雪の中に咲く ひまわり
「結局、冬にひまわり咲かすなんてできんかった…… 」
僕は、庭に置いたプランターを眺めながら今年もつぶやく。あれからもう、10年が経っていた。
僕が小学3年生の時、学校でもらったひまわりのタネを小さなプランターに植えた。たいした世話もしてないのに、夏休みが終わる頃には、信じられないほど立派に育った。
「すごく、大きく育ったね!! 」
隣に住む美咲が、2階の部屋から僕んちの庭に咲いたひまわりを見ながら言った。
「来年も、咲かしちゃるけぇ! 」
僕は美咲の部屋を見上げながら、美咲に届くように、大きな声で言った。
美咲とは、幼馴染だ。学年は、美咲の方が1つ上だったけど、物心ついた時からよくお互いの家で遊んだ。
ただ美咲は、幼い頃から病気がちで、何度も入院を繰り返していた。学校に思うように通う事もできず、最近では、家から出ないように言われているという事だった。
「この冬までに咲かせて欲しい! 私、たぶんもうすぐ手術受けるから」
「え? なに、手術って……。入院するん? 」
「うん…… 」
美咲が、泣きそうな顔に見えた。
僕は、収穫途中だったひまわりのタネをギュッと握り締めると、美咲に向かって言った。
「任せろ! これ今から植えたら、冬には咲くから! 雪の中に咲くひまわり、見せちゃる! 」
僕は、そのまま空いたばかりのプランターに、収穫したばかりの、ひまわりのタネを植えた。
毎日毎日、水をやり続けると、すぐに芽が出て、彼女の喜ぶ顔を、小さな窓から見る事ができた。
しかし、成長のスピードは遅く、冬の冷たい風が吹く頃には、茎は弱々しく葉も茶色に変色していた。
そして、雪が降る頃には美咲の入院が決まった。
僕はそれから毎年、秋になるとひまわりを植える。10年経った今も、冬にひまわりを咲かせる事はできていない。
小さなプランターに目を出したひまわりは、決まって冬を迎えると痩せ細り枯れてしまう。それでもいい、ただただ、植え続けたいだけ。
「彰人、持ってく物ほかにある? 」
プランターを眺める僕の手を、優しく握りながら美咲が聞いた。
そう、美咲は今、僕の隣にいる。
「これ、このプランター持ってく? 」
「もちろん! きっと来年は咲くから! 」
僕達の新居での生活が、もうすぐ始まる。
冬に咲くはずの、ひまわりと一緒に。
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