第二話 異世界召喚は偶然に──────。
これをあなたが見ているということは、、
バレンタインデーは既に終わり始めている、あるいは終わったということでしょう、、。
チョコレートは貰えましたか?
俺は幼稚園の頃から毎年くれている超絶美少女巨乳幼馴染女子高生とオカンから2個貰えるだけです。
魔界。
悪魔が住まい、人や精霊などが立ち寄ることの出来ない世界。
世界とは言っても人や精霊の住む『精霊界』と『魔界』は地続きである。
まずこの世界は地球と比べて遥かに大きい。
分かりやすく言うならば約4倍の面積を持つといったところか。
魔界はそんな広大な世界の実に3分の1、4つの大陸と1つの大洋を占めていた。
精霊界と魔界の違いは数億年も昔、あらゆる大陸が生まれた時に起きた魔素爆発にある。
大陸規模の範囲で起きたそれによってその周辺では今なお常に高濃度の魔素が空気中に漂っている。
並の人間は近付くだけで正気を失い、並の精霊は近付くだけで消滅する死の大地だ。
それが魔界と呼ばれる土地である。
だが、数万年の月日によってその高濃度の魔素に適応し、その大地に住む者達が現れた。
その生物達の子孫が後に悪魔族と呼ばれる存在である。
長い年月の中で悪魔族は七つの巨大な国のような枠組みと、その幾千もの傘下のような小さな枠組みが常に殺し合う地獄そのものを魔界に築き上げて行った。
国とは言っても強い者がより弱い者から搾取するというだけの至極単純な弱肉強食の世であった。
それから約1万年、死と絶望が蠢く時代は続く。
この世界における人間は魔法という概念があるため、現代とは違う文明を築き上げている。
魔法が便利過ぎるがゆえに文明の進化は非常に緩やか。
しかし魔界で弱肉強食の世が1万年行われているうちに人間達は中世ヨーロッパに近い程度の文明は築いていた。
魔界は魔素が濃く、通常人間が近寄ることが出来ないとはいえ、1部の強靭な者は例外。
人間達はそういった者達を使い魔界────当時はそう名前が付いてはいないが────を支配下に置こうと考えた。
しかし待ち受けるのはその魔界に適応した凶悪な悪魔達。
悪魔達の強さ故に人間は魔界の支配を諦める他なかった。
そうして悪魔は人間や精霊達の敵であるという認識が魔界の外では生まれた。
魔力を多く持つ悪の存在、悪魔というわけだ。
そしてそれとほぼ同時期に魔界にも1つの転機が現れる。
魔界を統一しようとする者が現れたのだ。
どの国にも所属しないその男は圧倒的な力で魔界に名を轟かせ、遂には世界の3分の1、魔界を統一してみせた。
人間よりは圧倒的に長命とはいえ1万年の時を生きる悪魔は限りなく少ない。
男はその10分の1ほどの年月でゼロからそれを成し遂げた。
男の異常さがよくわかるというものだ。
男は魔界を統べる王『魔王』を名乗り、
文明の成長に尽力し、
魔界を発展させ、
たった一代で生物の進化とも呼べるほどの偉業を成し遂げた。
悪魔であるならば男に皆敬意を示す。
どんなに凶悪な者も、どんなに危険な者も例外なく男に心酔していた。
ある日、晩年の男は娶った女が子を孕んだと発表した。
誰もが祝福し、次代の英雄の誕生を今か今かと待ち望んだ。
それから100年と少し。
男は1年前に没した。
しかし魔界は今なお安寧である。
とはいえ新たなる魔王の戴冠は急務だ。
力と同様に血が重要視される魔界においては次期魔王はその息子が相応しいと誰もが言うだろう。
100年前までは。
死の大地を統一し!
あらゆる悪魔達を捩じ伏せ!
誰もが認める大英雄の息子は今!
