩き続けたら、道路に出ることが出来た。これまで以上に達成感を感じたことは仕事で大活躍した以来だろう。だが既に日が落ちかけているので、あの時泊まったビジネスホテルで泊まる事にし、翌日、家に帰ることが出来た。


家に帰った俺は村で歩いてる時に写真を撮っていたので、それを持って親の所へ向かった。俺は今でも親を疑っている。これを見れば少しでも動揺するはずと考えた。ここまで来た俺の精神力はとても強くなっており、行動力も凄くなっていたため、その日のうちに写真を持って実家へ帰った。




第6話「真実」


実家に帰って出迎えられたが、単刀直入に写真を見せた。親は明らかに動揺した。これを証拠に詰めに詰めたら両親は「そうだな。真実を話そう。」と、諦めたようだった。


真実は実に軽いものだった。本当に軽いものだった。どうやらあの老婆、親友、両親の4人で結託し、最初から存在しなかったものとして扱おうとしていたらしい。どうやらこれは村長に頼まれたことらしく、「存在を忘れることが一番の対処法じゃ、これ以外は使いたくない。多少無理矢理でもこうするしかあるめぇ」と言われたらしい。事実祖父の葬式には俺は出ていなく、祖母は俺に言っていなかっただけで、実家の近くに住んでいるらしい。


「じゃあアイツは」と言う前に両親は「忘れろ。アイツは忘れられる事が一番恐れている事。だからあいつは夢に出てくる。」と言ってきた。俺は「他にもやりようがあっただろ」っと思っていたが、あえて言わないことにした。とりあえずそれから1週間ほど実家に帰省し、家に帰った。


これが3年前の出来事である。何故この話を今しているのか、疑問に思うだろう。それは、3年間一度もアイツが現れていないからだ。今思えば徹夜を続けたあの日からずっと見ていない。


こうやって文にしている時に考えたのだが、村長は「これ以外は使いたくない」と言っていた。他に呪いを解く方法があったのか、そう思い立った時には既に行動していた。向かった先は村長の家系だ。あの時俺は両親に色々聞いていた。その中に「村長の家族は元気か」と聞いていた。俺があの日両親と帰ってすぐ村民はあの土地から離れる事を村長に命じられたらしい。


村長の家族の家に行くと、村長の息子が出迎えてくれたらしい。息子は昔から村長に「恐らく○○家を名乗る人が来る。その時は暖かく出迎えてくれ、そして、答えれる質問はすべて答えてやってくれ」と言われていたらしく、暖かく出迎えられた。


俺は3時間ほど「アイツが話しかけてこない。」「夢に出てこない。」「呪いは解かれたのか?」「どうやって?」と質問した。息子は全て話してくれた。「はい、事実貴方に対しては呪いは解かれました。貴方は自由の身です。もう飽きて自分を1番知っている彼女に行っているでしょう」と返してきた。俺はその人が誰なのか聞こうとしたが、息子の無言の圧に負け、聞くことが出来なかった。


彼女というのは恐らく「女の子」の事だろう。苦肉の策とはいえ、なんであの子を利用したのか、頭がどうかしている息子だった。いや、俺のせいか。移した訳ではなく、移って行っただけだからな。俺は罪悪感に襲われている。罪滅ぼしに今、これを書いている。これを読んだ人はきっとあの子と同じくらいアイツを知ることになっただろう。

愚作

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