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また、ともに  作者: 藤林ミドリノフ
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続・久しぶりのお遊び

 ゲームセンターの三階は音楽ゲームのスペースであった。色々な曲が流れる側で俺達は休憩用に設置されたベンチで休んでいた。

「さてと、どうするか」

 指先で先程手に入れたキーホルダーを弄る。片桐は紙コップのジュースを一口飲んで一息ついた。

「そういやさ、これいるか?」

「え?」

 俺は先程のキーホルダーを差し出した。元々は片桐のアドバイスで手に入れたような物であった。俺よりもこれは片桐が持つにふさわしいと思った。

「先輩が持っててくださいよ」

「マジ?いいの?ほぼお前が取ったみたいなところあるじゃん」

「いいですよ。私あんまりそういうの付けないんで」

「そうか」

 無理強いも良くない。そう思いキーホルダーは

 ポケットに入れた。お互い言葉を交わさない時間が生まれた。どうしようもないので時計を見た。短針と長針が六時頃を告げていた。そういえば。

「今日は門限何時なんだ?」

 俺や前田は男というのもあり、大して門限など気にしていなかった。しかし、流石に片桐や吉川はそうはいかない。門限というものがしっかり決められていた。そのため、片桐や吉川と遊ぶ際は門限を確認を確認した上で予定をたてて遊んでいた。

 今日は突然のことであったため件の門限について聞くのを忘れていた。

「……実は両親、今日いないんですよ」

「マジか、飯とかは?」

「なんも考えてはないですけど……」

 片桐はジュースを一口飲んだ。

「よっしゃ、なんか食うか」

「え?先輩、家にご飯あるんじゃ?」

「最近、合格して色んな所行ってたら、飯とか予め言わないと用意されなくなってしまったんだ……」

「遊び過ぎでは……?」

 片桐は何ともいえない表情を浮かべている。

「何か食べたいものある?」

 とはいえ、高いものは食べれないけどと付け加えた。

「特に……外に出て考えません?」

 俺は頷くと立ち上がり、伸びをした。片桐も紙コップを捨てに行った。



 外は先程より暗い。寒さも増していたが、それとは対照的に人が増えていた。丁度、人々が帰路に着くところなのだろう。

 俺達はご飯屋さんを探す。なんでもありそうだったが、夕飯時である。さっさと探した方が待たなくて良い。

「あ、先輩あれ」

「お、食べたいの見つけた?」

 片桐の指を指した方は、店ではなかった。人混みの中にそれはあった。というかいた。

「吉川?」

 なんでアイツが?と思った矢先、此方に彼女も気づいたようだった。

「よっすー!!なんだ辻本、こっち来てたんだ」

「なんでここに?」

「んー、家帰っても暇だから、ちょっと暇潰し?」

 丁度良さそうだ、と俺は吉川を誘うことにした。当然のように彼女は了承したので、食べたいものを聞いてみた。

「久しぶりだからね、私達っぽいもの食べたいな」

「スゴい漠然としてますね……」

 片桐は、そう感想を溢した。途端、吉川は指を鳴らした。

「あれ食べたい!!いい!?」

 吉川が提案したのはどこにでもありそうなものだった。



「番号札お待ちのチーズバーガーセットの方~」

「はいー」

 どこにでもありそうな、チェーンのハンバーガー屋であった。確かに皆で遊ぶときは良く利用していたような気がする。見慣れた包みの乗ったトレイを席に運ぶと片桐と吉川が食べるのを待ってくれていた。

「悪い」

「いいよ、別にさ」

 吉川は気にしないとばかりにポテトに手をつけた。

「いただきます」

 片桐もそう言ってハンバーガーを一口頬張った。それに合わせ、自分も食事を始めた。思ったより腹が空いていたらしく、食が進んだ。

「そういや吉川も受験通ったんだよな、おめでとう」

 食事の合間に言葉をかけた。お互い無事に受験期を終えて良かったと言葉を交わした。

「ホント良かったわー、来年は七世の番だよー」

 吉川は隣でハンバーガーを食べる片桐を小突いた。

「私は吉川先輩のようにギリギリの成績ではないので」

 小馬鹿にしたように片桐が冗談を口にした。

「い、言ってくれるじゃない……」

 吉川は痛いところを疲れたらしく、声を震わせた。

「ははは」

 その様子を見て、俺は笑った。と、同時に少し寂しくも思った。もうそろそろ、卒業を迎える。そうしたら、きっとこのように集まることも、より少なくなるだろうと。

「……」

 俺は少し、気分が落ち着かなくなった。油ものを取りすぎたからだろうか。それとも、ノスタルジックな気分に沈んだからだろうか。

「ちょっと手洗いに行ってくるわ」

 二人に具合の悪さを悟られないように、席を立った。

「ういー」

 吉川の気にも留めないような、間の抜けた声が嬉しく思えた。

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