「いや、、違うんですよ、彼女は僕が召喚した方でして決して娼婦の類いではないんですよ。」
「仮にそうであったとして人間なんて召喚してどうするというんです。異世界から召喚しましたとか、信じてもらえるわけがないんですから。魔王戴冠式の前に人間を拾ったなどの悪評が回ったらどうするんです。」
「いや、ホント、すみませんでした。」
メイド服の少女に土下座していた。
♦♦♦
ルーク・エクリプス
魔界を統べた先代魔王唯一の息子。
人魔種という悪魔の中でも人間に近い姿をした種族の悪魔である彼は一見普通の男子高校生くらいに見えた。
175cmある身長は戦闘民族である悪魔らしく引き締まった筋肉を纏っている。
深い紺の髪は短く切り揃えられている。
美しい瞳は蒼玉のごとく輝いているが、目付きが悪いのと目の下の隈で帳消しになっている感があった。
大英雄と血を分けた者としてルークは幼少期より魔界全土の期待を受けていた。
しかし、ルークはそれほど優秀でもなければ父のように魔界のためになどの大義は持っていなかった。
勉強など欠片もせずに日々道楽に励み、内戦鎮圧に駆り出されても部下に全て任せて自分は拠点で昼寝をする。
魔界のことなど微塵も考えていない様子は多くの者を落胆させた。
今や魔界ではルークのことを大して知らない辺境に住むような者でもなければ、彼に期待をする者などいないのだ。
ルークの趣味は異世界に関する物や、精霊界の英雄譚の収集である。
先代魔王は魔界の繁栄のために自ら精霊界に人間に扮して学びに出たり、異世界に接続する魔法を開発したりしていた。
そのため、お土産代わりに持って帰って来てくれていた精霊界の英雄譚をルークは幼い頃から好んで読んでいたのだ。
異世界との接続は、先代魔王ですら大量の魔力を使い、それでも成功率はそう高くないという超高難易度の魔法だ。
だが勉強を嫌い、拒否していたルークだったが何故かこの魔法だけは必死で勉強した。
結果ルークは幾度となくこれを成功させ、多くの物を異世界から召喚することに成功する。
例えば、
露出度の高い服を着た美少女の人形────フィギュア!!
電気のエネルギーを与えることで中にいる赤い帽子の人間が走る箱────ゲーム!!
麦わら帽子の少年が海賊の王を目指す書物────漫画!!
などなどである!
そしてそれを知った先代魔王直属の文官は言った。
「それ、何かに使えるのかね?」と。
政治や経済、建築などの書物を主に召喚していた先代魔王を思えば当然の疑問である。
先代魔王も魔界の繁栄のために開発した魔法を、まさか日本のサブカルチャー、日本のオタク文化を取り寄せるほぼAm○zonのような使い方をされるとは思っていなかっただろう。
そんなわけでルークは今日も元気に異世界召喚のための術式を寝室に描いていた。
寝室でルークが纏っているのはパジャマである。
もう一度読み直しても間違えてはいない。
パジャマである。
水色と白色のストライプ。
よりにもよってオジサンしか今日日着ていないような旧タイプのパジャマ。
次期魔王が着る物としては不足も不足だろう。
しかしこれはシルク素材で意外と着心地が良いのだ、とはルークの言である。
先代亡き今、魔界が誇る英智の結晶である魔王城の主はルークだ。
当然その寝室ともなれば豪奢で絢爛である、
と、思われがちだがそんなこともない。
装飾は可能な限り取り除かれ、一見シンプルな外装となっている。
それはゴチャゴチャしたところで寝たくないというルークの意向故だった。
魔王の息子だというのにパジャマのくだりといい若干の貧乏魂に近い物を感じる。
寝室の外にはルークが召喚した物でこれ以上ないほどゴチャゴチャしているのだがそれはそれである。
魔法陣は『三式』と呼ばれる物で、3つの円が重なっているのをベースに魔法文字と呼ばれる特殊な文字を描いている。
三式よりも四式、四式よりも五式、と数字が上がるごとに強力になる魔法陣の中で三式はそれほど強力な物ではなかったが、これから行う魔法の難易度は段違いだ。
今回狙うのは新作のゲームと、今読んでいる漫画の新刊だ。
WiiUなる物の存在を知り、ルークは欲しくてたまらなかったし、そろそろ海賊の物語も50巻の大台が近いので早く読みたかったのだ。
魔法陣を描き終えたルークは手に持っていたチョークを壁に立てかけてある黒板に置く。
これらは父が異世界から召喚した物だ。
「さて、と。やるか。」
ルークは机に置いてあったナイフを手に取り、左手に傷を付ける。
手のひら全体に広がる大きく、深い傷に恐ろしいほど血が溢れるが、ルークは眉1つ動かさない。
左手を握り締め魔法陣の上に伸ばす。
指の隙間から血液が滴り落ちた。
「我は告げる。」
