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しょっぱい能力で滅ぼせ異世界  作者: 池金啓太
十七話「課題は多く、しかし先行きは明るく」

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0674:出会ってしまった

「マジか……マジか……やられちゃったよあいつ」


 遠巻きに亜巨人の様子を観察していた。そしてフィラツクという街を襲撃していた時、和平としては内心ガッツポーズすらしたほどだ。


 攻撃と合わせて快楽物質を与えることにより、攻撃がより苛烈になり、大きな被害を出すことが予想されていた。


 街を囲む防壁を破壊し、あともう少しで防壁内に入り込むことができるというところで、奇妙な一団が接触してきた。


「あの一団は何者でしょう?調べますか?」


「いや、あの挙動……なんか妙だった。あいつらには近づくな。いやな予感がする」


 それはこの世界で培った和平の独特の勘だった。そしてその勘は当たっている。和平が直接支配している魔物ではないために確信は持てなかったが、和平はその一団の行動と、その際の挙動を直接見たことでその違和感に気づけていた。


 まるで自らを囮にするようなその一団は、亜巨人の注意を引くと魔導師たちが攻撃を仕掛け始めた。


 その行動はある意味英雄的といえるだろう。しかし和平が気になったのはその英雄的行動ではない。


 魔法の一つだと思われるが、盾が宙に舞って亜巨人の攻撃を防いだ時だ。


 ただ防いだだけならばまだ理解もできた。空中に浮く盾がそれほど強く発動されていたのであれば納得ができた話だ。


 しかし、実際には亜巨人の攻撃は簡単に防がれ、むしろ逆に亜巨人の腕が弾かれるほどの防御効果を持っていた。


 一見するとただの盾が飛んでいるだけのように見えた。あの魔法を和平は知らない。ここにユニステラやスターなどの魔導師がいればその盾の異常さを指摘できただろう。


 しかし残念ながら和平にはあれに近づいてはいけないという予感しか得ることができなかった。


 だが、和平とてこの世界で魔王の代行を行っている人間だ。その可能性に気づくことができないほど間抜けではなかった。


「それに調べるまでもないかもな。あれほどの魔物を倒せる一団となると、この国でも限られる……となると……」


 確証はない。しかし状況証拠的にその可能性が非常に高いように感じられる。


 だからこそ、その後押しが欲しかった。


「クーラン、お前から見て、あの騎兵たちをどう見る?」


「かなりの練度であると思われます。少なくとも今まで見たことのある王国の兵の中でも上位に位置しているかと。あの小柄な人物を守るために、連動して動いていました。あのような動き、そう易々できるものではありません」


「ただの行商人でも傭兵でもないってことだ。そんでもって、そんな兵士たちに、あんな魔法を連発できる魔導師を引き連れられるあの小さいの……あれが何者かって話になってくるわけだけど」


 優秀な魔導師を複数連れ、一団の中にいた小柄な人物を守るように展開していた複数の騎兵たち。しかもその練度はこの国の兵たちの中ではかなり上位に入るものであるとクーランは判断した。


 和平のような戦術に明るくないものが見たとして、その技量の高さを正しく把握することはできなかっただろう。


 しかしクーランのように戦いに精通している戦闘特化型ホムンクルスのお墨付きがあるとなれば、その疑念は確信に変わりつつある。


「王国にいる優秀な魔導師……あの騎兵たちは護衛か?あの馬車に加え、護衛の練度……この小柄な奴……国の王子……勇者か?」


 和平はその答えにたどり着いた。そうと決まれば話は早かった。即座に自らの配下である虫の魔物たちに命じてあの街に向かおうとする一団を調べさせようとしていた。


 しかし焦ってはいけない。不自然なほどに虫を操れば、その思惑を、虫を操れるという事実を悟られる可能性がある。


 慎重に、何よりも慎重に事を進めなければいけない。


「あのデカいのがやられたのはちょっともったいなかったけど……あの戦闘を見られたのはむしろよかったか……?」


 勇者の戦闘。実際にはあの小柄な人物はほとんど戦ってはいなかったが、それでも魔物を相手にしたときの戦いを直に見ることができたのは大きい。


 あの不思議な挙動の宙に浮く盾。亜巨人の一撃さえも余裕をもって防ぐことができるほどの防御性能を持つ魔法を発動できる。


 勇者の防御性能の高さは理解しているつもりだった。だがそれは本人にだけ適応されるものではない。勇者が使う魔法にも適応される。


 あれを見ることができたのは値千金の機会だった。


 情報としての質が高い。和平は先ほどの光景を脳内で何度も再生してその内容の全てを把握しようと努めていた。


「若様、笑顔が歪んでおられますよ。まだまだ練習が必要でしょうか」


「おっとっと……いやいや、でも仕方ない。勇者を直に見られたかもしれないんだぞ?遠くて顔も全く見えなかったけど、それでも見えた。あの戦い方、覚えておく。この町に手を出すことも視野に入れおきたいが……ちょっと待つべきか?いや、そもそもあいつらは一体何をしに来た……?王都からこの街に……?」


