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しょっぱい能力で滅ぼせ異世界  作者: 池金啓太
十八話「進む先に何があろうとも」

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0703:性欲を持て余す

「明日、発つか」


「はい。王立学院に行ってまいります」


 衣服を探し、準備を整え終えたところでアルヴィストは父であるヴィルクリフ王に報告に来ていた。


 その場にはジスカル老もいる。アルヴィストよりもやや後方にセレネイアも跪き頭を垂れていた。


「爺……ジスカル。セレネイア。アルヴィストのことを、よろしく頼むぞ」


「はい陛下。お任せください」


「お、お任せください!頑張ります!」


 アルヴィストと共に王立学院に行くのはジスカルとセレネイアだけだ。セレネイアが主にアルヴィストの世話をし、ジスカル老は魔法の教鞭を執る。


 メイレインが向かった時よりも手厚い状態なのも無理はないだろう。何せ彼女が向かった時は表向き王女であることを隠していた。


 しかしアルヴィストにそれは許されない。最初から王族としての入学を求められている。それは学院側からも、そして王族としての責務という意味でも。


「学院に行くことはお前にとっても大きな価値を見出すことになるだろう。王族としての務めを果たすことよりも、自らを高めることを目的とすると心得よ」


「はい。微力を尽くしたいと思います」


「何かあれば王都から使いを出す。そして、休みの時は戻ってきなさい」


 最後の言葉は王としてではなく父としての言葉だったのだろう。ほんの少しだけ優しくなった声音にアルヴィストは微笑んでから深く頭を下げる。


「時に陛下、一つお伺いしたいことが」


「なんだ?」


「その………………えっと…………」


「なんだ、申してみよ」


 個人的にものすごく言いにくい内容であるためにアルヴィストは何度か口ごもるが、これ以上黙っていても仕方がないと意を決する。


「学院に行く場合、僕と近しい年代の方々とお会いすることになると思います」


「であろうな。そこから交友関係を築いていけばいい。お前は同世代の友人は少なかったであろうからな」


「…………気になっているのはそこではなく……その……僕の将来の婚約者についてのことです」


「………………あぁ……」


 今まで国外の情勢の不安定さを理由に先延ばしになっていたが、さすがにそろそろ決めなければならない。


 本来王太子ともなればもっと幼いころから婚約者がいたって不思議ではないのだ。


「エカンダ皇国の状況的に非常に混乱していることから、エカンダ皇国との繋がりを強くするために国外から迎え入れるという考えもあります。しかし国内の地盤を固めるという考えも理解できます。陛下としてのお考えをまずお聞きしようと思いまして」


 王族というのは結婚そのものも政治的な価値のある行為となる。そのため軽々に決めることができなかったのも頷ける。


 しかし、これ以上先延ばしにすると問題が出てくる。


「僕だって男です。女性に興味はあります。それに、これ以上引き延ばしを続けると……その……男色の気があるのではと勘違いされる可能性が……」


「そ……れは……なるほど。それは、確かに問題か……」


「はい。僕普通に女の子が好きなので」


 王族が男色の気があるというのは国家として死活問題に近い。何せ王国には男児にしか継承権がない。イルクリスという弟がいるが、今は引きこもっているような状態だ。


 アルヴィストに後世を託すしかない状態で、そのアルヴィストに男色の気があるという噂が流されるのは非常に危険である。


「女好き……とまでは言いませんが、適切な距離と関係を築けるようにしたいと考えています。もしその中で魅力的な方がいれば選択肢に入るかと。しかしそれをしてもよいものか、迷っているのが現状です。なので陛下にまずはご意見をと」


「なるほど。事情は理解した。そうか、まぁそうだな。お前ももういい歳だ。そういう事の一つや二つを考えてもいい頃だというのは理解できる。むしろ今までそういう話をもっていかなかったこちらに非がある。許せ」