ぼうっ、と紫色の美しい光が描いた魔法陣に浮かび上がる。
「異界の徒よ、叡智の結晶よ。我に力を授け給え、我に知恵を貸し給え。」
下から風が吹いたようにゆっくりとルークのパジャマや髪が持ち上がる。
部屋に置かれた家具がガタガタと揺れているのがわかる。
「我が魔導、我が力を持って繋ぎ止めよう!」
魔力の奔流とも呼べるものがルークから魔法陣に流れ込んで行く。
「最果てへの接続機構!!!」
紫色の輝きはその強さを最大限増し、部屋を暖かく満たしていく。
数秒、
強い光にぼやけた視界が明瞭になり始める。
魔法陣の中心。
いつもならば何もないか、乱雑に漫画やゲームなどが置かれている場所。
そこにいたのは可憐な少女であった。
身長は160cmほどだろうか、肩よりも少し伸びた黒髪は丁寧に手入れされているのがよくわかるほど美しい。
大きな瞳は彼女の表情を幼く見せた。
同年代の女性と比べても主張するプロポーションはルークの目をこれでもかと引いた。
「え……と……。」
発された言葉はどちらのものだったのか。
お互いに状況の把握が上手くいっていない。
突然呼び出された少女は当然のこと、ルークからしても異世界から生物を召喚するなんて初めてだ。
いや、本来出来るはずがない。
なんせ偉大なる父ですらそんなことは出来なかったのだから。
だが、事実として目の前にいるのは生物である。人間である。
異世界どころか精霊界にすら行ったことがないルークにとって人間は英雄譚に出てくる存在、あるいはゲームだ漫画だを創造する神に等しき存在である。
そんな神を目の前にしたルーク、
是非ともコミュニケーションを取りたい、
あわよくば仲良くなりたいと思うのは当然であった。
結果
「俺と結婚して頂けませんか!!?」
日本式最高謝罪姿勢
土下座である。
少女は未だ困惑している状態だ。
突然風景が切り替わり、しかもその場所は常人からすれば見たことがないくらい豪華な魔王の寝室。
そんな場所に見知らぬ男と2人なのだ。
困惑するなという方が酷というもの。
そんな状態で目の前の見知らぬ男が土下座でプロポーズして来たのだ。
彼女の心中はパニックMAXである。
だが、ルークとてそれは同じ。
結果2人の間に数瞬の時が流れる。
それを破ったのは少女。
「あ、あ、あの…そういうのは、えと、もうちょっと段階を踏んでからの方が……。」
当然のセリフであった。
しかし、この場合においてこのセリフはミスであったと言わざるを得ない。
キッパリと断るべきであったのだ。
なぜなら
「ならお付き合いからでお願いします!!」
「ヒぇッ」
ルーク自身も客観的に自分が今どんな言動をしているのかをわかっていないほどテンパっているからである。
土下座状態で顔だけ上げ、少女を見上げる様子はもはや睨んでいると言っても相違なかった。
困惑が怯えに変わり少しずつ逃げ出す少女。
しかし未だ立ち上がれていない。
必然的にお尻を擦って下がる形になる。
そしてテンパっているが故に結婚という決定的なワードを出しておきながらプロポーズをしたという意識など微塵もないルーク。
仲良くなりたい一心でそんな暴挙を行った彼にとって少女が逃げの姿勢をとっていることはショックでしかなかった。
当然のように追う。
だがルークもまた未だ土下座の状態である。
必然的に膝を擦って追う形となる。
そんなナメクジのように鈍い2人の鬼ごっこはすぐに終わりを迎える。
「危ない!!!」
突然ルークが飛び上がる。
逃げる少女は言うなれば尻もちをついたような格好で逃げている。
当然頭の位置は低い。
そんな状態で後ろ向きに逃げていれば何かに当たってしまってもおかしくない。
結果としてベッドの硬い部分の角に頭をぶつけそうになる。
それに気付いたルークが怪我をさせるわけにはいかないと飛び上がって止めようとするのは仕方のないことであった。
ただ残念なのは少女にとって今最も危険なのはベッドの角などではなくルークであるということをルーク自身が把握出来ていなかったことか。
最も危険な存在が飛び上がって来れば当然の反応として少女は逃げようとする。
生物の本能で少女、ようやく立って逃げた方が速いことに気付く。
だが今更立ち上がったところで人間の反応速度では飛んで来る物を回避することなど不可能。
結果立ち上がった勢いそのままベッドにバックダイブする。
以上が、ルークが少女をベッドに押し倒していた状況の経緯である。
これ編集とかしてるのが2月7日なわけですが、結構面倒なんですよね。
ルビもなんか10文字とかしか入れられないとか編集中に知りましたよ。
どうするんだよ、「伊藤誠」と書いて「ド腐れ修羅場量産ハーレム野郎」と読むみたいなこと書く時。
ないのか。そんな時。