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一日目

俺は。

独身、32歳のサラリーマン。


ごくごく。

普通で。


それは、本人が思っているだけかもしれないが。


平日の夜。

ネット接続のアクションゲームくらいが趣味の。


所謂。

オタクに近い。


冴えない。

モブキャラだ。


取り柄と言えば。

ゲーム中の裏ワザが上手いだけで。


自慢できるものは。

何もない・・・。


いや。

待ってくれ!


一つだけ。

そう、一つだけあるよ。


それは。

上手いカレーを作れること。


そう。

それだけなのでした。


※※※※※※※※※※※※※※※


そう。

威張れるものじゃ無い。


ルーを。

香辛料からなんて。


市販のものを。

だけど、二種類のルーを使う。


これは。

お袋から教わったもの。


『二種類のルーを使うとコクがでるの』

確かに、母さんのカレーは大好きだった。


だから。

今でも、マネをしている。


野菜は。

普通に、ぶつ切りにして。


肉も。

その時の気分で。


大抵は。

牛肉。


リッチな時は。

国産牛だけど。


オージービーフでも全然、OK。


土曜日の遅く起きた昼下がり。

寝ぼけ眼で刻んで、鍋にぶち込む。


弱火で。

コトコト煮ている間に。


軽く。

ジョギング。


ストレスが溜まった身体から。

妙に濃い汗が噴き出していく。


30分ほどで。

アパートに戻ると。


カレーのスパイシーな香りが充満していた。


火事は怖いけど。

短い時間だから、許してね。


一旦。

火を止めて。


シャワーを浴びる。


炊飯器のアラームが鳴った。

パカンと開けると、もわっと白い湯気。


それだけで。

俺のお腹は。


ぐぅーと、鳴るのでした。


※※※※※※※※※※※※※※※


パキンッ!


350mlビールのプルトップ。

世界で一番、心地良い音だと俺は思う。


ジュワっと出た泡ごと。

グラスに注ぎこむ。


溢れる程の泡を。

ジッと我慢して表面張力を信じる。


おぉ・・・。

CM並みの泡の盛り上がり。


寝覚め後とジョギングの渇きに喉が上下する。


ギョクギョク・・・。

ぷはぁー!


美味い。

美味すぎる!


一週間の疲れと共に。

喉元を過ぎ去っていく。


いやいや。

まだだ・・・。


まだ、なんだよぉ!


俺の中の。

小人達が騒ぐ。


震える指で。

スプーンを白い米の中に。


下からすくい上げるように。

茶色いルーを絡ませて。


引き寄せる。


う~ん。

スパイシーな香りごと。


口中に広がる旨味。


ギョクギョク・・・。

ぷはぁー!


ビールごと。

流し込んでいく。


そう。

休日の。


俺の楽しみ。


カレー、一日目。

至福の時が始まった瞬間だった。


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