お一人様一つ限り
お一人様一つ限り。
それが特売の現実。
しかし安いものの前では目が眩む。
「お客様、申し訳ございません。こちらお一人様一つまでと決まっておりまして」
客は二つレジに持ってきていた。
「ねえ、なんで?」
客が引き下がる様子はない。
「当店のルールでして」
「芽瑠ちゃんね、二重人格だねって言われたことあるんだよ」
「二重人格は人格が二つあるだけで一人だと思うのですが」
「ごたごた言ってないでさっさと売りやがれ!殺すぞボケッ!」
客の態度はまるで別人のように急変した。
「そ、それは脅迫ですよ。あなたを訴えますからね」
「さっきの人は違う人なの。主人格は芽瑠ちゃんだからね、訴えられても困るの」
客は二つ買うことを決して諦めはしない。
店内に不穏な空気が流れる。
「うるせえな!出てけ!二度とウチの店に来んな!・・・・・・あっ、ごめんなさい。僕も二重人格なもので」
迫力のありすぎる店員の怒鳴り声に、客は完全に怯んでしまっていた。