私と母と菖蒲さん
第一話
「今度は―――で会いましょう。――さん。いや、―― ――さん。」
私は異能を持っている。人の過去を読み取る異能だ。人の目を見ると、異能が発動する。だが、あまり異能の操作ができないので、たくさん読み取るにはとても時間がかかるというのが現実だ。更に、誰かと目があってしまうと、自分の意志関係なく、異能が発動してしまうということで、困りに困っている。だが、最近の困った事は他にもある。それが、前起きたある事だ。
相変わらず、外に出ることができない私は、小説を読んでいた。小説ならば、異能は発動しないから。
ふわっ
そうしたら、後ろに気配がした。常に人に会えない。いや、会ってはいけないので、常に、気配を探る事ばかり上手くなってしまった。その事がこんなことに役に立つとは。
「後ろにいるのは誰?大人を呼ぶよ?」
…ゾクッ
「これは驚いたわ。今まで気づいた者は10人と居ないのに。その異能とその気配を探る力。気に入ったわ。貴女はそのままにしていたらもったいない。私がいた事は秘密にね。じゃないと、こそこそ隠れてる青柳なんて四肢を裂いて、じっくり嬲り殺してしまいましょう。私にとって命なんてその程度よ。けど、これだけじゃ物足りないから、もし、貴女に振り向く勇気があるのなら一瞬だけ私の姿を見せてあげる。」
一瞬躊躇ったが、振り向いた。だが、その時には既に謎の女性は居なかった。一瞬見えた姿は、黒い長髪に赤が混ざり、眼鏡をかけ、身長が高い人だった。手を口元に当てて、不気味な笑みを浮かべていた。
後日、父にあるメールが届いた。どうやら、異能を持つ人たちを集める学校らしい。もちろん行くつもりだ。あまりにも制御ができないので、普通の学校だと、一気にたくさんの人の過去を読みとってしまうので、すぐに頭がバーストしてしまう。一回バーストしたら、しばらく目を覚まさない。今のこんな状況じゃ、普通の生徒として学校生活を送るには無理がある。その学校に通うことは即決定した。ちょうどもうそろそろ進路を決める時期だったから。あの女の人の事もあるし、断るにはいけない。もう一度、入学手続きをするため、入学すると返信した。後日、返信が来た。
【入学決定をしていただき、ありがとうございます。早速ですが、お子様の異能の制御レベルを測ったり、場合によっては異能の制御方法をお教えさせていただきたいのですが、そのために、何日か担当の者がお伺いさせてもらいます同意していただけるでしょうか。こちらに同意していただいたら、入学手続きが完了となります。なお、ご住所などは把握させていただいていますので、心配無用です。】
同意してしばらく経ったとき、私の担当の人らしき方が来た。
「担当の菖蒲と言います。」
菖蒲と名乗った人は、黒に所々紫が入っている、首にかからないくらいの短めの髪だった。ゆるっとしたパーカーに、クロのチョーカーをつけていた。あの日、急に現れた女の人ではなさそうだ。顔を見るときは細心の注意を払った。目を見てしまったら、一気にその人の記憶が流れ込んできてしまう。初めてあった人に早速過去を知られてしまうなんて、本人は気づかなくても、とても申し訳ない。
「入学手続きをしたのは君かな。」
菖蒲さんは担当の人だからしょうがないのだろうけど、ひたすらアイコンタクトを取ってくる。
「あの…目を見たら貴方の過去を読みとってしまう、ので、あまり顔は見ないでください。」
「それは自分の意志と関係なく?」
なんとか視線を外してくれた。て言うかなんでそんなにジャストて気にしてるところをついてくるのだろう。
「……はい。」
とてもじゃないが、恥ずかしすぎる。たとえ、担当の人だろうが。本人は困るだろうな。こんなまともに制御すらできない人が担当なんて。スコアとか関係あるのなら、申し訳無さすぎる。
「でも、君は人のことを考えられる、素晴らしい人じゃないのかな?今、君が顔を見ないようにしているのも、もし記憶を覗いてしまったら申し訳ないと思っているからでしょ?」
なんでこんなに私の心理情報を読み取れているのだろうか。もしかして、私に似た異能で感情をリアルタイムで読み取ることができるのだろうか。
「君は感情が読み取りやすいね。私は特に読み取る系の異能ではないけど、直感的に感情を感じ取ることができるんだ。」