 和平が頭の中でいろいろと考えている中、地図を脳裏に浮かべ王都からさらに先に何があるのかを考える。


 南西。つまりそれは国境。アルルゴウンのアルル大橋。そこを目指しているのではないかと考えていた。


「この近辺の地形を確認する。上手くいけば先回りしてちょっかいが出せるかも。トゥーと合流して情報収集を頼もう」


 村の対処を任せたことで一緒に行動していなかったのが悔やまれる。周辺の状況を知ることができれば今後の勇者の行動を把握するのも容易になる。


 王都からわざわざこの位置まで出てきたというのは偶然ではない。ここから西、あるいは南にある大きな要所といえばアザマ湖かアルルゴウンしかない。


 その二つのどちらかを目指しているのは間違いないのだ。しかし王都からアザマ湖を目指すにはこの街はやや遠回り。目的地はやはりアルルゴウンと国境のアルル大橋とみるべきだった。


 そこまで考えた時、和平の操っている虫の一匹が殺される。


 その挙動。和平は知っていた。


 特定の人物に触れて、ほんのわずかに手を動かしただけで死んだのだ。


「確定。あそこにいるのは勇者だ。勇者の一人。イルス王国の勇者だ」


 和平が確認できている三人の勇者のうちの一人。イルス王国の勇者。まさかこんなところで出会うとは思っておらず、和平は笑みを止められなかった。


 しかしここで勝負をするつもりはない。あくまで相手の情報を集めることに徹するつもりだった。


「若様、トゥーと合流するには半日ほどかかってしまいますが……?」


「仕方ない。少なくとも今日一日はあの一団はこの場から動かないと思いたい。普通に考えたら旅してやってきたなら一晩くらいは過ごすだろ?少なくとも宿屋で一泊するだろ。それが人情ってもんだよ。RPGの基本だよ」


「ゲームの基本に関しては存じ上げませんが、少なくともあの一団が一泊するだろうということには私も同意いたします。この町は大きいですからそれなりに装備を整えて次の町に向かうはず。先ほどの戦闘の疲れなどもあるでしょうから」


 補給をするにもそれなりに時間がかかる。体を休めるのもまた然りだ。


 あれだけ大きな魔物と戦えばそれなりに兵士も消耗しているだろう。それを休ませるのが普通の動きだ。


「タイムスケジュール的には……今日の夕方までには合流して、日のあるうちに周りの地形を確認する。そこから相手の移動先を確認。明日の朝までに相手が通りそうな場所に仕込みをするって感じでどうだ?」


「異論はありません。しかし、相手が勇者であるならば……どのような仕込みを?この場で倒されるのですか?」


「無理。オーナーが何度戦っても勝てないような相手に俺が勝てるか。何より何の準備もしてないんだぞ。全くと言っていいほど。こんな偶然の遭遇でどうにかできるほど甘い相手じゃない」


 和平は勇者をかなり過大評価していた。実際のところ本当の実力がわからないために相手をかなり高く見積もっているといったほうがいいだろう。


 しかしそうせざるを得ないだけの情報があるのだ。この場所でどういう行動をとるにせよ、勇者に近づくという行動だけはとってはいけない。


 魔王の力を有している和平もまた、勇者の加護の効果の一つ、特攻の対象に含まれていると判断するべきだ。


「街の中で接触などは挑戦しますか?」


「冗談じゃない。俺と勇者が接近してみろ。何が起きるか分かったもんじゃないぞ。それこそ握手したら手を握りつぶされて肩がぶつかっただけで体が半分吹き飛ぶかもしれないんだぞ」


 冗談でも誇張でもなく、本当に町の中ですれ違って肩がぶつかっただけで死ぬ可能性がある。


 当たっただけで死ぬなんてそんなことは普通だったら絶対にありえない。当たり屋だってもう少し謙虚だ。


 そんなことを自らの体で実践するだけの度胸は和平にはない。というかそんなことをする気にもなれない。


「ではあの街に行くこともやめておくべきだと?」


「あぁ。万が一すれ違って俺が死ぬなんて事故はごめんだ。勇者がいる街に繰り出すなんて命がいくらあっても足りない」


 作戦立案において最も気を付けるべきは偶然だ。そしてどうあがいても避けられないのが偶然でもある。


 千の準備、万の策を用いても、いくつかの偶然が重なったことでそれらが破られたという例はいくつも存在している。


 それこそ勇者が気晴らしと称して蹴とばした石に当たって死ぬことだってあり得てしまうような攻撃力だと考えるべきだ。


 和平だって偶然で死にたくはない。交通事故に遭ったのであれば、運がなかったとか、慰謝料をふんだくってやるとかそういう風に考えられる。


 しかし、そんな理不尽な死に方はごめんだった。


「あの馬車にはもう虫をつけてあるから、うまいこと位置を確認しながら情報収集のターンだ。急ぐぞ」


「承知しました。他のホムンクルスたちにも声をかけますか?」


「正直に言えばかけたいな。直接相手をするつもりはないとはいえ、勇者を相手に情報戦をやることになるから……今どれだけ増員できる?」


「方々で動いていますので何とも言えませんが……アザマ湖にいるユニであれば早々に呼べるかとは思いますが」


「一時的にでも来てもらうか……?そうだな。流石に手伝ってもらおう。魔道具作成よりそっち優先だ」


 冗談でも過言でもなく本当の意味で最大の敵。それが勇者だ。


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― 新着の感想 ―
肩がぶつかって、勇者的には「おっと、すまない」くらいの気持ちで振り返ったら、相手の半身が砕けて血の海になってるの、想像したら怖すぎるw
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