「いえ、情勢を見極めるのに時間がかかってしまうのは仕方のないことと理解しております。しかし、その……そろそろ、方針を決めていただければと」


 流石のアルヴィストもこれ以上待たされるというのは正直困る。


 アルヴィストも男だ。勇者としての使命云々があるのも間違いないのだが、体の成長に合わせて性的な欲求が増してきているのも事実。


 今まではとにかく屋外で戦いなどを行っていたために何とか気にせずにいられたのだが、さすがに学院の中で戦い続けるわけにはいかない。


 その様なことをしたら姉であるメイレインの二の舞だ。


 流石に姉弟そろって暴れん坊のイメージをつけるわけにはいかなかった。王家の沽券にかかわる問題だ。


 もっともメイレインの時点でだいぶ王家の名前に傷はついているかもしれないが、それはもう今更というものである。


 アルヴィストとしては少しでも王家の名前の修復に努めたいところだった。


 既に作られた伝説を少しでもましなものに変えるためにも、普通の学生として過ごすのがベストである。王族で普通の学生というのがそもそも無理があるのだが。


「ベン、実際のところアルヴィストの相手としてふさわしい者の想定はあるか?」


「はい。国内と国外それぞれ候補を何名か……とはいえ、国外の方は最新の情報が得られておりませんので、その点だけ少々不安もありますが」


「であれば、まずは国内を前提に話をしてやりなさい」


「はい。現状の候補に挙がっているのは侯爵家、伯爵家、子爵家からあげられています。皆アルヴィスト殿下と歳の近い女性のいる家となっております」


 国内の貴族たちの力関係を考えて、あえて貴族の最高位である公爵家を省いているのだろうということはわかる。


 とはいえ他の貴族家の全てを頭の中に入れられているわけではないために、アルヴィストからすれば誰でも同じようなものだった。


「近い年齢っていのは、具体的には?」


「前後五歳程度と考えています。殿下の御年を考えれば、その程度が妥当な線であるかと考えました」


 前後五歳。つまりは最大で二十歳の女性を、最小十歳の女の子を相手にするということになる。


 なんというか、幅が広い限りだが、そんな具体的な年齢の貴族の子供がいるのだろうかと疑問がある。


「ちなみにその年代の人たちって何人いるの?」


「かなり。具体的には……約八十名ほど」


「結構多いね!?」


「王家との婚姻は貴族にとっても大きな価値があります。後の発言力、領地内における政策の通しやすさ、今後の家の繁栄。それら全てに関わってくるのが王家との婚姻です。そのため、新たな王族が生まれる時、あるいはそれに近しい時に子を作るというのは貴族の中でも必然的な処世術の一つです」


「そういうものなの?じゃあ、王家との結婚の可能性を上げるために、子供を?」


 王家としての教育を受けたアルヴィストならばその必要性は理解できる話だ。王家との繋がりができれば貴族としてはかなり大きな発言力を得ることになる。


 さらに国政に関わる可能性もかなり上げられる。国の中枢とのパイプを作るというのはそれだけで大きな価値を持つ。


 だから子供を作る。その考えは理解できるが、アルヴィストの頭の中に残っている前世の倫理観がそれを拒絶していた。


「殿下はそういうお考えは嫌いかもしれませんが、これには良い点もあります。王家の人間を中心に近い世代が形成される。そして近い世代同士が婚姻を結び、また新しい世代を作っていくのです。世代間がバラバラであるよりは、近しい方がより後継を作りやすいという利点もあるのです」


「なるほどね……まぁ、理屈はいいや。で、近い世代がいるってことは……その人たちも学院に通っている人がいるってことだよね?」


「そうなります。特に殿下の御入学に合わせて、多くの貴族家の人間が入学することになるかと。メイレイン殿下の時と同じですね」


「そうなの?」


「はい。メイレイン殿下の際は貴族の御子息が大勢。まぁ……その……皆一様に、斬り伏せられたようですが」


 斬り伏せられたというのは、別に振られたとかそういう意味ではなく、そのままの意味なのだろう。


 可能ならばメイレインとの婚姻へとつなげられると考えて、多くの貴族の諸子たちが王立学院に入学したはずだ。


 王女と結婚出来れば貴族としてこれ以上ない栄誉。メイレインのような外見は美女の人物が嫁になればこれほど嬉しいこともないだろう。


 頭脳、剣術、技術、特殊な知識。ありとあらゆるものを武器にしてメイレインに対して好印象を与えようとした男子たちは、皆一様に斬り伏せられた。物理的に。


 何故メイレインが学院に通う男子全てを斬り伏せたのか理由も知りたかったが、なるほど男子たちはメイレインとの繋がりを得たくて皆挑んだのだ。


 どのような結果となろうとも、何かしらのつながりが得られればメイレインとの将来につながるかもしれないと考えたのだろう。


 結果は散々たるものだったようだが。


「姉上の相手をした貴族の子息たちは本当に哀れとしか言いようがありませんね……相手が悪すぎた……」


「仰る通りかと。しかし今度は殿下がそのお立場になられます。流石にメイレイン殿下のように全員を斬り伏せるようなことは避けていただければと」


「僕をなんだと思ってるのさ。流石の僕も女性を斬り伏せるなんてことしないよ。ただ一つさ、懸念というか……気になることがあるんだけど」


「なんでしょう?」


「僕くらいの年齢の貴族の女性って、どんなことをするの?」


「どんなこと……とは?」


「えっと……話題っていうか……そういうのが全然わからないんだよ。セレンみたいな平民の子だったらさ、なんとなくわかるんだ。けど貴族の同い年くらいの子たちって……今まで全然関わりなかったから」


 平民の子とのかかわりは多くあるというところは正直ツッコミどころではある。どれだけ城から抜け出していたのだという疑問もわくが、今問題なのはそこではない。


 相手との繋がりを作るには話題作りから。それは何も間違っていない。


 将来の婚約者になるかもしれない相手に対して何の話題も作れないというのは問題なのは間違いなかった。


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