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秘密シリーズ

公の秘密  ①

作者: あゆさん

小説の中にでてきますが、器械出し看護師は医師にメスなどよくドラマに出てくる医師の横にいる看護師です。あと外回り看護師は手術で必要なものを外から医師に提供する看護師です。手術には基本看護師は2人が担当します。難しい説明になりますが、ぜひ分からない方は参考にしてみてください。


久しぶりにまた書いていこうと思います。よろしくお願いします。



少しづつ増やしていってます。

秘密シリーズの一作目になります。


「疲れた・・・」 

私は看護師のなかでも特殊部署として有名な手術室勤務を11年している今年33歳の中堅看護師だ。

今日は、人工関節手術の器械出し業務を3件ついて、もれなく17時で勤務終了のところ、18時35分まで残業をして勤務終了となった。


「お疲れ様。今日も手術についてくれてありがとう」

今日の執刀医についていた田代医師に声をかけてもらって、帰っていった。

「お疲れ様でした」

私は去っていく田代医師の背中に声をかけた。

田代先生は40代。180cm程の身長ですらっとしており、手術中に看護師が失敗しても医師がフォローするから大丈夫とまで言えるくらい、性格もすらっとしている。


「でもー・・・、各病棟に愛人がいるからね」

私は誰にも聞こえないくらい小さな声でつぶやいた。

総合病院であるこの病院は全15階建て。

整形外科病棟は12,13階で、外来含め、病棟看護師2人、秘書、手術室看護師、外来看護師最低4人が愛人がいると病院で公の秘密となっている。

私生活では、綺麗な元CAの奥さん、2人の子供がいるのにもかかわらずだ。


「先輩、聞こえていますよ」

今日外回り看護師を担当した4年後輩の大山 京香が声をかけた。

「あ、聞こえてた?」

「まあ、誰もいないんで大丈夫と思いますし、愛人がいるのはみんな知ってることなんで大丈夫と思います」

「みんなが知っているね」

私は思わず、笑ってしまう。

そう公の秘密なのだ。


「綺麗な奥さんもいて、休みには子供さんと動物園とかにも行って。なんで病院に愛人が4人も必要なんでもすかね」

大山が私に言う。

「なんでだろうねー。あんなすらっとした見た目に、中身を維持しようと思うんだったら、何かしらのストレスがあるんじゃない?」

「確かに田代先生素敵ですもんねー。私誘われたら、絶対に付き合いますもん」

「大山はああいうのがタイプ?」


私と大山は無駄口をたたきながら、手術の片づけを行っていく。

私も大山ももう手術室で勤務して10年前後だ。無駄口をたたきながらもてきぱきと動いていく。

患者や一般市民は知らないが、手術をしたあとも様々な雑務が残っているのだ。

部屋の清掃をしてくれる清掃業者へ清掃の依頼、麻酔科医が使用した薬の処理、準備していた未使用の機械の片づけ等々。


「私は田代先生に誘われたら絶対に付き合いますけど、タイプはもっと草食系ですね」

「確かに田代先生は肉食系だね」

「ですよ。でも手術室に愛人がいるって有名ですけど、誰かは誰も知らないですよね」

「どうせ上田さんでしょ。すっごい綺麗だし」

私は手術室で一番美人と有名な上田さんの名前を出した。


「ってみんな言っているんで、私上田さんに直接聞いたんですよ」

「え!?愛人ですかって?」

「まーもうちょっと遠回しにですけどね」

「で?愛人ですって言われたの?」

「いやー違うって言われましたね」

「だろうね。愛人ですっていう愛人はいないでしょ。さー、片付けも終わったし帰ろ」

誰が愛人が気になる様子で他の看護師の名前を挙げている大山と私は手術室を後にして、ナースステーションへと足を向けた。




「お疲れ様でしたー。お先です。」

「お疲れ様でしたー」

手術が終了して20分。片付けも終わった私と大山は夜勤看護師やまだ残業している日勤看護師に声をかけて退勤をする。



「はー、今日は疲れたー。腰が痛すぎる」

「今日先輩ずっと器械出ししてましたからね」

私と大山はロッカールームで手術室作業着から私服に着かえながら話をする。

疲れたら少し椅子に座れる外回り看護師と違って器械出し看護師は手術中まったく座ることができない。

33歳の体にそれはもう厳しくなってきた。


「先輩明日休みですよね?」

「そう。やっとね。5日連続日勤はしんどいわ。」

「いいなー私明日土曜日なのに日勤で、日曜日夜勤入りなんですよねー」

「まだまだ働かないとか。しんどいねー」


「でもご飯だけ食べに行きませんか?」

大山が私にご飯に行かないか誘ってくる。


「元気だねー。私はもう化粧もボロボロなのに」

「そりゃーまだ20代ですからね」

「うわー腹立つな」

「すみませんね。先輩と違って私はまだ20代なので。」

「20代って29歳でしょ。30歳と変わらないよ」

「でも20代ですからね。で行けますか?」


「・・・あーごめん。今日はもう予定いれてるんだよねー」

大山とご飯には行きたいけれど、明日は休みだからと2週間前に予定を入れてしまった。


「わかりました。代わりに今度必ず行きましょうねー!」

「絶対に行こー」

「じゃあ先に失礼します。お疲れさまでした」

「じゃあね、お疲れー」


大山は私が化粧直しを今からしようとポーチを出したのを見て、先にロッカールームから出て行った。

33歳。30歳から肌質が変わると先輩が言っていたのを馬鹿にしていたけれど、その通りだ。

マスクと手術中の汗でボロボロになった化粧をなんとか直そうにも33歳の肌ではなかなか直らない。


もういいや。

30を超えた肌にはこの程度しか直らない。

なんとか見えるようになった顔になった私は大山に遅れること15分。

私はロッカールームを後にして、2週間前から約束していた場所に足早に向かった。



「お疲れ様。今日も手術についてくれてありがとう」


「お疲れ様でした」

ホテルの部屋で病院から途中のコンビニで買ったお弁当を食べていた私に田代医師が声をかける。

そう、手術室で付き合っている看護師は上田さんではなく、私なのだ。

公の秘密は、誰も知らない秘密でもあるのだ。

この小説の評価がよかったら、今後も手術室での日常を参考に小説を書いていきたいなと思います。

評価よろしくお願いします!

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